「示唆」の意味とは?
「部長の話は、いつも示唆に富んでいる」や、「母の示唆のおかげで、恥をかかずにすんだ」などというように、ビジネスシーンだけでなく、日常会話でも伝える「示唆」という言葉。直接伝えにくい場合や、角を立てずに伝えたい場合に使う言葉ですが、誤った使い方をされることもしばしばあるようです。
「示唆」とは、「それとなく知らせる」「ほのめかす」という意味。「指し示す」という表現にも使われている「示」と、「そそのかす」という意味を持つ「唆」を組み合わせてできた表現です。「そそのかす」と聞くと、あまりよくない意味をイメージしてしまいますが、「示唆」にはそこまで悪いニュアンスは含まれません。
相手に伝えたいことがあるとき、オブラートに包まずそのまま伝えると、場合によっては相手の気分を害してしまうかもしれません。間接的に相手に何かしらの気づきを与えるため、それとなく知らせるために「示唆」するということがいえるでしょう。
相手に対して「ヒントを与えている」とも言える「示唆」。言いにくいことや伝えづらいことを遠回しに伝えるために使われる表現の一つです。
「示唆」の使い方
「それとなく知らせる」という意味を持つ「示唆」を使った表現は複数あるため、代表的なものについて一つずつ紹介します。
1:「示唆する」
まずは、最も一般的な使い方から紹介します。「示唆する(される)」とは、相手に対して伝えたいことを遠回しに表現することです。特定のことに関して直接言及されていないものの、どこかメッセージ性があるという意味として使われているといえるでしょう。
〈例文〉
・そのようなことを示唆するつもりはなかった
・彼の発言は、これから起こることを示唆しているようだった
2:「示唆に富む」
「示唆に富む」とは、何かを知らせているような暗示めいた情報が豊富であるという意味です。「示唆に富む」は、メッセージ性が豊富と言い換えることもできます。そのため、考えさせられる・勉強になるというニュアンスで使われることが多いです。
〈例文〉
・二人は、示唆に富んだ談話を続けていた
・その講義は大変示唆に富んでおり、楽しく受講することができた
3:「示唆的」
「示唆的」は、何かをほのめかしている様子・暗示している様子を指します。基本的に、悪い意味として使われることは少ないでしょう。しかし、二番目の例文のように、「示唆的」は困惑させる・警戒させるというニュアンスで使われることもあります。
〈例文〉
・あえてその業務を彼女に担当させたのは、示唆的な行為だと思う
・彼の示唆的な発言は、周囲を困惑させたに違いない
4:「示唆を与える」
「示唆を与える」は、伝えたいことに気付いてもらうため、相手にそれとなくヒントを与えることを意味します。こちらは「そそのかす」という意味ではなく、相手にとってプラスのアイデアや手がかりを間接的に気づかせるという意味として使われることが多いです。反対に、相手からよい影響を受ける・感化されるという意味として、「示唆を受ける」と表現することもできます。
〈例文〉
・彼の発言が、グループ全体に示唆を与えた
・その本から示唆を与えられたから、よいアイデアが浮かんだと思う
「示唆」の類義語は?
では、「示唆」と似たような意味を持つ言葉にはどのようなものがあるのでしょうか? ここでは、「示唆」の類義語にあたる言葉について紹介します。
1:暗示
「暗示」とは、「物事を明確には示さず、手がかりを与えてそれとなく知らせること」という意味です。また、手がかりそのものを指すこともあります。
「手がかりを与えて気づかせる」という意味を持つ「暗示」は、「伝えたいことを遠回しに伝える」という意味を持つ「示唆」の類義語にあたるといえます。ただ、「暗示」は自分自身の思い込みというニュアンスでも使うことができるため、主に他者に対して使われる「示唆」とは少し異なるという考え方もできます。
〈例文〉
・私の人生を暗示するような出来事だったと思う
・前向きな自己暗示をかけることで、成功することがあるらしい
2:黙示
「黙示」とは、「暗黙のうちに、意思や考えを示すこと」「隠された心理を示すこと」という意味です。「もくじ」「もくし」と読むことができます。主にキリスト教などで、人間の力では知ることのできないことを、神が特別な力を使って知らせるという意味として使われるそうです。
また、『新約聖書』の最後の一書である『ヨハネの黙示録』でも、そのような意味として「黙示」が使われています。
3:仄めかす
「仄(ほの)めかす」とは、「それとなく言葉や態度で表す」という意味です。直接言っているわけではなくても、何となくそうではないかと思わせるという点で、「示唆」の意味と類似しているといえます。
〈例文〉
・不満を仄めかすような態度をとった
・彼らは、新しい事業に乗り出すことを仄めかしていた
「示唆」の対義語は?
では、「示唆」と対照的な意味を持つ言葉にはどのようなものがあるのでしょうか? ここでは、「示唆」の対義語にあたる言葉について紹介します。
1:表示
「表示」とは、「はっきりと表し示すこと」という意味です。ある情報についてはっきり示すという意味を持つ「表示」。
それとなく知らせるという意味として使われる「示唆」とは、対照的な表現であることが分かります。また、古文の世界では、あることが起こる兆し・兆候として「表示」が使われていたそうです。
〈例文〉
・表示価格の半額だったので、思わず購入してしまった
・検索結果が表示されるまでに、少し時間がかかった
2:明示
「明示」とは、「はっきり示すこと」という意味です。また、類義語として「明記」が挙げられます。しかし、書き伝えることに限定される「明記」に対して、「明示」は表現方法を問わず「はっきり伝える」という意味として使うことができるのです。
〈例文〉
・出典を明示しておく必要がある
・そう考えた理由について明示しなければ、相手には伝わらないと思う
最後に
今回は、「示唆」の意味や使い方、類義語・対義語について紹介しました。「そそのかす」という意味を持つ「唆」が使われている「示唆」。しかし、「示唆」自体にはネガティブな意味はあまり含まれないということが分かりました。誤った使い方をしてしまわないよう、意味をしっかり覚えておきたいですね。
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