「チキる」とは何を示す言葉?
「チキる」とは若者言葉の一種であり、聞き慣れていないとどのような意味なのか想像しづらい言葉といえるかもしれません。まずは、どのような意味や使い方をする言葉なのかを紹介します。
「チキンになる」の略語
「チキンになる」を省略すると「チキる」になります。チキンになるという言葉の意味は、臆病になる・怖気付く・ビクビクしているなどです。
語源は英語の「chicken」で、鶏や鶏肉という意味の他に、弱虫・臆病などの意味があります。日本語で使用される場合も、同様の意味です。
臆病という意味でのチキンから派生した「チキンレース」という言葉もあります。チキンレースは相手の車や障害物に向かい合って、衝突寸前まで車を走らせ、先によけたほうを臆病者とする度胸試しのことです。
チキン‐レース
《〈和〉chicken+race chickenは臆病者の意》
1 相手の車や障害物に向かい合って、衝突寸前まで車を走らせ、先によけたほうを臆病者とするレース。チキンゲーム。チキンラン。
2 相手を屈服させようとして互いに強引な手段をとりあう争い。チキンゲーム。「値下げ競争はチキンレースの様相を呈している」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
チキるの使い方・例文
チキるは、怖気付いている様子や、弱気になっている様子を指し、自分に対しても他人に対しても使える表現です。特に、度胸が必要な物事に挑戦する際に使われることが多いでしょう。
【例文】
・肝心なときにチキる癖を何とかしたい
・留学への不安はあるが、チキるのはやめて行動することにした
・言い訳ばかり言って挑戦しないけれど、本当はチキっているんじゃないの?
励ます目的でも使用できますが、状況によっては馬鹿にしているようなニュアンスにもなるので注意しましょう。臆病な様子を見て「チキってんじゃないよ! 」というように、野次を飛ばすこともあるようです。
「チキる」の類義語を解説
チキるには、似た意味を持つ言葉がさまざまあります。代表的な類義語・言い換え表現を紹介します。
ビビる
「ビビる」は「気後れする」「小さく縮こまる様子」などを指す言葉です。若者言葉のように思われていますが、一説には平安時代からあるとされています。
語源は諸説ありますが「ビクビクする」を省略したとする説や、「ビビ」が空気やものが震えているときの音を表しているとする説などがあります。平安時代のころに、鎧と鎧が触れ合うと「ビンビン」という音がしたことから、武士たちが歩いていると「ビビる音がする」と言っていたともされています。
【例文】
・今月の光熱費を見て、あまりに金額が大きくビビッた
・初めての大舞台にビビッてしまい、声が震えた
ひよる(日和る)
「ひよる」とは、態度をはっきりさせない「日和見(ひよりみ)」を縮めて、動詞のようにした言葉です。「積極的にかかわらず傍観する」という意味がありますが、最近では「ビビっている」と同じようなニュアンスで使われることが少なくありません。
日和見は「有利な立場の方に付く」という意味があります。安全な航海をするために、天候の具合を見ている様子が転じて、このような意味になりました。
元々の言葉は日和(ひより)で、何かをするのに都合がよい日や、船出に適した天気を表す言葉でした。例えば「行楽日和」は行楽に向いている日という意味があります。
【例文】
・本当はカツ丼を大盛にしたかったが、ひよって並盛にした
・こっちが劣勢になったからって、ひよっているわけじゃないよね?
意気地なし
「意気地なし」は「気力がなく役に立たない」「物事に向かっていこうとする気概がない」ことやそのさまを意味します。自分や他人を鼓舞する際や、罵倒する際などに使用する言葉です。
【例文】
・あまりに決断力がない様子を目にし「この意気地なし! 」と叫んだ
・告白したくてもできない、意気地なしの自分を情けなく感じる
いもる
「いもる」は「物おじする」「おどおどとした様子」などを指す言葉です。ゲームなどで、動かずに一定の場所にいてなかなか前に進まない様子を指すこともあります。
【例文】
・ゲームのテクニックがないので、いもることしかできない
・初めての場所に来て、いもっている様子が情けなく見えた
「チキる」のような若者言葉への対処法
プライベートで若者言葉を使うのは問題なくても、社会人が公の場で使用するのは不適切だと受け取られる可能性があります。
部下を指導する立場にある場合、どのように注意をすればよいのか迷うことも少なくないでしょう。若者言葉への対処法を紹介します。
部下が使った場合の注意の仕方
部下が若者言葉を頻繁に使用する場合、顧客や取引先に対しても使ってしまう心配があります。注意のポイントは、感情的にならず冷静に要点を伝えることです。
本人が無意識のうちに癖になってしまっていたり、問題だと気付いていなかったりするケースが少なくありません。注意の仕方を間違えると「若者言葉への理解がないだけ」と、思われてしまう恐れがあります。
使用する場所をわきまえた方が得であると理解してもらい、相手に合わせた伝え方をするように指導しましょう。たとえば、「伝えようとしている内容自体は悪くないけれど、よりその場にふさわしい言葉を選んで、社会人としての品位を下げないようにしてほしい」というように、伝える方法があります。
全面的に否定するのではなく、よい部分を褒めるのを忘れないようにするのがポイントです。
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