「一子相伝」の意味は「奥義を一人にだけ伝えること」
「一子相伝」とは、自分の持っている知識や知恵、技術といった奥義を一人に伝えるという意味の四字熟語です。自分から大切な技術や知識を代々受け継ぐときには、奥義や秘伝は他の人には漏れないように内緒にする様子がイメージできるでしょう。
一子相伝の解説
いっし‐そうでん〔‐サウデン〕【一子相伝】
学問・技芸などの奥義・秘法を自分の子の中の一人だけに伝えること。
〈引用(小学館 デジタル大辞泉)より〉
「一子相伝」の言葉にもあるように、受け継ぐのは「一子」であるとされています。そのため、自分に複数の子どもがいる場合には、どの子どもに伝えるのかを絞らなければなりません。
このように、「一子相伝」はさまざまな極意や奥義を引き継がせる際に使用するといえるでしょう。
実子以外も対象になる
前述の通り、「一子相伝」は知恵や技術を受け継ぐときに使いますが、対象は実子でなくてもOKです。例えば、職場の上司と部下、先生と生徒といったように、親子関係でなくても「一子相伝」されることがあります。
広義では信頼関係があり、まるで自分の子どものように可愛がっている相手が対象です。また、家族の中でも実子に引き継ぐのが困難な場合には、弟や親戚へ伝授する場合もあるでしょう。このように、「一子相伝」する相手はさまざまで、自分の子どもには限りません。
「一子相伝」を使う例文
「一子相伝」は、日常生活ではあまり耳にしない言葉かもしれません。しかし、誰かに奥義や知恵を授かったときに、それを外部に漏らさないようにするためにも、意味を理解しておく必要があります。
例えば、自分の受け継いだものや方法を他者から教えてほしいと言われた場合、それを断るために「一子相伝」を活用することができます。「一子相伝」を使った例文は、以下の通りです。
・このワインの製造方法は【一子相伝】なので、公開することはできません
・彼が見つけた研究成果は、【一子相伝】の価値があるものだ
・師匠から【一子相伝】してもらったメニューをつくった
「一子相伝」における4つの類語
「一子相伝」における類語は次の4つです。
・父子相伝
・一家相伝
・奥義秘伝
・門外不出
これらの類語にも、それぞれ特別な技術や秘伝の方法を受け継いでいくという意味が込められています。しかし、使われる言葉によってニュアンスが変わったり、使うシーンが異なります。ここでは、「一子相伝」の類語にあたる4つの四字熟語を紹介します。
父子相伝(ふしそうでん)
「父子相伝」は、言葉の通り父から子へ奥義を受け継ぐという意味の四字熟語です。先程の「一子相伝」は、自分の子ども以外でも代々受け継いでいく他者が対象になっていました。
一方、「父子相伝」は親子関係に限定されるため、言葉からも使うシーンが想像しやすいのが特徴です。このように、同じ奥義を伝授するという意味を持っていながらも、「父子相伝」は父親と子どもという限られた関係の中で成立します。「父子相伝」の例文は、以下の通りです。
・【父子相伝】された技術を現代アートに組み込んだ作品を発表した
・伝統工芸を【父子相伝】され、3代目の店主となった
一家相伝(いっかそうでん)
「一家相伝」とは、「一子相伝」と同様に奥義や特別な知識などを代々受け継いでいくことを意味する四字熟語です。自分の奥義を絶やさずに後世へつなげるため伝授する点では、「一子相伝」とほぼ同じです。
特徴として、「一家相伝」の場合は対象となる一人ではなく、家系全体に引き継ぐ場合に使用します。「一子相伝」は一人に伝えているため、意味の差は歴然といえるでしょう。
家系全体で秘密にしておかなければならない内容は、一人に伝えるとは限りません。全員に秘密を伝え、それを漏れないようにするのが「一家相伝」の形です。「一家相伝」の例文は、以下の通りです。
・我が家は【一家相伝】の陶芸家をしており、器の作り方はお伝えしかねます
・【一家相伝】で引き継いだ秘伝たれの味は、格別なものだ
奥義秘伝(おうぎひでん)
「奥義秘伝」とは、周りの人には秘密にしておくべき秘密や技術を特定の少人数に伝えることを意味する四字熟語です。周囲には秘密にしておくという点は「一子相伝」と同様です。
「奥義秘伝」は「最も大切なこと」を伝える点と、複数人に伝える点が特徴です。そのため、一人に受け継いでいくものは「一子相伝」や「父子相伝」、家系に受け継ぐのは「一家相伝」、それ以外の少人数の場合は「奥義秘伝」と覚えるとよいでしょう。「奥義秘伝」の例文は、以下の通りです。
・【奥義秘伝】で受け継いだ知恵を、ここで活かすときだ
・このラーメン屋のスープは【奥義秘伝】の味といえよう