「リモハラ」とは“リモートワーク中のハラスメント”のこと
リモハラとは「リモートワークハラスメント」の略で、その名のとおり在宅勤務をはじめとしたリモートワーク中に行われる、パワハラやセクハラなどのハラスメントのことです。オンライン上での過剰な干渉や監視、プライベートへの言及などが該当します。
よく知られるパワハラやセクハラが行為に焦点を当てたネーミングであるのに対し、リモハラはハラスメントが起きる状況をあらわした呼称です。
■リモハラに関する厚生労働省による告示
リモハラに限定してはいないものの、関連する告示としては以下の2つが挙げられます。
・令和2年1月15日厚生労働省告示第5号(パワハラ防止の指針)
・令和2年1月15日厚生労働省告示第6号(セクハラ防止の指針)
それぞれの告示には、パワハラに該当する事例や性的な言動の解釈のほか、企業が行うべき措置に関しても言及されています。
参考▶︎厚生労働省|事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して 雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)
参考▶︎厚生労働省|事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して 雇用管理上講ずべき措置等についての指針等の一部を改正する告示(令和2年厚生労働省告示第6号)
リモハラが起きる4つの原因
リモハラは、オンラインを介した就業環境という特殊な状況で発生するハラスメントです。前述のとおり対面のコミュケーションに比べて意思疎通が難しいことがリモハラの原因として考えられるのは主に次の4つです。
1.職場と自宅の線引きが曖昧
2.管理するための過剰な指示や干渉
3.環境の変化によるストレス
4.リモートワークのルールが未整備
順番に確認していきましょう。
1.職場と自宅の線引きが曖昧
リモハラの原因として、職場と自宅の線引きの曖昧さが挙げられます。従来のように出社する場合は、職場と自宅が明確に区別されていました。
しかしリモートワークでは、たとえばカメラをオンにしたオンライン会議ではお互いのプライベートが見えるなど、職場と自宅の線引きが曖昧になりやすい傾向にあります。
またオンライン上のやりとりは、上司や同僚の周囲の目があるオフィスとは異なり、閉鎖的な空間で行われるため、ハラスメントが起こりやすい状況といえるでしょう。
2.管理するための過剰な指示や干渉
リモートワークは、従来の働き方に比べてお互いの状況を把握しにくくなる傾向にあります。そのため、特に上司から部下に対して、業務の進行状況の確認や指示の連絡が増えることが珍しくありません。
ある程度は仕方ないとしても、過剰になればリモハラと捉えられる可能性があるでしょう。
リモートワークはオンラインを介したやりとりが中心であるため、対面に比べて視線や表情などが読み取りにくい傾向がある点が特徴です。それにより、意思の疎通や相手との適切な距離感を掴むのが困難になり、意図せずリモハラとなってしまっているケースも散見されます。
3.環境の変化によるストレス
好意的に受け止められがちな在宅勤務ですが、人によっては慣れない働き方や他人とのコミュニケーションの減少によって、ストレスを抱えることもあります。
また、部下の状況を把握しにくくなったことに対してストレスを抱えてしまう上司もいるでしょう。このようなストレスが引き金となり、リモハラに発展しているケースも考えられます。
4.リモートワークのルールが未整備
リモートワークのルールが未整備であることも、リモハラを招く原因の1つです。たとえばリモートワーク時の服装や、オンライン会議中のカメラやバーチャル背景の設定など、ある程度明確なルールを決めたほうがよいこともあります。
判断基準が統一化されていないことですれ違いが生じ、リモハラを引き起こしている可能性があるためです。
リモハラの具体的な事例3つ
ここからはリモハラの具体的な事例として、以下の3つをご紹介します。
1.過剰な干渉や監視
2.業務に関係のない事項への強要
3.プライベートに関しての言及
1つずつ確認していきましょう。
1.過剰な干渉や監視
主に上司による部下に対しての過剰な干渉や監視は、リモハラに多くみられます。部下の状況を把握しにくい状況が過度な干渉や監視につながりやすいことは、すでにお伝えしてきたとおりです。
なお、リモハラ被害として「業務中は常にカメラをオンにするように指示される」といった内容などが挙げられることもあります。常にカメラをオンにする指示自体が、必ずしもリモハラに該当するわけではありません。業務を円滑に進めるために必要な指示であれば、正当なものとされる可能性が高いです。
ただし業務とは直接関係のない監視は、部下のモチベーションを低下させ、リモハラと捉えられるリスクがあることをおさえておきましょう。
2.業務に関係のない事項への強要
業務に関係のないオンライン飲み会や、1対1のオンライン会議に参加することを強要することも、リモハラに当たる言動です。そのほか、チャットツールで業務と無関係の内容のやり取りを頻繁に強いるといった行為も該当します。
部下は上司の誘いを断りにくいため、これらの強要が繰り返されるとストレスを感じる可能性があります。
3.プライベートに関しての言及
プライベートへの言及も、リモハラの代表的な事例です。具体的には、以下のような言動が該当します。
・オンライン会議で自宅を必要以上に見せるよう強要する
・カメラに写り込んだ同居人に関して詮索する
・相手の化粧や洋服を指摘する
職場と自宅の線引きが曖昧になりやすいため、従来であれば起こらないであろう、踏み込んだ言動に至ってしまうと考えられます。
リモハラの防止策と発生時の対応
リモハラにはどのような言動が該当するのか、またリモハラが起きたときには誰に相談するのかといったことを、社内で共有しておきましょう。
勤怠管理システムや、バーチャルオフィスといったツールの活用も有効です。またリモートワーク時の服装やオンライン会議中のカメラの設定に関するルールの策定も、解決策となるでしょう。
リモハラ被害が発生したら、被害者の心情に寄り添って話を聞いたうえで、加害者と被害者双方にヒアリングを行い事実確認を行う必要があります。事実確認を踏まえて適正な措置を講じるほか、周囲の関係者に研修やeラーニングを受講してもらい、再発防止を行うことも重要です。
リモハラに関する正しい知識を身につけよう
リモートワークは、職場と自宅の線引きが曖昧になりやすい点に注意しましょう。さらに対面に比べて視線や表情などが読み取りにくく、意思疎通や相手と適切に距離感を取ることが難しい場合があるため、何気ない言動がリモハラと捉えられる可能性があります。
リモハラに関する正しい知識を身につけ、相手の立場に立ったコミュニケーションを取るように心がけましょう。
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