「天晴」とは驚くほど見事であるという意味
「天晴」は驚くほど立派なさまという意味の言葉です。
【天晴:あっぱれ】驚くほどりっぱであるさま。みごとなさま。
ほめたたえる気持ちを表すときに発する語。すばらしい。みごとである。
強く驚いたときに発する語。ああ。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「天晴」は相手を賞賛する時に使う言葉ですが、言葉を発した側の人間が、大いに驚いたり心が動いたりしている状態を伝えるというニュアンスももちます。
「天晴」の表記はこの他に「遖」があり、「遖」は国字(日本独自に作られた漢字のこと)です。つくりに南という文字が使われており、南の方に進んで行くと、空が晴れ上がってきて明るく輝いているという意味があります。
「天晴」の読み方は「あっぱれ」
「天晴」の読み方は「てんせい」や「あまばれ」ではなく「あっぱれ」です。当て字で「天晴れ」と表記することもあります。「天晴れ」と書いた場合にも「あっぱれ」と読みます。
使われているのは天と晴というなじみ深い漢字なのですが、読み方を間違いやすい難読漢字でもあるので、漢字と読み方をセットにしてしっかり覚えておきたい語句です。
「天晴」の語源は「あはれ」
「天晴」の語源は「あはれ(哀れ)」です。「あはれ」を促音化して、意味を強調したものが「天晴」となりました。言葉の意味から考えると、意外な語源と思われるかもしれませんが、もともと「天晴」はほめる場合だけで使われる言葉ではありませんでした。
「ああ」という感嘆や悲哀の感情を表す時にも使われており、この場合には語源のニュアンスと近いものになります。驚きの賞賛という意味の場合も、感嘆や悲哀という意味の場合も、つい自然に出てくる感情という点では共通しているといえるでしょう。
「天晴」の使い方と例文
「天晴」はほめたたえる気持ちを表す時につい自然に発してしまう言葉です。じっくり考えた末に出てくるというよりも、反射的につい出てしまったというケースが多いといえるでしょう。スポーツ競技など、評価がはっきり現れる場面でよく使われる言葉でもあります。
【例文】
・オリンピックの水泳競技の400メートルリレーで応援していた選手が1位でゴールした瞬間に、つい【天晴!】と叫んでしまいました。
・どんなに点差をつけられても最後まで諦めずに全力で戦うとは、敵ながら【あっぱれ】なチームだと感心しました。
・算数が苦手な息子が生まれて初めて100点を取り、その答案を見せてくれた時に、【天晴】だったね!と大いにほめました。
日本文学に登場する「天晴」
「天晴」という言葉は日本の古典文学でも数多く登場しています。いくつか見ていきましょう。
鎌倉時代に書かれた「平家物語」の中にはこんな一節があります。「あっぱれ、この世の中は只今乱れ、君も臣もほろびうせんずるものを」です。この場合のあっぱれは悲嘆の気持ちを表しています。
同じく「平家物語」の中で「あっぱれ剛の者かな。是をこそ一人当千の兵ともいふべけれ」という一節があり、この場合は驚くほど立派という賞賛の意味です。
室町時代に書かれた「虎寛本狂言・八句連歌」では「天晴な御手跡で御座る」という一節があります。この場合の「天晴」も賞賛の気持ちを表した言葉です。
「天晴」を使った熟語
「天晴」を「あっぱれ」という読み方をした場合には、この言葉を使った熟語は1つもありません。しかし、「てんせい」という呼び方をした場合には、1つだけ四字熟語があります。
「雨過天晴」です。
この熟語で使われている「天晴」は2つの文字をひっくり返した「晴天」に近いニュアンスといえそうです。この「雨過天晴」の意味を説明します。