類義語は「二兎を追う者は一兎をも得ず」など
今回は「虻蜂取らず」の類似表現として3つの言葉をご紹介します。もっとも利用頻度が高いのは「二兎を追う者は一兎をも得ず」でしょう。
・二兎を追う者は一兎をも得ず:欲張って2つのことを同時に行うが、結局は両方とも成し遂げられないこと
・欲の熊鷹(くまたか)股を裂く:あまりに欲深いと災いを招くということ
・大欲は無欲に似たり:欲に目がくらむと損を招き、結局無欲と同じ結果におわる
どの言葉も同じような状況を描写できるため、知っておくと表現の幅が広がります。
対義語は「一挙両得」「一石二鳥」など
「虻蜂取らず」に対して、反対の意味を持っている言葉をご紹介します。
・一挙両得:1つのことを行い、同時に2つの利益をえること
・一石二鳥:1つのことをして、同時に2つの利益・効果をあげること
欲張った結果として両方を失ってしまう「虻蜂取らず」とは対称的に「一挙両得」と「一石二鳥」は同時に2つの利益や効果をあげた場合に使える表現です。
「虻蜂取らず」の英語表現
虻蜂取らずの英語表現をご紹介します。
fall between two stools
(引用〈小学館 プログレッシブ和英中辞典〉より)
「fall between two stools」は英語で「虻蜂取らずに終わる」に当たるイディオム。直訳すると「ふたつの背もたれのない椅子の間で落下する」になりますが、ふたつの椅子のうちどちらに座るか迷って腰を浮かしているうちに、両者の間で尻餅をついてしまう様子を表しています。
<<例文>>
- Be careful not to fall between two stools.
(虻蜂取らずに終わらないように注意して)
chase two hares and catch neither
(引用〈小学館 プログレッシブ和英中辞典〉より)
「hares」とは、「野うさぎ」を表す英単語。直訳すると「二匹のウサギを追いかけても、一匹も捕まえられない」になり、日本語の「二兎を追う者は一兎をも得ず」をそのまま英語にしたような言葉です。意味も同じように2つの目標を同時に追求しようとすると、結局どちらの目標も達成できないことを表しており「虻蜂取らず」と同じ意味で使える英語表現です。
<<例文>>
- He tried to manage two projects at the same time, but he was just chasing two hares and catching neither.
(彼は同時に異なるプロジェクトを管理しようとしたが、虻蜂取らずだった)
虻蜂取らずと言うと日本語独特の表現のように聞こえますが、「どちらも得たいと欲を出すと何も得られない」ことが伝われば良いのですから、難しい言い回しをする必要はありません。
If you are too greedy, you’ll end up with nothing at all.
(引用〈小学館 プログレッシブ和英中辞典〉より)
何もなく終わるという意味の「end up with nothing at all.」を使って、「欲張っていると虻蜂取らずに終わってしまうぞ」と表現できます。
「虻蜂取らず」の使い方と例文
「虻蜂取らず」は、欲張ってしまっている誰かに、アドバイスをする形で活用できる表現です。普段の会話の中で使う場合も、「虻蜂取らず」を教訓として使うことを覚えておくとよいでしょう。
「虻蜂取らず」を日常生活の中で耳にした経験がある方は少ないかもしれません。表現を使った例文を確認しておくと、より深い理解に繋がるはずです。
欲を出しすぎている状況で教訓として使う
欲張りすぎたり、どっちつかずの状況になっていたりする場合に、自分や他の誰かをいさめる目的で「虻蜂取らず」を使うとよいでしょう。例えば、ビジネスシーンでも、板挟み状態のお客さん両方に良い顔をしようとしている営業マンに対して「虻蜂取らずの態度では両方の信頼を失うぞ!」と忠告できます。また、欲張っている状況の自分自身に対しても「虻蜂取らず」を思い出すことで、教訓として今の状況を見直すきっかけになるでしょう。
「虻蜂取らず」を使った例文
「虻蜂取らず」は、ポイントを押さえれば使いやすい表現でもあります。自然な流れで使えるように、例文も確認しておきましょう。
例文
・せっかく良いポジションへの提案を貰ったのに、給料交渉が上手くいかず虻蜂取らずの結果に終わった。
・虻蜂取らずに陥りやすい君は、まず優先順位を整理するとよいだろう。
・欲を出しすぎて失敗した経験から、虻蜂取らずな態度の危険性を学んだ。
「虻蜂取らず」の意味を知っておくと安心できる
「虻蜂取らず」は、欲張って両方を得ようとして、結局全てを失ってしまうことを意味します。言葉を見たり聞いたりしただけでは、意味が推測しにくい表現であるため、事前に意味を知っておくと安心です。どっちつかずの態度や、欲深すぎる考えは時にせっかくのチャンスを逃す結果に繋がってしまいます。自分の軸を持って行動できると、「虻蜂取らず」な結果を避けられるでしょう。
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