今だからこそ試してみたい先人の知恵、それが“季節湯”
寒い冬の日、お風呂にゆずをドボンと入れて、香りを楽しみながら湯船に浸かる…誰もがそんな体験を一度はしたことがあるのではないでしょうか? ゆず湯に代表される日本ではお馴染みの習慣・季節湯ですが、そのルーツはなんと、さかのぼること平安時代! 真言宗の開祖である空海が、医療の一環として始めたものだと言われているのだとか。(当時は、季節湯の薬効を治療として用いていたと考えられているそうです。)
時を経て江戸時代になると季節湯は一般的なものになり、治療を目的として処方化され、皮膚病などに用いられたと言います。慶長年間の終わり(1600年代初頭)ごろには、町中のあちらこちらに銭湯が建てられ、『町ごとに風呂あり』といわれるほどに。
そんな銭湯群雄割拠時代を勝ち抜くために、客寄せとして活躍したのが季節湯だったのだそう。銭湯の主人たちは、お客さんを集めるべく「うちの湯は身体にいい薬湯風呂で、あせもや胃弱に効きますよ」などと、さまざまな効能をアピールし競っていたようです。
なお、江戸時代の銭湯は基本的に混浴。その後に幕末のペリー来航の影響を受けるなどして徳川幕府が「混浴禁止令」を出したものの、薬湯風呂だけは混浴が認められていました。そんな事情もあり、どの銭湯もこぞって営業形態を薬湯風呂に変更した結果、季節湯の習慣が残った…という見方もあるとのこと。
昔の人の経験や生活文化の中に根付いた巧みな知恵と、縁起を担ぐ前向きな心意気が詰まった『季節湯』。さっそく、各月の季節湯をチェックしてみましょう。
各月の季節湯まとめ
1月「松湯」
新年を迎える際に玄関に飾る「門松」。冬の時期も青々とした緑を保っている松は「不老長寿」の象徴とされています。また、「神を待つ(松)木」として大変縁起の良い植物だとされています。松には精油成分が多量に含まれており『体のすみずみまで温まる』として、1月は松湯に入るようになりました。
効能:保温効果、森林の香りでリフレッシュ効果
2月「大根湯」
大根の辛味成分には「炎症を抑える、咳を止める、殺菌効果」などの効果があり、風邪をひいたときなどは昔から食べられてきました。また、大根の葉にはビタミンAやB1、C、E、カルシウム、鉄、ナトリウムなどの成分が豊富で、このほか温泉に含まれるという塩化物質や硫酸イオンなども含まれています。
効能:保温効果、新陳代謝の促進、民間療法として冷え性や婦人病治療などにも
3月「よもぎ湯」
春が旬のよもぎは、草団子や草餅などの材料として身近な植物です。漢方に使われるほどの高い薬効を持ちます。
効能:止血、殺菌、保温・発汗、解熱作用、肩こり・腰痛・神経痛に効く、香りでストレス解消・安眠
4月「さくら湯」
桜湯には樹皮を用います。煮出した樹皮には消炎効果があるとされ、湿疹や打ち身などの炎症を和らげる目的で桜湯に入る習慣ができました。
効能:消炎、湿疹・打ち身に効く
5月「菖蒲湯」
端午の節句(5月5日)に菖蒲を「勝負」や「尚武(武勇を重んじること)」にかけて、武家の子供の丈夫な成長を願って菖蒲を入れたお風呂に入ったのが始まりとされています。菖蒲湯はとても強い香りがしますが、この香りが邪気を祓い厄難を除くとされたため、菖蒲湯に入る文化が広まったとされています。
効能:血行促進、疲労回復、香りでリラックス
6月「どくだみ湯」
多くの効能を持つ“どくだみ”は漢方の世界で「十薬(重薬)」とも呼ばれており、「ゲンノショウコ」「センブリ」とともに日本三大薬草のひとつとされています。抗菌や消炎効果を期待され、昔からにきびやあせも、湿疹対策として用いられました。湿気が多く、暑くなり始める6月にぴったりの季節湯です。
効能:消炎、抗菌、あせも・湿疹・水虫・かぶれ
7月「もも湯」
7月ごろから旬を迎える桃。『夏の土用はもも湯に入る』のは、江戸時代からの習慣です。肌トラブルを抑える効果があるので、紫外線量の多い夏場にはぴったりの季節湯です。
効能:消炎、解熱、収れん、日焼け・あせも・湿疹・虫刺され
8月「はっか湯」
ハーブの一種「ペパーミント」であり、メントール成分が爽やかで清涼感が味わえる「はっか湯」は、真夏の暑い時期によく合う季節湯です。湯上がり後はさっぱりとしますが実は体を温める効果があり、冷房による冷えにも効果的です。
効能:保温、血行促進、疲労回復
9月「菊湯」
菊の香りは、『夏の疲れを癒してくれるもの』とされてきました。菊湯には通常、乾燥したものを使いますが、生のまま使われることも。なお菊湯には野生で多くみられる、画像のリュウノウギクという種類を用います。
効能:保温、血行促進
10月「生姜湯」
生姜は辛味成分と精油成分が豊富で、湯に入れると身体を温める効果があるとされてきました。また、辛味成分には「防腐・抗菌作用、抗酸化作用」があるとされ、さまざまな漢方にも用いられています。
効能:保温、血行促進、抗菌
11月「みかん湯」
柑橘類の果皮に含まれる精油成分には血行促進作用があり、『体が温まり湯冷めしにくい』という効果があります。冬の定番果実「みかん」は、美味しく食べるだけでなく、皮を季節湯として用いることができます。古くから、みかん湯に入ると「体が温まり風邪を引きにくい」といわれてきました。
効能:保温、美肌効果、爽やかな香りでリラックス効果
12月「ゆず湯」
冬至には「ゆず湯」に入ると一年中風邪をひかないという言い伝えがあります。この時期に旬の“ゆず”。みかんと同じく柑橘類の果実なので、体を芯から温める効果があり、冬の薬湯としてもうってつけです。
効能:保温、血行促進、消炎、抗菌、冷え性・ひび・あかぎれ・風邪に効く、爽やかな香りでリラックス効果
日々の疲れやストレスをリフレッシュしてくれる季節湯。入浴剤を使うのも勿論いいことですが、たまには植物や果物の香りで、季節の移り変わりを楽しむのも素敵ですね♡
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