「手練手管」とは人をだます手段のこと
「手練手管」は「てれんてくだ」と読み、人をあやつってだます手段を表す言葉です。手練と手管を組み合わせて四字熟語にしています。
「手練手管」の意味は、次の通りです。
《同義の二語を重ねて意味を強めたもの》「手練」に同じ。「手練手管を弄 (ろう) する」「手練手管にたける」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
ここでは、「手練手管」の詳しい意味や言葉の由来をご紹介します。
同義語を重ねて意味を強めている
「手練手管」の「手練」は単独では「しゅれん」と読み、よく慣れて手並みが良いという意味があるほか、人をだましてあやつる方法という意味合いもあります。
「手管(てくだ)」は人をだます方法という意味です。
これら「手練」と「手管」は、どちらも人をだます手段や技術という意味があり、同義の言葉を重ねることで意味を強めています。
由来は花魁など遊女が客をだます手段
「手練手管」という言葉の由来は、江戸時代に遡ります。江戸時代の遊郭では花魁などの遊女が客をつなぎとめておくため、あの手この手を尽くした手段が行われてきました。それらの手段を「手練手管」と表現していたのです。
現代でも男女の駆け引きなどで「手練手管」という表現が使われますが、さらに広く、人を自分の思い通りに操作してだます行動や手法を表す言葉として用いられています。
「手練手管」の例文
「手練手管」を使った例文で、使い方を確認しておきましょう。
・彼の出世は【手練手管】の限りを尽くした結果だ
・彼女は【手練手管】を使って常連客をつなぎとめている
・【手練手管】を尽くした戦略でも、成功すれば立派な業績になる
・彼は彼女に好かれるために【手練手管】を尽くしたが、振り向いてもらえなかった
・彼は彼女の【手練手管】に翻弄され、つい高額商品を購入してしまった
「手練手管」が使われる場面は、「ありとあらゆる手段を使う」といったニュアンスが込められています。
「手練手管」の類語
「手練手管」は、さまざまな言葉に言い換えることが可能です。「あらゆる巧妙な手段を用いて人をだます」という意味があることから、どの部分に着目するかで言い換える言葉も変わってきます。
ここでは、「人をだますこと」と「巧妙な手段」という2種類の意味に分け、手練手管の類語にはどのようなものがあるか見ていきましょう。
1.だますことに着目した類語
手練手管の「だますこと」に着目した類語には、次のようなものがあります。
・奸計(かんけい)
・悪巧み(わるだくみ)
「奸計」とは、人を陥れるためのはかりごとという意味です。「奸計を巡らす」「奸計に陥る」という使い方をします。
「悪巧み」は悪質な計略という意味で、「奸計」とほぼ同じ意味合いです。会話では主に「悪巧み」が使われます。
2.巧妙な方法という意味の類語
「巧妙な方法」という意味に着目した類語には、次のような言葉があげられます。
・錬金術(れんきんじゅつ)
・権謀術数(けんぼうじゅっすう)
・虚々実々(きょきょじつじつ)
「錬金術」とは古代エジプトに始まり、卑金属(水分・炭酸ガスなどにより、たやすくおかされる金属のこと。鉄・アルミニウム・亜鉛など)を貴金属の金に変えようとする技術のことです。これから転じて、ありふれたもの、値打ちのないものを貴重なものに変えるという意味合いで使われます。
「権謀術数」とは人を欺く策略という意味です。特に、組織のなかで自身の地位や評価を上げるための計略をめぐらすといった意味合いがあります。
欺くという点からは、「巧妙な方法」だけでなく「だます」という意味合いも含まれるでしょう。ビジネスや政治などの場面で使われることが多い言葉です。
「虚々実々」とは、計略を尽くし、相手の隙を狙って戦うという意味です。「虚」と「実」には、相手の強い部分である「実」を避け、弱い部分である「虚」を攻めるという意味合いがあります。
遊女が使っていた「手練手管」のテクニックとは
「手練手管」はもともと、江戸時代に遊女が客に用いたテクニックを指した言葉です。「手練手管」による手法は、客を虜にしてつなぎとめるために使われてきました。なかでも高級遊女とされる花魁は、幼い頃から「手練手管」の方法も学んだとされています。
遊女が用いる「手練手管」はさまざまな種類がありますが、そのなかでも代表的な手法を見てみましょう。
焦らす
遊女はすぐに客と親しくなることはなく、なかなか会わずに焦らすという作戦を行っていました。人は簡単に手に入るものよりも、苦労して獲得したものを大事にする傾向があります。そのような心理を利用した手法です。
焦らすことで、「会いたい」「手に入れたい」という気持ちが募ります。手に入りそうで入らない距離を保つことで、客を虜にしてしまうのです。
つねる
「つねる」という行為も「手練手管」のひとつです。久しぶりに来た客などに拗ねて見せ、「どうして来てくれなかったの」とつねることでお客を夢中にさせるのです。
拗ねる行為は「口説(くぜつ)と言います。お客を「それほどまでに自分を待っていた」という気持ちにさせ、「また来たい」「もっと頻繁に通わねば」と思わせるのです。
上手に嘘をつく
遊女がお客をもてなすのは仕事のためで、本気で好きになることはありません。しかし、上手に嘘をついて相手に一筋であると思わせます。それも「手練手管」の手法です。
自分がその客一筋であることを信じ込ませるため、起請誓紙(きしょうせいし)と呼ぶ紙に誓いの言葉を書き、神社に奉納していました。そこまでする行為にお客はだまされ、自分への想いを信じてしまうのです。
手練手管はさまざまな場面で使われる
手練手管は人を巧みにだます手段を表現する言葉です。もともとは江戸時代の遊女がお客をだます手段でしたが、現代ではさまざまな場面で使われます。
あらゆる手を尽くし「だます」という意味合いがあるため、良い意味では使用しません。そのため、手練手管を会話などで使うときは、言葉の意味を理解して正しく用いるようにしましょう。
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