「登竜門」とは?
まずは「登竜門」の基本的な知識からチェックしていきましょう。
■「登竜門」の意味や読み方
「登竜門」は「とうりゅうもん」と読みます。その意味は、立身出世のための関門や、人生の岐路となるような大事な試験のことです。
海外で、日本の若手音楽家が名高いコンクールで優勝した時などは、「世界的演奏家への登竜門、エリザベート王妃国際音楽コンクールで優勝」などと報じられます。また、バレエにおいては、「ローザンヌ国際バレエコンクール」が、その分野の登竜門とされています。
「登竜門」は、このように、その分野で成功を収めるための関門として使われるので、「チャイコフスキー国際コンクール」や「ショパン国際ピアノコンクール」、バレエなら「ローザンヌ国際バレエコンクール」のような、国際的、または国内で、最も権威のあるコンクールなどで好成績を収めた時に使われる言葉です。ですから、市町村が開催するような地域のコンクールで優勝した場合には、「登竜門」という言葉が使われることはありません。
「登竜門」は、その試験を通過することによって、その分野での将来の成功が約束されるような場合に使われる言葉なのです。
■「登竜門」の由来
なぜ、人生の岐路となるような大事な試験のことを「登竜門」と言うのでしょうか。これは、中国の古い言い伝えに理由があります。
中国には、黄河上流にある竜門山を切り開いてできた、「竜門」と呼ばれる急流があり、急流の下に集まっている鯉は、「竜門」を登ることができませんでした。もし、その激しい「竜門」を登りきった鯉がいたならば、その鯉は竜になれるという言い伝えがあったのです。これは、とても難しいこと、困難を極めることを表しています。
この竜門の言い伝えから、立身出世の関門を「登竜門」と呼ぶようになったのは、中国の『後漢書』の故事が由来とされています。 その昔、李膺(りよう)という偉い官僚がいて、その官僚に認められた若い人は皆出世をすると言われていました。宮廷の実力者である李膺に認められることは、とても困難なことでした。そこから、この李膺に認められることを、竜門を登る鯉に例えて「登竜門」と呼んでいたという記述が、『後漢書』の『李膺伝』に残されています。これが現在の「登竜門」の言葉の由来です。
昔の日本は、大陸から文化が伝わっていました。日本においても、普段ニュースなどで耳にする「登竜門」は、この中国の故事と同じように使われています。
■「登竜門」を使う際の注意点
「登竜門」という言葉を使う時に、注意しなくてはいけないポイントがいくつかあります。先ほど少し触れましたが、「登竜門」はどのような試験やテスト、コンクールにも使える言葉ではないということも、そのひとつです。
また、本来「登竜門」は、「立身出世や成功のための関門を通ること」を意味する言葉なので、関門(試験やテスト)そのものを指すものではありません。ですが、現在では、「登竜門」を関門そのものとして指す言い方が許容されているのが実情です。冒頭で説明した「世界的演奏家への登竜門、エリザベート王妃国際音楽コンクールで優勝」などというニュースも、一般的に使われるようになっています。
一方、「登竜門を登る」や「登竜門を通過する」という表現は、明らかに二重表現となるため、間違って使わないように注意しましょう。
「登竜門」の使い方を例文でチェック
実際に「登竜門」の使い方を、例文を用いて確認していきましょう。
「直木賞(芥川賞)は新人作家の登竜門だ」
「登竜門」は「立身出世や成功のための関門を通ること」を意味する言葉なので、これは本来は誤用とされていた「登竜門」の例文です。現在では許容されていて、毎年、芥川賞・直木賞発表のシーズンが到来すると、耳にするフレーズです。
「トップ棋士への登竜門、新人王戦」
「登竜門」と言えば、将棋界の新星、藤井壮太さんを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。最年少の19歳という若さで、竜王・王位・叡王・棋聖の4冠を獲得。まさに「登竜門」という言葉は、藤井壮太さんのためにあるのではないかと思われる勢いです。
ただし、この例文も、本来なら誤用ですが、現在は許容されている表現と言えます。