「ストレス耐性」という言葉を聞いたことがありますか? 就職活動などの際、面接でストレス耐性をチェックされた経験があるという方もいるかもしれません。
最近はあまり聞かなくなりましたが、昔は、面接官があえてプレッシャーを与えるような質問をする、いわゆる圧迫面接というものもありました。このような面接をする理由は、ストレス耐性をチェックするためといわれています。
では、ストレス耐性とは具体的にどのような力のことなのでしょうか? また、「ストレス耐性が低くて悩んでいる」という方は、鍛える上でのポイントも気になるところかもしれません。
そこでこの記事では、ストレス耐性の概要や6つの要素、ストレスチェック制度などについて解説します。絶え間ない変化が続く現代社会では、ストレスと無縁という方は少ないでしょう。自分の心の健康を守るためにも、ストレス耐性について知っておくと安心です。
ストレス耐性とは?
ストレス耐性とはどのようなものなのかを見ていきましょう。
ストレス耐性とは、ストレスに対する抵抗力のこと。厳密には「ストレス」には、外部的な刺激、物理的な圧力などの意味も含まれています。しかし、会社などでよくいわれている「ストレス耐性」というのは、主に心理的なストレスへの抵抗力を指すことが多いようです。
実は「ストレス耐性」とひと言でいっても、構成する要素はさまざま。ここからは、ストレス耐性を構成する要素についても解説します。ストレス耐性を鍛えるヒントにもなるでしょう。
6つの要素でストレス耐性をチェック
ストレス耐性にはどのような要素があるのでしょうか? 具体的には、以下の6つの要素があるといわれています。
ここからは、その要素をひとつずつ詳しく見ていきましょう。ストレス耐性が高い人の特徴は、これらの要素のバランスが取れている点ともいわれています。自分のストレス耐性が気になるという方も、ぜひチェックしてみてください。
1:感知する力
ここで言う「感知する力」とは、ストレスに気づく感度のこと。ストレスを感じる度合いは、人によって個人差がありますよね。少しのストレスを敏感に感じる人もいれば、やや感度が鈍めという人も。
とはいえ、感度が鈍ければよいわけではないこともポイントです。適度にストレスを感知すれば、大きなトラブルへの発展を防げることもあります。感知する力は、バランスが重要といえるでしょう。
2:回避する力
ストレス耐性を上げるためには、すべてを正面から受け止めず、「回避する力」も重要です。特に「こうあるべき」というような価値観が多い人は、それにそぐわないような場面に遭遇すると、すぐにストレスを感じてしまいがち。何かあるたびに真正面からぶつかっていってしまう人は、回避力を上げた方がよいかもしれません。
ある程度価値観を柔軟にしておくと、何かあっても受け流しやすく、ストレスを回避しやすくなりますよ。
3:処理する力
「処理する力」とは、ストレスを与えている原因に対して、根本的に対処する力のことです。たとえば、連日の長時間労働で精神的に参ってしまっている場合に、会社に相談して働き方を見直す、というようなイメージ。問題そのものを、根本的に解決、改善する能力ともいえるでしょう。
4:切り替える力
ストレスに感じている出来事や原因への、解釈を変える力が「切り替える力」です。カメラでいうところの、フィルターを切り替えるようなイメージですね。
たとえば、初めての仕事を任されたときなど、「わからないことだらけでストレスを感じる」という場面で考えてみましょう。こういったときに「私は仕事ができない」や、「なんで私がこんなことをやらなければいけないの?」と考えると、余計にストレスがたまってしまいます。
反対に、考え方を切り替えて、「新しいスキルを身につけるチャンスだ」などとプラスの意味づけをすることもできます。このように、物事の意味づけを前向きな方向に切り替えられる力は、ストレス耐性が高い人の特徴のひとつともいわれています。
5:経験値
これまでさまざまなストレスに対応してきた「経験値」も、ストレス耐性の重要な構成要素です。たとえば、新卒社員のときに、電話ひとつ出るのにも緊張してしまったという思い出のある方もいらっしゃることでしょう。しかし、どんどん経験を積むに従って、あまりストレスを感じなくなってきたという方も多いのではないでしょうか?
このように、経験値によって同じ出来事でもストレスの感じ方は変わってきます。
6:ストレスの容量
「ストレスの容量」とは、ストレスをどの位まで受け入れられるのかという、器の大きさのこと。中には、些細なトラブルが続いたことで、すぐに心の余裕がなくなってしまう人もいますよね。
このような人は、「ストレスの容量が小さい」といえるでしょう。反対に、多少イヤな出来事があったとしても許容できる器の大きさがある人は、「ストレスの容量が大きい」といえます。
参考:働く人のメンタルヘルスポータルサイト「こころの耳」(厚生労働省)
ストレスチェックとは
ストレス耐性に関連して、2015年12月から施行された企業向けの「ストレスチェック制度」についても見ていきましょう。
ストレスチェックとは、ストレスに関する質問に答えることで、ストレスの度合いなどをチェックすることができる検査のこと。このような検査を職場で定期的にすることで、心の状態に早めに気づき、うつ病などを防ぐという目的で行われている制度です。働いている職場で、すでにこのような検査を受けている方もいらっしゃるかもしれませんね。
ストレスチェックは、常時50人以上の従業員がいる会社に、毎年実施することが義務づけられています。検査は、「質問票」というアンケートのようなものに回答する形式。
ちなみに、ストレスチェックの結果は、検査を受けた本人に直接送られてくる仕組みになっています。本人は、この結果を会社に報告する義務はありません。企業は、本人の同意なしにこの結果を見ることはできないという点も、注意したいポイントです。
参考:厚生労働省ホームページ
最後に
この記事では、ストレス耐性の概要や、6つの要素、ストレスチェックなどについて解説しました。変化やプレッシャーが多い現代社会で働いていると、日々いろいろなストレスを感じることがあるのではないでしょうか? 自分の心と体を守るためにも、ストレス耐性について知っておくと安心ですね。
執筆
塚原社会保険労務士事務所代表 塚原美彩(つかはら・みさ)
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。趣味は日本酒酒蔵巡り。
事務所ホームページ:塚原社会保険労務士事務所
ライター所属:京都メディアライン
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