「中庸」とは「偏りがなく中立的である」こと
「中庸」とは「偏りがなく中立的である」ことです。読み方は「ちゅうよう」です。
単純に中立的であることを示しているわけではなく、道徳や倫理的に好ましいかどうかも加味して判断されます。辞書では以下のように解説されています。
【中庸】
かたよることなく、常に変わらないこと。過不足がなく調和がとれていること。また、そのさま。
対立する2つの意見があるとき、どちらか片方の意見を取り入れるのではなく両方の意見をバランス良く取り入れるといったニュアンスも含まれています。
由来は孔子の『論語』
「中庸」の由来は、孔子の『論語』からだと言われています。『論語』には「中庸の徳たるや、それ至れるかな」という一節があり、これは「中庸の道は徳の指標として最高なもの」という意味を持っています。
さらに儒学の教えに四書と呼ばれるものがあります。四書とは以下の4つの書物を指します。
・論語
・大学
・中庸
・孟子
四書においても「中庸」は、重要な教えとされています。孔子の孫にあたる子思が、書物として思想を言語化し、広めるきっかけを作りました。
「中庸」の使い方と例文
「中庸」は学者だけが使いそうなイメージですが、日常生活でも活用できます。「中庸」は、名詞と形容詞で使い方が変わってくるため、注意しましょう。
「中庸」を名詞として使う場合は、主に以下の2つの使い方をします。
・主格
・目的格
主格は、主語として使う代名詞のことです。「中庸は(が)」のように使います。一方、目的格は、目的語として使う代名詞のことです。「中庸を」に続くように文章を続けます。
また、まれに形容詞として使われることもあります。この場合、名詞を装飾する目的で「中庸の(な)」と続くように使います。しかし「中庸」自体がポピュラーな言い回しではないため、使う場面は少ないでしょう。
では「中庸」はどのように使えばいいのか、以下の例文を参考にしてみてください。
〈例文〉
・ビジネスでは、【中庸】が大切である。
・【中庸】を踏まえた意見を彼女が出してくれた。
・【中庸】な立場で物事を考えるのは、必要なことだ。
「中庸」の類義語2つ
ここからは、「中庸」の類義語2つについて解説します。
1.度を越さない程度に慎む「節制」
2.一方に偏らない「中道」
意味や使い方、例文まで詳しく解説します。類義語を知っていることで、言い換え表現なども可能になり、より自分の気持ちに合った言葉で表現できます。「中庸」が使いにくいと感じる方は、以下の類義語も参考にしてみてください。
【類義語1】度を越さない程度に慎む「節制」
「中庸」の類義語1つ目は、度を越さない程度に慎む意味がある「節制(せっせい)」です。辞書では以下のような解説がされています。
【節制】
度を越さないよう控えめにすること。ほどよくすること。
「中庸」にも同様に適度に慎む意味が含まれているため、類語と判断できます。ただし、「節制」は欲望に対して慎むことが要求されていますが、「中庸」では求められません。微妙なニュアンスの違いを覚えておきましょう。
以下で例文を紹介するので、参考にしてみてください。
【例文】
・100万円貯金するため、お金をあまり使わないように【節制】する。
【類義語2】一方に偏らない「中道」
「中庸」の2つ目の類義語は、一方に偏らない意味がある「中道(ちゅうどう)」です。辞書では、以下のように解説されています。
【中道】
一方にかたよらない穏当な考え方・やり方。中正な道。
(引用すべて〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「中道」は、仏教用語とされています。一方に偏らない意味で「中庸」と似ていますが、「中道」は政治的立場を示す際に使われます。さらに「中道」は中間的な意味ではなく、ベストな選択をするという意味もあるのです。
以下で例文を紹介するので、参考にしてみてください。
【例文】
・【中道】左派は、社会民主主義的な考え方を持っている。
まとめ
「中庸」とは、「偏りがなく中立的である」ことを指します。孔子が考えた教えが由来です。その後儒学では、「中庸」の考え方は重要とされてきました。
また「中庸」にはアリストテレスの考え方も存在します。アリストテレスは、中間を示すと説いています。アリストテレスの教えでは、過剰と不足の中間の状態がバランスの良く、好ましいとされているのです。
「中庸」の使い方は、名詞・形容詞で微妙に違うため注意しましょう。さらに「中庸」には「節制」と「中道」という類語もありますが、どちらも中庸とは違ったニュアンスを含んでいるため、使う際には十分注意してください。「中庸」の教えを知って日常生活に活かしましょう。
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