「相対的」の意味と読み方
ビジネスシーンでは、「相対的」という言葉を使う機会がありますが、意味を把握している人はそれほど多くないかもしれません。物事の捉え方に関連する言葉ですので、正しい意味や適切な使い方を把握しておきたいですね。
この記事では「相対的」についてまとめました。まずは辞書で意味と読み方をチェックしていきましょう。
辞書で意味を確認
【相対的】
読み方:そうたいてき
他との関係において成り立つさま。また、他との比較の上に成り立つさま。「—な価値」「物事を—に見る」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
何かと比較してその価値が見えるもの(こと)や、比較することではじめて価値があるとわかることを「相対的」と表します。
意味を具体的に説明
「相対的」は、比較対象により価値が変わります。基準が高いものと比べると「劣っている」ことでも、基準より悪いものと比べると「優っている」ことになりますよね。
たとえば、その学校でもっとも速く走れる生徒がいるとしましょう。その生徒は、その学校の中では「相対的に一番速く走れる人」になります。しかし、世界のトップランナー集団の中に入ると、「相対的に一番走るのが遅い人」になるでしょう。
このように「相対的」は、よい意味でも悪い意味でも使われています。比べる対象によって価値が変化するということを把握しておくといいですね。
「相対的」の使い方
ここからは、「相対的」という言葉の使い方を見ていきます。ビジネスシーンだけでなく、ふだんの会話でも使える言葉ですので、特徴や例文をチェックし参考にしてくださいね。
使い方の特徴
上述したように、「相対的」は比較することが前提となります。そのため、「上がる」「下がる」「高い」「低い」「優れている」「劣っている」などの言葉をつけて使うことが多いでしょう。また、「見る」「考える」「評価する」などをつけて使うことも。
なお、比較のない状態で「相対的」を使うことはありません。
例文を紹介
《例文》
・長男の成績は相対的に上がっているが、課題はまだある
・このチームのレベルは相対的に高いので、成績もいいのだろう
・相対的に優れているのは、A案ではなくB案です
・相対的に見ると、価値はあると言えます
・相対的に考えるということを難しく思うかもしれないが、それができないと厳しい
・相対的に評価するのは、意外と難しい
上記以外に「相対的な価値」や、「相対的な評価」といったフレーズもよく使われています。
「相対評価」について知っておこう
他者との比較により、成績などが決まる評価方法を「相対評価」と言います。学校の成績やスポーツの選考などで使われる方法ですが、ビジネスシーンでは人事評価で導入している企業があります。
「相対評価」とは
個人の能力などをある集団内の他者と比較し、相対的な位置を明らかにする評価方法。従来の日本で、よく用いられてきた方法です。相対評価方式は、あらかじめランク別に人数の割合を決めておき、成績順に割り振っていくというもの。グループへの貢献度や、グループ実績などにより順位づけを行います。
相対評価方式には、評価分布のバランスがよく昇給などをコントロールできる、人件費の高騰を抑えることができる、競争意識を強める、全体のバランスを保てるというメリットがあります。
「相対評価」にはデメリットもある
「相対評価」のデメリットとされることの中に、所属集団により評価が変わってしまうことと、個人の成長を評価していると感じにくいことがあります。このデメリットが、個人のモチベーションを下げるという側面も…。そのため、最近では個人の取り組みや成長、成績を評価できる「絶対評価」を導入する企業が増えています。
「相対的」の類語と対義語
「相対的」の類語と対義語を紹介します。それぞれの意味を見ていきましょう。
類語は「比較的」
「比較的」は、他の同種のものや、一般的基準と比べてみた時に判断されるさまや割合を意味する言葉。「ひかくてき」と読みます。「相対的」と似た意味を持つと考えていいでしょう。例文を挙げますので、使い方の参考にしてください。
《例文》
・レストランの値段が比較的に高いのは、地域性もあるだろう
・比較的簡単な問題から取り組み、それを継続するのが成績アップのコツだ
対義語は「絶対的」
「相対的」の対義語となるのが、「絶対的」です。読み方は「ぜったいてき」。他の何物ともくらべようもない状態や存在であることを意味します。
《例文》
・彼女の人気は絶対的であるが、だからこそ注意が必要だ
・彼は絶対的に有利な立場にいるが、油断することはない
「相対的」と関連する言葉
ここからは、「相対的」と関連する言葉を見ていきましょう。重要な意味を表す言葉ですので、把握しておくといいですね。
「相対的貧困率」
読み方は「そうたいてきひんこんりつ」。ある国や地域の大多数よりも、貧しい相対的貧困者の全人口に占める比率のこと。
OECD(経済協力開発機構)では、等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人数の平方根で割って算出)が、全人口の中央値の半分未満の世帯員を「相対的貧困者」としています。「相対的貧困率」は、単純な購買力よりも国内の所得格差に注目する指標であるため、日本など比較的豊かな先進国でも高い割合が示されます。
厚生労働省が公表している「国民生活基礎調査」に、日本の情報が掲載されていますので、興味のある人はチェックしてみてください。
「相対的」を英語で表すと
「相対的」の英語表現についても見ていきましょう。例文と合わせて紹介します。
「relative」「relatively」
「relative」は、「相対的な」や「相対的」を意味します。「relatively」は「相対的に」と訳すことが多いでしょう。
《例文》
If you are focused on relative evaluations, you may lose sight of the essence.
(相対的な評価ばかりに注目してしまうと、本質を見失ってしまう可能性があります)
I think his idea is relatively superior.
(相対的に見て、彼のアイデアが優っていると私は思う)
最後に
「相対的」とは、どのような意味を持つ言葉なのかを紹介しました。他のことと比較をすることで成り立つさまを表す言葉で、「比較的」とよく似ています。ビジネスシーンでもよく登場しますから、正しい意味や適切な使い方を把握しておきたいですね。「絶対的」と混同しやすいので、注意してください。
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