【目次】
・「できかねる」の意味や使い方
・「いたしかねます」との違いとは
・「できかねる」をやんわり伝えるには
・「できかねる」のほかの表現5選
・「できかねる」の英語表現とは
・「できかねる」を使って丁寧かつ婉曲に伝えよう
【目次】
「できかねる」の意味や使い方
「できかねる」は「できません」という意味ですが、「できません」と断定すると問題になりそうな場面で使える便利な言葉です。ここでは「できかねる」の意味や使い方をご紹介します。ここでしっかりと意味と使い方を押さえておきましょう。

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■「できません」という意味
「できかねる」は「できません」という意味です。目上の人や上司、顧客に「できません」と断定すると失礼になったり問題になったりするような場面で使うことが多いでしょう。
「できかねる」の「かねる」は、ほかの動詞といっしょに使う場合、不可能や困難を意味します。たとえば「いたしかねる」や「言いかねる」「見かねる」といった言葉も動詞と「かねる」が一緒になった言葉です。
「できかねる」は、「あなたの気持ちに応えたいのですが、どうしてもできないのです」といったニュアンスを含みます。そのため、トラブルになりそうな場面でもよく使われるのです。
■漢字では「出来かねる」
「できかねる」の漢字は「出来かねる」です。しかし、「できる」は名詞として使う場合は「出来」と漢字に、動詞で使う場合は「できる」とひらがなで表記するのが一般的です。
たとえば「できる」を名詞として使う場合、「出来高」や「出来事」「上出来」などのように漢字になります。動詞として使う場合は、「勉強ができる」や「英語ができる」「できる限り」のようにひらがな表記が一般的です。動詞として使う場合でも、「勉強が出来る」と漢字表記でも間違いではありませんが、ひらがな表記が分かりやすいでしょう。
■丁寧語は「できかねます」
「できかねる」の丁寧語は「できかねます」です。先ほども説明しましたが、「できかねる」は目上の人や顧客に言う機会が多いため、必然的に丁寧語である「できかねます」のほうがよく使われます。
中見出し:「できかねません」は間違い 「できない」という意味で「できかねません」を使うのは間違いです。「できない」という意味の「できかねる」をさらに否定形にすると、「できるかもしれない」という反対の意味になってしまいます。「できかねません」は「できない」という意味ではないので、注意しましょう。
■「できかねる」のメール例文
それでは、「できかねる」のメール例文をいくつかご紹介しましょう。
【例文】
・これ以上は、お答えできかねますのでご了承くださいませ。
・楽しみにしていた食事会ですが、突然の急用のため出席できかねます。
・そちらの件につきましては大変申し訳ございませんが、こちらでは回答できかねます。
「いたしかねます」との違いとは
「いたしかねます」は「できかねます」と同様の意味ですが、へりくだった意味合いのある謙譲表現です。伝える相手によってよりふさわしい言葉を使えるように、どちらの言葉も理解しておきましょう。

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■「いたしかねます」は謙譲表現
「いたしかねます」は謙譲表現にあたり、「〜することが難しいです」という意味です。「いたしかねます」は「する」の謙譲語「いたす」に「かねる」と「ます」がついた言葉で、へりくだった意味合いが強くなります。そのため、滅多に会わないような上司に対して使う場合やクレーム対応のような難しい場面で使うと良いでしょう。
■「いたしかねます」は目上の人に
いたしかねます」は目上の人に使う言葉です。部下や目下の人に何か頼まれて、「いたしかねます」と返答するのは不自然といえるでしょう。
「できかねます」も目上の人や上司に使えますが、より丁寧に伝えたい場合は「いたしかねます」を使います。直属の上司のように、普段からやりとりのある人であれば「できかねます」でも構いません。 次に、例文をいくつかご紹介しましょう。
【例文】
・先日ご依頼された件ですが、やはり対応いたしかねます。
・お申し出は大変ありがたいのですが、お受けいたしかねます。
・大変申し訳ございませんが、これ以上のお話はここではいたしかねます。
「できかねる」をやんわり伝えるには
「できかねる」をやんわり伝える方法が2つあります。クッション言葉をいっしょに使う方法と、代替案を示す方法です。ビジネスシーンでは、どうしても「できない」と言わざるを得ないこともあります。そのような場合に相手にできるだけ失礼がないように、また不愉快な思いをさせないように「できない」を伝えられるようになりましょう。

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■クッション言葉をいっしょに使う
「できかねる」を使う場合は、次のようなクッション言葉をいっしょに使いましょう。
・誠に恐れ入りますが
・大変申し訳ございませんが
・誠に残念ではございますが
・不本意ではございますが
・せっかくのお申し出ではございますが
・大変ありがたいお話なのですが
クッション言葉を使う場合は、「できかねます」より「いたしかねます」のほうがより丁寧でいいでしょう。次の2つの文章を比べてみてください。
・誠に恐れ入りますが、お受けできかねます。
・誠に恐れ入りますが、お受けいたしかねます。
後者のほうが、より丁寧に相手に「できない」を伝えていることが分かるでしょう。
【例文】
・大変申し訳ございませんが、当社では対応いたしかねます。
・せっかくのお申し出ではございますが、予算上、お引き受けいたしかねます。
■「〜ならできます」と代替案を示す
「できかねる」をやんわり伝える方法として、「〜ならできます」と代替案を示すのも良いでしょう。ビジネスシーンでは、できるだけ「できない」と返答するのは避けるべきです。その代わりに「できる」ことを伝えるのです。
たとえば取引先から無理な納期で商品を発注された場合、「できかねます」と言うよりも「1週間あれば2倍の商品を準備できます」と代替案を示すほうが気持ちよく聞こえ、相手にやる気を見せることにもつながるでしょう。「それであれば、お願いします」と納得してくれる可能性が高くなります。
「できない」ことに気持ちを向けるのではなく、「できることを探す」のはビジネスの基本といえるでしょう。
「できかねる」のほかの表現5選
「できかねる」と類似の表現に「承りかねます」「お受けできません」「お断りせざるを得ません」「ご遠慮申し上げます」「お役に立てません」の5つがあります。

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やんわりと「できない」を伝えるために、クッション言葉を使ったり代替案を示したりする方法もありますが、ほかの表現に言い換えるのもトラブルを避けるひとつの方法です。「できかねる」や「できかねます」「いたしかねます」とあわせて覚えておきましょう。
1.「承りかねます」
「承りかねます」は、「承る」に不可能や困難を意味する「かねる」がついた言葉で「承るのが困難です」という意味です。相手から何か依頼された場合に、「対応できません」と断るときに使います。 次に例文を挙げましょう。
【例文】
・お客様のご要望はよく分かりましたが、当社では承りかねます。
・大変申し訳ございませんが、先日のご依頼は承りかねます。
2.「お受けできません」
「お受けできません」を使うと「できない」という意思を「できかねる」よりストレートに伝えられます。
「できかねます」は、はっきりとした「NO」ではないため、「どうなんだろう?」と思う人がいるのも事実です。そのためきちんと「できません」と相手に伝えたいときは、「お受けできません」のほうが適しているでしょう。
たとえば、根拠もなく何度もクレームを言ってくるお客様に「できない」ときっぱり伝えるのにふさわしい言葉です。 ビジネスでは、どうしてもできないこともあります。そういった場面で「お受けできません」が使えるでしょう。「お受けすることができません」はより丁寧な表現です。
【例文】
・大変残念ではございますが、今回の案件はお受けできません。
・ご要望はありがたいのですが、やはりお受けできません。
3.「お断りせざるを得ません」
「お断りせざるを得ません」は「お断りしないわけにはいかない」という意味で、「断りたくありませんが、断らないといけないのです」といったニュアンスを含みます。実際には、次のように使えるでしょう。
【例文】
・非常に残念ですが、今回の件はお断りせざるを得ません。
・会合に参加したいのですが、時間が取れずお断りせざるを得ません。
4.「ご遠慮申し上げます」
「ご遠慮申し上げます」は相手のことを考慮して断る場合に使う表現です。「遠慮」とは「人に対して行動や言動を慎むこと」「辞退すること」という意味。
「できかねる」はなんらかの事情があって相手の要望に応えられない場合に使いますが、「ご遠慮申し上げます」はどちらかというと相手のことを考えて断るといったニュアンスがあります。 次にいくつかの例文を挙げましょう。
【例文】
・恐縮ではございますが、喪中につき新年のご挨拶をご遠慮申し上げます。
・以前のお申し出は、せっかくですがご遠慮申し上げます。
5.「お役に立てません」
「お役に立てません」は、「自分の力不足のため、あなたの要望にはとうてい応えられません」という意味があります。「できかねる」よりも丁寧な表現です。「お役に立てません」もいくつか例文を挙げましょう。
【例文】
・このような良い条件であっても、当社はお役に立てないでしょう。
・皆様のご要望にお役に立てず、大変申し訳ありませんでした。どうか、お許しください。
「できかねる」の英語表現とは
最後に、「できかねる」の英語表現を説明しましょう。「できかねる」の英語表現は次の通りです。

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・I’m afraid〜
・I’m sorry〜
・I can not〜
・It is difficult for us to〜
・I will not be able to accept〜
「I’m afraid〜」や「I’m sorry〜」は、「申し訳ありませんが〜」「すみませんが〜」という意味で、これらの言葉の後には否定の「できません」といった内容が続きます。
「I can not〜」はそのまま「〜できません」という意味です。「It is difficult for us to〜」は「〜をするのが難しいです」と、これも「できません」と断るときに使います。
「I will not be able to accept〜」は、メールや手紙で顧客からの要望や提案を断る場合に使う英語です。次にいくつかの例文をご紹介しましょう。
【例文】
・I’m glad you got in touch with me, but I’m afraid I can’t help you.
お話をいただいたにも関わらず、大変申し訳ありませんがお役に立てません。
・I’m sorry, I’m afraid I cannot meet your request.
ごめんなさい。あなたのリクエストにお応えいたしかねます。
・I can not agree with you on this point.
その点につきましては、同意いたしかねます。
・It is difficult for us to lower this price anymore.
これ以上の値下げはできかねます。
・I’m afraid that I will not be able to accept it.
まことに残念ではございますが、お受けできかねます。
「できかねる」を使って丁寧かつ婉曲に伝えよう
ビジネスシーンでは「できない」と断わざるを得ないこともあります。このような場合でも、相手の気持ちを慮って丁寧に婉曲に伝えることが大切です。とくに顧客からのクレーム対応では、気持ちを込めて「できかねる」を伝える必要があるでしょう。相手の依頼を断るときに使える表現をいくつも覚えておき、時と場合によって適した言葉を選びましょう。
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