「虻蜂取らず」の意味
「虻蜂取らず」は、言葉を見たり聞いたりしただけでは、なかなか意味が推測しにくい表現です。その意味は、欲張って両方を追い求めたものの、最終的にはどちらも得られなかった状況のこと。「虻蜂取らず」が現在の意味を持つようになったのは、2つの逸話が関係しています。言葉の意味と成り立ちについてご紹介します。
「虻蜂取らず」とは「欲を出しすぎて失敗すること」
「虻蜂取らず」は、両方を手にしたいと欲を出した結果、どちらも逃してしまうことを意味します。読み方は「あぶはちとらず」です。
【虻蜂(あぶはち)取(と)らず】
二つのものを同時に取ろうとして両方とも得られないこと。欲を出しすぎると失敗することのたとえ。
(引用:小学舘『デジタル大辞泉』より)
「虻蜂取らず」と同じような状況を表す言葉として「二兎を追う者は一兎をも得ず」のほうが馴染み深いと感じる方もいるかもしれませんね。言い換え表現が増えることで、表現力をアップさせられます。
「虻蜂取らず」の由来に関係する2つのエピソード
「虻蜂取らず」の言葉の成り立ちとして、2つのエピソードをご紹介します。どのように「虻蜂取らず」が現在の意味で使われるようになったかを知ると、より言葉に対する愛着が増すはずです。誤用や思い違いを減らすのにも有効であるため、語源についても確認しておきましょう。
虻と蜂の駆除に失敗した人の話
1つ目のエピソードは、虻と蜂の両方を一気に駆除しようとした結果、どちらも駆除できなかった人のお話です。虫の駆除に出た人が虻と蜂に対峙した際に、どちらから先に駆除すべきか決めかねていました。事前にどちらから先に退治するか、心を決めていなかったため、最終的にはどちらも退治できませんでした。その様子から「虻蜂取らず」は、2つを同時に手に入れようとして、失敗することを意味するようになりました。
虻と蜂を取り逃がしたクモの話
2つ目のエピソードの主人公は、巣を張って獲物がかかるのを待っているクモです。まずクモの巣に捕まってしまったのは虻で、クモが虻に近づこうとしたタイミングで蜂も巣にかかりました。どちらから食べようか決めかねたクモは、向かっていた虻ではなく蜂のほうへむかうことにしました。しかし、虻はその間も巣から逃れようともがいていたため、不安になったクモは虻の所に急ぎます。結局は虻に逃げられてしまい、しょうがなく蜂へと方向転換しますが、蜂も巣から逃れ飛んで行ってしまいました。どっちつかずの行動で、両方ともを失ったクモの行動から「虻蜂取らず」ができたとされます。
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「虻蜂取らず」の類義語と対義語
欲張ってしまった結果、両方ともを失ってしまうことを意味する「虻蜂取らず」には、下記のような類義語と対義語があります。それぞれの表現の意味を分かりやすくご紹介します。