「羊歯」とは?
「羊歯」は、植物の種類のことで、花を咲かさず(種を作らず)、胞子によって増えるのが特徴です。同じように胞子で増える植物には「苔」がありますが、「羊歯」と「苔」には明確な違いが見られます。「羊歯」は、葉や茎や根が区別できますが、「苔」は、葉や茎や根の区別がありません。
「羊歯」は身近な場所に生息しており、公園や山の中で、葉の裏に胞子嚢群(ソーラス)をぎっしりと抱えた葉を見ることができます。「羊歯」がこのように胞子で増えるということを知らないと、イヌワラビの葉裏にある大量の茶色いブツブツが虫に見えて、驚いて手を離した経験のある人もいるかもしれません。
また、見た目が苦手と感じる人もいるでしょう。この大量のブツブツが胞子です。想像以上にギッシリとくっついているので、集合体恐怖症(トライポフォビア)の人などは、我慢ならない恐怖感に襲われます。
「羊歯」の種類は1万以上にも及びます。ワラビやゼンマイも「羊歯」の一種で、これらは、食べられる植物として知られています。また観葉植物として人気の、可愛らしいアジアンタムも、「羊歯」の一種です。「羊歯」の観葉植物は、苔玉やハンギングにして楽しむこともできます。
お正月飾りに使われるウラジロも、実は「羊歯」の一種で、表は緑で、裏が白の葉を持つのが特徴。ウラジロには、「邪気を払う」、「後ろ暗いことがない」、「ともに白髪になるまで」という意味があり、これらのいわれが、ウラジロを神棚に使う理由と考えられています。
また、世界遺産に登録された奄美大島は、最大で高さ15メートルにもなるヒカゲヘゴという大型の木生シダが生い茂り、鬱蒼としたジャングルのような森が広がります。「生きた化石」といわれるヒカゲヘゴは、奄美大島が国内の北限となっていて、亜熱帯の森らしい景色を作っています。
このように、「羊歯」の仲間は、足元にある背の低いものから、ヒカゲヘゴのようにビルの5階くらいの高さのものまで、バラエティに富んだ姿を見せてくれます。
■由来と読み⽅
「羊歯」は「シダ」と読みますが、なぜ「羊」と「歯」の漢字が使われているのでしょうか。「羊」は「シ」と読みませんし、「歯」は「ダ」と読みません。シダは、しだれることから付いた名前だと言われていますが、小さい葉が規則正しく並ぶ様子が羊の歯に似ているから「羊歯」という漢字があてられたという説が有力です。
■花言葉
「羊歯」は種子植物ではなく、花は咲きませんが、花言葉を持っています。「羊歯」の花言葉は、「誠実」、「夢」、「愛らしさ」、「魅惑」など。「誠実」は、「羊歯」の葉が規則正しく並ぶ様子に由来しているものと考えられます。また、ヨーロッパでは、夏至の夜に「羊歯」が花を咲かせるという伝承があるため、「魅惑」という花言葉が生まれたようです。
「羊歯」は、花ではありませんが、2月5日の誕生花でもあります。2月5日生まれの人は、誕生花が薔薇や百合などの美しい花ではないことにがっかりするかもしれませんが、「羊歯」の花言葉はどれも素晴らしいものなので、あまり落胆する必要はありません。
「羊歯」の特徴
ここまでの解説でも少し触れましたが、ここからは「羊歯」の特徴をもう少し詳しく解説していきましょう。「羊歯」には以下のような特徴があります。
維管束(いかんそく)がある
「羊歯」には、維管束という、師管や道管などの集まりがあります。「苔」とよく比較される「羊歯」ですが、「苔」にはこの維管束がありません。
花は咲かない
花が咲いて種で増える種子植物に比べ、「羊歯」は花を持たず、種子もできません。花が咲かないと一般的に思われている竹でさえも、60年から120年周期で花を咲かせますが(花を咲かせると枯れる)、「羊歯」は全く花を咲かせることはありません。