「享受」の意味と使い方は?
「享受(きょうじゅ)」という言葉を聞いても、意味がよく分からない人もいるのではないでしょうか?「享受」の意味について、詳しく解説していきます。
受け取って自分のものにすること
「享受」の意味を辞書で確認してみましょう。
[名](スル)受け入れて自分のものとすること。受け入れて、味わい楽しむこと。「自由を―する」「テレビの恩恵を―している」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「享受」は、ただ単に受け取ることとは微妙にニュアンスが異なります。「享」という漢字は、もともと「供物を勧める」や「高い地位の人から与えられる」という意味ですが、現在では「ありがたく受け取る」こととして使われています。「受」は文字通り、「受ける」や「受け入れる」という意味。
このように、「自分にとって好ましいことをありがたく受け入れ、自分のものにする」のが「享受」です。自分にとって好ましくないものを受け取る場合、「享受」という言葉は使いません。
「享受」の使い方と例文
「享受」は、自由・恩恵・利益・便利さといった、抽象的かつ精神的なものを受け取って堪能することを意味する言葉です。法令関係では金銭を受け取るときにも「享受」といいますが、一般的にはあまり使われません。
【例文】
●庭に小さな畑を耕して、ささやかながら自然の恵みを享受して暮らしている
●このサービスを提供すれば顧客からの評価が上がり、会社は大きな利益を享受するだろう
また、敬語表現では「享受いたします」や「享受します」という使い方をします。
【例文】
●営業成績の成果としていただいたこの表彰を、謹んで享受いたします
「享受」を使う際の注意点
「享受」のようにあまり頻繁に使うことがない言葉は、誤用に気づきにくいもの。ここでは、「享受」を使う際の注意点についてみていきましょう。
「享受させていただく」は誤用
「させていただく」は、「させてもらう」の謙譲語にあたり、相手の許しを得て、ある行動を行うという意味。対して、「享受」には、「自分の意思で受け取って、自分のものにすること」という意味があるため、組み合わせると不自然です。目上の相手に使う際は、「享受いたします」が自然でしょう。
「ご享受ください」とは言わない
読みが同じ言葉に、「ご教授(きょうじゅ)」があります。ビジネスシーンでは、目上の人に教えを乞う時に、「ご教授ください」と言いますよね。このフレーズと混同してか、中には「ご享受ください」と誤用している人も。
言葉通り解釈すると、「あなたの好きなように受け入れて自分のものにしてください」ということになり、意味がちぐはぐですよね。「ご享受ください」という表現はないので、注意してみてください。
「享受」の類義語は?
「享受」の類義語は、「拝受」「享楽」「受益」など。いずれの言葉も「受け取る」意味を持っていますが、少しニュアンスが異なります。それぞれの言葉の意味を詳しく見ていきましょう。
受けることをへりくだって表現する「拝受」
「拝受」は、受け取ることをへりくだって表現するときに使用する言葉です。相手に対する敬意を表しており、ビジネスシーンなどでは「拝受いたします」のような使い方をします。「拝受」も「いたしました」も謙譲語なので二重敬語になりますが、一般的に使われている表現。どうしても気になるときは、「拝受しました」と表現するとよいでしょう。
【例文】
●昨日送っていただいた契約書を、本日拝受いたしました
●調査結果のデータを拝受しましたので、後ほど内容を精査させていただきます