「腐っても鯛」ってどんな言葉?
立派なものは、多少品質が落ちても良いものであることに変わりないという意味の「腐っても鯛」。しかしこの「腐っても鯛」を使うときには、少々注意が必要です。正しい意味を理解せずに使うと、相手にとって失礼な発言となってしまう恐れがあるためです。
「腐っても鯛」の意味
「腐っても鯛」とは、以下のような意味をもつ言葉です。
もともと立派であるものや、優れているものは、落ち目になったり悪条件の元に晒されたりしても、なおその良さや品格を持つことのたとえ
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
「腐っても鯛」は、本当に立派なものというのは、どのような状況下であってもその品格を保ち続けるという意味で使われます。しかし場合によっては「腐る」という強いマイナスな表現が含まれていたり、「落ち目」というニュアンスが強い表現のため、使用には注意しなければなりません。
「腐っても鯛」の由来
ではなぜ「腐っても鯛」という言葉が、上記のような意味で使われるようになったのでしょうか。「腐っても鯛」の意味は、ただの魚ではなく「鯛」であることに由来しています。
鯛という魚は、主にお祝いの席でいただくものであり、縁起物とされる「高級魚」です。もちろん高級魚と言われる魚は他にもありますが、最も代表的なものが鯛でしょう。そして鯛が、元々価値の高い魚であるため、仮に腐ったとしても他の魚と同じ価値になることはないことを意味して「腐っても鯛」という言葉が生まれました。
「腐っても鯛」の使い方は?
では日常的に「腐っても鯛」を用いる場合には、どのような使い方をすべきなのでしょうか。せっかく言葉の意味を知っていたとしても、使い方を間違えてしまえば、自身が恥ずかしい思いをするだけでなく、相手に違和感を与えてしまいます。「腐っても鯛」を正しく使うためにも、文章や会話のなかでの使い方を学んでおきましょう。
「腐っても鯛」の例文
「腐っても鯛」を文章のなかで使う場合には、以下のような例文を参考にしてください。
【例文】
・A選手のピッチングは、現役時代の成績には及ばなかったものの、やはり各賞を総なめした選手であっただけはある。まさに【腐っても鯛】だ
・全盛期に比べると声量が衰えてしまっているが、やはり【腐っても鯛】で、彼女は観客を魅了する歌声を披露していた
「腐っても鯛」の会話例
日常会話のなかで「腐っても鯛」を使う場合は、以下の会話例を参考にしてみてください。
Aさん「アイドルとして活動し、40歳になった今でもその活躍を見せている彼女はすごいよね」
Bさん「そうだね。体力だって衰えているはずなのに素晴らしいよ」
Aさん「やはり華があるよね。まさに【腐っても鯛】だ」
「腐っても鯛」を使うときの注意
繰り返しになりますが、「腐っても鯛」という言葉を使うときには注意が必要です。一見すると褒め言葉なので、誰に使っても良いように感じますが、それは誤りです。「腐っても鯛」とは、全盛期よりも、何かしらが衰えてしまっているといったニュアンスを含んだ言葉です。そのため、目上の人に直接使う場合は、不快感を与えてしまう可能性が高いでしょう。
「腐っても鯛」の類義語・対義語は?
優れたものは状態が悪くなったとしても、その価値を保つという意味で使われる言葉は、「腐っても鯛」の他にもいくつかあります。また反対の意味を持つ対義語もあります。「腐っても鯛」ということわざとともに、類義語や対義語まで覚えておくことで、より一層ボキャブラリーを増やすことができるでしょう。
「腐っても鯛」の類義語
「腐っても鯛」と似た意味で使われる言葉には、以下のようなものがあります。
・古川に水絶えず(ふるかわにみずたえず)
・沈丁花は枯れても芳し(じんちょうげはかれてもかんばし)
・破れても小袖(やぶれてもこそで)
それぞれについて詳しく説明します。「古川に水絶えず」は、伝統のあるものや、基盤がしっかりとしているものを「古川」と表現しています。そして、そのような古川には水が絶えない、つまり伝統のあるものは干からびることがないという意味で使われています。「腐っても鯛」よりも、伝統や基盤の価値を強調するニュアンスで使われる言葉です。
「沈丁花は枯れても芳し」は、沈丁花という香りの強い花を、鯛と似た意味で用いた言葉です。香りの強い花……つまり優れた花は、たとえ枯れてしまったとしてもその香りを損なうことがないといった意味で使われています。
「破れても小袖」の小袖とは、絹の衣服のことです。絹という上質な素材でできた衣服は、破れてしまっても、その良さを失わないといった意味で使われます。