黎明期とは
黎明期は「れいめいき」と読み、新しい文化・時代・物事が始まる時期のことを指します。「黎」は青黒い、暗いという意味を持つ字で、「明」は明るいという字なので、暗いところから明るいところへ向かう時期、つまり新しいことが始まる時期を表しています。「そうめいき」と読む人もいるようですが、誤りのため気をつけましょう。
黎明期の使い方
ある分野や産業がまだ発展途上で、新しいアイデアや技術が出現し始める初期の段階を「黎明期」と表現します。また、社会や歴史的な出来事においても、新しい時代や変化の始まりを指す場合に使われます。具体的な使い方を見ていきましょう。
インターネットの黎明期
インターネットが普及し始め、その新しい技術や利用方法がまだ初期段階にあった時期を指します。
環境保護の黎明期
環境への意識が高まり、環境保護活動がまだ始まったばかりの時期を指します。
黎明期の類語と意味
黎明期には、類語が多くあります。例文をあげて、微妙な意味の違いも紹介します。
初期
「しょき」と読み、何かが始まる最初の段階や時期を指します。新たな取り組みや動きが始まって間もない状態のことです。
〈例文〉
1:会社を設立した初期には、まだ社員は10人足らずだった
2:開発の初期段階には失敗も多かった
3:新しい言語を学ぶ初期段階では、語彙と文法のしっかりとした基礎を築くことが重要だ
萌芽期
「ほうがき」と読み、新しいアイデアや概念が芽生え、物事の起きる兆しを指します。まだ小さな変化が起きている時期を表現します。
〈例文〉
1;彼はコンピューター開発の萌芽期に研究を主導した
2:彼の作品は日本映画の萌芽期に人気が出た
3:環境運動はまだ萌芽期にあり、一般の関心と支持が増えている
揺籃期
「ようらんき」と読み、物事が発展する初めの時期を指します。まだまだ発展途上であり、これからの可能性を秘めている状態。「揺籃」はゆりかごという意味です。
〈例文〉
1:その時代は資本主義の揺籃期といえよう
2:彼の研究は科学の揺籃期に貢献した
3:その企業の新製品は揺籃期にあり、まもなく市場で勢いを増すことを期待している
草創期
「そうそうき」と読み、何かが始まり、成長し始める時期を指します。まだ大きな変化や進展は見られないけれど、将来の発展を予感させる状態を表現します。
〈例文〉
1:プロ野球の草創期はグラウンド整備が大変だった
2:あの企業の草創期にはこんなに大企業になるとはだれも予想していなかった
3:その団体は小さなコミュニティとして始まり、草創期において着実に成長してきた
これらの言葉は「黎明期」と同じように、何かが始まり、成長し始める初期の段階を表現するために使われます。それぞれの言葉には微妙なニュアンスの違いがありますが、共通して新たな展開や可能性を感じさせる時期を指す言葉として用いられます。
黎明期の対義語
黎明期の対義語、対照的な言葉にはどのようなものがあるのか、見ていきましょう。
薄暮
「はくぼ」と読みます。もうすぐ日が暮れようとする頃を指します。
具体的には、日が沈み始め、夜が訪れる前の暮れの時間帯です。太陽が地平線に近く、周囲が薄暗くなりつつある状態を指します。「黎明」のもとの意味である夜明けを表す語の対義語といえます。薄暮には「期」はつけません。薄暮期というのは誤りなので注意しましょう。
〈例文〉
1:薄暮の迫る球場にチーム全員が集合した
2:海辺で薄暮の風を感じながら散歩するのは、とても気持ちがいい
3:田舎の風景は、薄暮の時間になるとさらに静寂さを増し、心を落ち着かせてくれる
衰退期
「すいたいき」と読み、勢いや活力が衰えて弱る時期を指します。経済や社会の変化により、需要の低下や競争の激化などが原因となり、成長から衰退へと移り変わる時期などを示しています。
〈例文〉
1:その企業は新しい競合他社の出現により、衰退期に入ってしまった
2:音楽ジャンルは時代の変化により、一時的なブームを経て衰退期に入ることもある
3:町の商店街は人口減少やオンラインショッピングの普及により、衰退期にあるようだ
沈滞期
「ちんたいき」と読み、ある事物や経済などが、活気がなく、進歩や発展する動きが見られない状態を指します。
1:政治の舞台は沈滞期にあり、重要な政策の変化や進展が見られない
2:沈滞期に突入した商店街だったが彼のおかげで活気が戻った
3:経済は沈滞期に入り、企業は明らかな低迷を経験しています
成熟期
「せいじゅくき」と読み、ある事物や産業が十分に成長し、安定した状態に達した段階や時期を指します。成熟期は、発展や成長のピークを過ぎ、安定した状態にあることを示します。
1:その産業は成熟期に入り、競争が激化した
2:彼のキャリアは成熟期に達し、経験と知識を活かしたリーダーシップが求められている
3:成熟期のビジネスは、安定した収益を確保する一方で、新たな市場への進出が必要だ
黎明期の英語表現
黎明期の英語表現は、「dawn」や 「dawn of a new era」といった表現が使われます。以下にそれぞれの表現の例文を紹介します。
dawn
dawnには夜明けや日の出といった意味があり、何かが始まろうとする時期を表す黎明期と同じ意味になります。
The industry is in its dawn, with new technologies and ideas emerging.
その産業は黎明期にあり、新しいテクノロジーやアイデアが出てきている
dawn of a new era
new eraは新時代、新紀元という意味があります。新時代の夜明けといった意味で、黎明期と同じ意味で使われます。
1:We are witnessing the dawn of a new era in technology.
私たちは技術の黎明期を目撃している
2:The invention of electric vehicles marks the dawn of a new era in transportation.
電気自動車の発明は、交通の黎明期を迎えることを示している
まとめ
「黎明期」とは、何かが始まる段階や新しい時代の最初の部分を表現する言葉です。新しいアイデアや技術が出現し始め、変化や成長の可能性が感じられる時期を指します。ビジネスシーンでは使われることも多いので、正しい読み方や意味を覚えておきたいですね。
執筆
武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
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