「手を拱く」の意味や読み⽅とは?
「手を拱く」。文字で見ると「少し難しい」と感じる人もいるかもしれません。まず、意味や読み方を解説します。
読み⽅と意味
「手(て)を拱(こまぬ)く」または「拱(こまね)く」と読みます。辞書によると、意味は次の通り。皆さんは、どんな使い方をしていますか?
1 両手の指を胸の前で組んで敬礼する。中国で行われたあいさつの方法。
2 腕組みをする。手をつかねる。
3 何もしないで傍観している。手をつかねる。腕をこまぬく。(<小学館 デジタル大辞泉>より)
由来や語源
辞書によると「手を拱く」の「拱く」には、「こまぬく」「こまねく」の2通りの読み方と、本来の意味が3つあることがわかりました。間違った使い方をされることが多い「手を拱く」について、まずは言葉の由来や語源を理解しましょう。辞書を見ると、元々は「こまぬく」と言われている言葉が、次第に口語的に「こまねく」になっていったことがわかります。
漢字で表す「手を拱く」の「拱く」は「手をこまぬく」と読みますが、次第に「手をこまねく」と、ひらがなで使われるように。「手をこまぬく」とは、元々、両手を胸元で組み合わせる姿のこと。そこから「腕組みをして何もしない」という意味が派生して、さらに「傍観する」という意味で使われるようになったのです。
では、これまで説明した使い方で、皆さんはどの使い方をすることが多いですか? 「どれも当てはまらない」と感じている人もいるのではないでしょうか。 実は、文化庁が発表した「国語に関する世論調査」によると、「本来の意味ではない」使い方をしている人がとても多い結果となっているのです。
この調査で「手を拱く」は「何もせずに傍観している」と「準備して待ち構える」の「どちらの意味だと思うか」を尋ねたところ、次のような結果に。
《平成20年度調査》
何もせずに傍観している(本来の意味とされる)40.1%
準備して待ち構える(本来の意味ではない) 45.6%
《令和頑年度調査》
何もせずに傍観している(本来の意味とされる)37.2%
準備して待ち構える(本来の意味ではない) 47.4%
(<小学館 デジタル大辞泉>より)
平成20年度では、本来の意味ではない「準備して待ち構える」が5.5%高く、10年後の令和元年度調査では、さらに増え、本来の意味と逆のニュアンスで理解している人が、半数近くいることがわかりました。
このような結果になった理由として、「こまねく」の「まねく」が「招く」の文字が想起され、「招く」ことが「待ち構える」のイメージに重ねられやすいと考えられます。
ビジネスシーンでは「手を拱く」がどの意味で使われているのか、注意が必要です。この機会に正しい意味を押さえておきましょう。場合によっては、相手が誤解しないよう、ニュアンスを補足して使うのが得策かもしれません。
使い⽅を例⽂でチェック
「手を拱く」の使い方を例文で見てみましょう。
1:新しい大口取引先の礼儀にかける態度に、上司が手を拱いている
「腕組みをする」「傍観する」など、どうしようもない状況を表した一文です。新規顧客を開拓し、会社として成果が出せたとしても、腕組みをするような案件に遭遇した場面が浮かびます。腕組みをする姿は、どうしようもなさの表れともいえるでしょう。
2:非常時に、現場の社員は決して手を拱いていたわけではない
「拱く」の「何もしないで傍観している」の意味を否定する使い方です。「手を拱く」ような厳しい状況の中でも、きちんと対処したことを伝えることができます。