先入観
「先入観(せんにゅうかん)」の意味は以下の通りです。
前もっていだいている固定的な観念。それによって自由な思考が妨げられる場合にいう。(小学館『デジタル大辞泉』より)
「先入観」とは、他の人からの噂や世の中の情報を聞いたことで持ってしまう思い込みのことです。実際に自分が体験したり、目にしたことから得た情報ではなく、外部からの情報を鵜呑みにしてしまうことで偏見や誤解を持ち、素直な心で物事を見られなくなることってありますよね。そうした状態のことを、「先入観にとらわれる」といいます。
固着観念
「固着観念(こちゃくかんねん)」は、「固定観念」と同じ意味を持つ言葉です。「固着」とは、「他のものにしっかりくっつくこと」を意味します。ひとつの考えに縛られて、融通が利かないようなイメージのある言葉ですね。
思い込み
「思い込み」も固定観念とよく似た言葉です。意味を辞書で調べてみましょう。
深く信じこむこと。また、固く心に決めること。(小学館『デジタル大辞泉』より)
「思い込み」も、一度そのような状態になってしまうと覆すことが難しい状態です。日常生活では「あの人は思い込みが強いから困る」というように、少し厄介な人のことを指すことが多いため、あまりいい意味を持つ言葉ではありません。
「固定観念」を英語表現にすると
「固定観念」を英語で表す場合「stereotype(固定観念)」を使うといいでしょう。また、「固定観念にとらわれている」と言いたいときは「stereotype」の形容詞である「stereotypical」を使用して、「be being stereotypical」というフレーズを使ってみましょう。
「固定観念」のメリット・デメリットとは
言葉の印象から、ネガティブな使い方をすることの多い「固定観念」ですが、あながちデメリットばかりとは言い切れないないようです。ここでは、メリットとデメリット双方の視点から考えてみましょう。
メリット
「固定観念」のメリットとしては、次の3点が考えられます。
1.規律や規範をつくる
固定観念は、組織や集団において一定の規律を作り出します。つまり、組織や集団に属するメンバーが共通の観念を共有することができるということ。例えば、学校や職場において制服が採用されている場合、「学校や職場においては、制服を着用すべきである」という固定観念が生まれ規律のある環境を作り出すのです。
2.意思決定の迅速化
ある種の固定観念に基づいて物事を判断することは、情報の選択をすることなく、素早い意思決定が可能になります。このことは、時間が制約されている状況で有利に働くことがありますね。具体例をあげるなら、「人が心停止を起こし倒れた時、AED(自動体外式除細動器)を用いて迅速な救命活動を行う」といった観念です。
3.組織的な結束力の強化
固定観念が共有されることで、組織やグループ内の結束が強まり、アイデンティティを確立するのに役立つことも考えられます。これにより組織や集団は、より一致団結して共通の目標に向かって動くことが可能に。具体例を挙げるなら、スポーツチームやファンクラブなどで、チームに対する強い忠誠心や帰属意識を共有することで、メンバー間に強い絆とアイデンティティが生まれます。
デメリット
続いて、「固定観念」のデメリットを幾つか挙げてみます。
1.創造や革新への影響
固定観念は、新しい情報や物事の変化に対しての適応への妨げとなる場合があります。特に、技術革新においては過去の成功体験が固定観念を生み出してしまい、新しいアプローチを思考する障壁となることがあります。
2.柔軟性に及ぼす影響
固定観念に縛られた思考は、問題へのアプローチを遅らせたり解決への障害となることがあります。例えば、職場における男女格差の是正が遅れているのも、根強い固定観念が社会の意識変化への対応にも影響を与えていると言えるかもしれません。
3.偏見と排除
「固定観念」による見方や考え方は、強い思い込みや偏見を強めてしまうことがあります。このことは、不公平や差別へと発展する危険性もあります。古くからあるのは、性別の役割や職業への固定観念。例えば「子育ては女性の役割」という固定観念は、今や社会で問題視されています。
固定観念にとらわれないために
「固定観念」のメリットとデメリットを考えてみると、私たちは双方のバランスを保ちながら社会における物事に対処していることがわかります。大切なことは、「固定観念」がもたらす制約をよくよく理解して、必要に応じてそれらを超える柔軟性を持つことではないでしょうか。
最後に
「固定観念」は、長年にわたる経験や環境によって形成されます。そのことは先入観や偏見などを生み出し、ややもすると柔軟性を欠いた思考にもなりがちです。それは、新しい情報や異なる視点の理解や受容を妨げとなることにもなります。しかしながら「固定観念」による弊害やデメリットを意識することで、より公平で開かれた世界観を築くことができるでしょう。
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