「お手を拝借いたします」
掛け声に合わせてみんなで一斉に手を叩く一本締めは、会合の締めのテッパン。「お手を拝借」は、一本締めをする合図として使われる表現です。社会人として、ぜひ覚えておきたい表現のひとつです。
「拝借」の類語や言い換え表現にはどのようなものがある?
「拝借」は、丁寧な言葉ですが、日常会話などで使うにはやや堅い表現です。類語や言い換え表現と使い分けることで、より自然なコミュニケーションをとることができますよ。
借り
「借り」の意味は以下の通りです。
1 借りること。また、借りたもの。特に、借金・借財・負債など。「―を返済する」⇔貸し。
2 人から恩義・援助・恥辱などを受けて、その報いをしていない状態。「この―はいつかきっと返す」⇔貸し。
3 簿記で、「借り方」の略。⇔貸し。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「借り」は文字通り、借りることを意味する言葉です。特に、借金や負債のように「資金などを得る」という意味合いを強く持ち、「借りを返す」のように使います。謙譲語の意味は含まず、「拝借」と比べると、丁寧さに欠ける表現といえるかもしれませんね。
借用
「借用」の意味は以下の通りです。
[名](スル)借りて使うこと。使うために借りること。「資料を―する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「借用」は、何かを借りて、使うことを意味します。「借用」も「拝借」とは違い、謙譲語ではありません。目上の人から何か借りる際は「拝借」を使うのが無難ですよ。
お貸しいただく
ビジネスでは、「〇〇様のお力をお貸しいただきたく存じます」のように使われます。目上の人に意見を求める際に、柔らかく丁寧にお願いすることができる表現です。
「拝借」の対義語
「拝借」は簡潔にいうと「借りること」なので、対義語としては「貸すこと」を表す「貸す」「貸与」。また、借りたものを戻す「返却」などが挙げられます。
貸す
「貸す」の意味を改めて確認してみましょう。
[動サ五(四)]
1 自分の金や物などを、ある期間だけ他人に使わせる。「友人にお金を―・す」「本を一日―・す」「タバコの火を―・す」⇔借りる。
2 使用料をとって、ある期間他人に利用させる。「アパートを―・す」「土地を―・している」⇔借りる。
3 能力・労力などを他人に提供する。「手を―・す」「肩を―・す」「耳を―・そうともしない」「お力を―・して下さい」⇔借りる。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
自分が持っているものを、一時的に相手に渡すことを「貸す」と言います。目に見える物品だけではなく、「力を貸す」「知恵を貸す」なども当てはまりますね。
貸与
「貸与(たいよ)」の意味は以下の通りです。
[名](スル)金や物を貸し与えること。返すことを条件として金品の使用を許すこと。「住居および制服を―する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「貸与」も、お金や物を貸し与えること。募集要項の貸与欄に、「制服の貸与」と記されているのを目にすることも多いでしょう。そのほかにも、「奨学金の貸与」など企業や教育機関が個人に対して、貸し与える場合に使われる傾向のある言葉です。
返却
「返却」の意味は以下の通りです。
[名](スル)借りたものや預かったものを持ち主に返すこと。「借用した資料を―する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
所有者に、借りていた物や、一度受け取った物を返すことを「返却」と言います。「図書館に本を返却する」「資料を返却する」と言った使い方が一般的ですね。「借りたものを返す」という点で、「拝借」の対義語と捉えることができるでしょう。
「拝借」の英語表現とは?
「拝借」という意味を持つ英単語には、“borrow” と“borrowing” があります。“borrow” は「借りる」や「借入する」を意味する動詞で、その現在分詞および名詞が“borrowing”です。
ものを借りても良いか確認する際の英語表現としては、“Could you possibly lend me your~?” (~を拝借できますか?)があります。もう少しカジュアルな表現として、“May I please use your ~?” や“Can I please use your~?” なども覚えておくと便利です。
例文
“I’d like to borrow this book.” (この本を拝借したいです)
“Could you possibly lend me your money?” (お金を拝借できますか)
“May I please use your pen?” (ペンを拝借できますか)
拝借を使う際の注意点
「拝借」は目上の人に対して使う謙譲語なので、自分より年下の人や後輩には使いません。会話の中では、「〜を借りてもいいいですか?」「教えてもらってもいい?」などと表現するのが自然でしょう。
また、「拝借」は丁寧な言葉ではありますが、何の前置きもなしに「資料を拝借します」といって行動に移すとやや自分勝手な印象が。「お忙しいところ恐縮ですが、資料を拝借してもよろしいですか?」「〇〇さん、プレゼンの資料を拝借してもよろしいですか?」などと、前置きを付け加えると丁寧な印象になりますよ。
最後に
目上の人からものを借りる際、「貸してください」ではなく、「拝借できますか」と言うことでより丁寧で知的な印象になります。ぜひ、目上の人との会話やメールなどに取り入れてみてください。その際、二重敬語などにならないよう、くれぐれも注意してくださいね。
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