BCPとは災害時も事業を継続させる計画のこと
BCPとは「Business Continuity Plan」の略で、「事業継続計画」ともいいます。企業が災害やテロなどの緊急事態に遭遇した際、事業資産への被害を最小限に抑えつつ、事業の継続や早期復旧を図るための計画のことです。ここでいう「計画」とは緊急時の段取りだけでなく、普段から行うべき行動まで取り決めた、マネジメント全般を含めたニュアンスで用いられることが一般的です。
地震・台風などの自然災害やテロ攻撃などの緊急事態は突然起こります。これらにうまく対応できない企業は、事業の縮小にとどまらず、倒産といった最悪の事態に陥る可能性もあるでしょう。そのため緊急時でも事業を継続し、早期に復旧するための計画の策定が求められるのです。
事業の分野を問わず、BCPの策定には必要性がありますが、特に2021年の介護報酬改定に伴い、介護事業で2024年までにBCP策定が義務化されていることを押さえておきましょう。
混同しやすい言葉に注意
なお、BCPと類似した言葉には、「防災計画」や「BCM」などがあります。防災計画は災害予防・対策が目的であり、災害時の事業継続や復旧を目的としたBCPとは異なります。またBCMは「事業継続マネジメント」を意味し、BCPを運用するための総合的なマネジメントを強調する際に使われる言葉です。
BCP策定の目的
BCPを策定する目的としては、主に次の3つが挙げられます。
・事業の継続と早期の復旧を図る
・従業員の命を守る
・CSRを果たす
BCPの策定の主な目的は、事業の継続や早期の復旧を図ることや従業員の命を守ることなどです。また、BCPにはCSR(企業の社会的責任)を果たす側面も。例えば災害時にホテルが帰宅困難者を受け入れたり、食品関連企業が食料物資を提供したりといった活動が挙げられます。
BCPの策定状況
内閣府の「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査(令和3年度)」によると、国内のBCPの策定状況は以下のとおりです。
(編集部作成)
大企業・中堅企業ともに、BCPに取り組む事業所が増えていることがわかります。その一方で、大企業と中堅企業の策定状況に温度差があることも読み取れる結果といえるでしょう。
参照元:内閣府「防災情報のページ」
内閣府「令和3年度 企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」
BCPを策定するメリットと注意点
BCPを策定するメリットには、次の3点が挙げられます。
・緊急時に対応でき、顧客離れを防げる
・企業評価が向上する
・従業員の意識の向上と迅速な行動を促す
BCPを策定しておけば、緊急時の事業継続や早期の復旧につながり、顧客離れを防げると考えられます。その結果、マーケットシェアを維持できる可能性が高まり、取引先企業や市場からも、リスクマネジメントに取り組む姿勢を評価されるでしょう。
さらに、BCPを策定し従業員と共有することで、緊急事態への危機意識の向上、迅速な対応を促す効果も期待できます。
一方で、BCP策定においては次の2点に注意する必要があります。
・想定外の状況ではBCPが機能しない可能性がある
・策定したBCPの内容が自社に合っていないケースがある
BCPを策定しても、想定外の状況では策定したうまく機能しない可能性があることや、BCPの内容が自社の状況に合っておらず、実際には実行不可能なケースもあることを理解しておきましょう。
BCP策定の4ステップ
BCPを策定する際の手順として、次の4ステップをご紹介します。
1. BCPを策定する目的を明確にする
2. 重要業務と想定されるリスクを洗い出す
3. 最優先して対応するリスクを決める
4. 対応策を決める
1. BCPを策定する目的を明確にする
はじめに、企業の理念や方針に立ち返り、BCPを策定する目的を明確にしましょう。例えば従業員の命を守る、非常時でも顧客離れを防ぐ、非常時でも供給責任を果たしクライアントからの信頼を守るといった目的が考えられます。
2. 重要業務と想定されるリスクを洗い出す
策定したBCPの目的を踏まえ、非常時にも継続すべき中核事業を明らかにします。リソースが限られた状況下でも、優先して継続する事業を判断しましょう。
さらに、想定されるリスクの洗い出しをします。企業にとってのリスクを言語化して初めて、具体的な対処法を検討することができるといえます。
3. 最優先して対応するリスクを決める
想定されるリスクすべてに対応するのは、現実的ではありません。非常時はリソースが限られるため、最優先して対応すべきリスクを決め、共有化しておくことが重要です。リスクに優先順位をつける際には、発生頻度と損害の大きさによって判断することをおすすめします。
4. 対応策を決める
BCPではそれぞれ役割分担を決めておくほか、計画を災害の発生→応急処置→平常状態への復旧の3段階に分け、復旧までの流れをイメージしながら対応策を検討します。
設定した対応策が現状の体制で実現可能かを判断し、それが困難と思われる場合は具体的な障壁は何かを見極め、対策を考える必要があるでしょう。
中小企業庁が公開しているチェックリストや記入シートを活用すると、効率的にBCPの策定や見直しを行えます。BCP策定の際にはぜひチェックしましょう。
参照元:中小企業庁「BCP策定運用指針」
BCPにつながる取り組みや具体的な事例
ここからは、BCPを具体的にイメージできるように、BCPにつながる日常的な取り組みや、実際のBCPの策定事例をご紹介します。
日常的に行われる、BCPにつながる取り組み
BCPにつながる日常的な取り組みには、テレワークや時差出勤の導入、コミュニケーションツールやワークフローシステムの活用などがあります。自然災害が発生して通勤が困難になっても、テレワークであれば自宅や避難先で仕事をすることが可能です。また時差出勤を取り入れれば、災害発生時のリスク分散につながるでしょう。
また、コミュニケーションツールの活用によって、非常時でも情報を共有しやすくなります。ワークフローシステムも、業務の可視化やテレワークの促進につながるため、BCPに役立つといえます。
具体的な策定事例
実際に策定されたBCPの事例には、以下のようなものがあります。
・東日本大震災を教訓に、従業員と家族の安否確認ができるシステムの導入および災害時を想定した県外企業との相互応援協定の締結(製造業)
・工場の稼働停止やインターネット回線の断絶を想定したBCPを策定。また、独自にバックアップシステムを構築したり、備品を備えたりといった対策も実施(サービス業)
BCPを策定して非常時のリスクに備えよう
BCPは災害やテロなどの発生時に、事業の継続や早期の復旧を図るための計画のことです。BCPを策定し実行することで、企業の存続につながるのはもちろん、企業評価が上がるといった効果も期待できるでしょう。あらかじめBCPを策定しておき、非常時のリスクに備えることをおすすめします。
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