依拠(いきょ)
「依拠(いきょ)」とは、あるものに基づくことや拠り所とすることです。準拠と類似する言葉ですが、拠り所としたもののことを指すことはないため、「〇〇辞書依拠」や「〇〇教科書依拠」というような表記を見ることはあまりありません。依拠の使い方をいくつかご紹介します。
・先例に依拠して、契約書類を作成した。
・就業規則に依拠したルールであるが、現状には即していない。
・この参考書は〇〇出版社の新国語教科書に依拠していますが、独自の設問も加えて、入試対策しやすいように工夫されています。
適合(てきごう)
「適合(てきごう)」とは、ある条件や事情にぴったり当てはまることです。既存のものやルールに適うように作成する準拠とは異なり、作成したら既存のものと合っていたというニュアンスで使われます。
・オフィス環境に適合するようにデザインされた椅子
・多様性に適合した教育を実践したい。
・新しく導入した会計ソフトは、我が社の会計上の課題解決に適合していた。
従う(したがう)
「従う(したがう)」とは、他からの働きに順応することや応じることを意味する言葉です。準拠と同じく、既存のものやルールを拠り所とするときにも使われますが、これから新しく提示される条件や働きなどにも沿うため、より広い範囲で使用できます。
・条件に従って、給与体系が異なる。
・法律が定めるところに従う。
・指示に従って行動した。
なお、「したがう」にはさまざまな漢字があります。一般的には「従う」を使いますが、「随う」や「順う」、「遵う」などを使って表記することもあります。文脈によっても異なりますが、次のように使い分けることが多いようです。
・従う:通常はこの漢字を用いる
・随う:他人などについて行くときに用いる
・順う:相手に付き従う、逆らわないというニュアンスがある
・遵う:筋道を外れないというニュアンスがある
準ずる(じゅんずる)
「準ずる(じゅんずる)」とは、あるものを基準にしてそれにならうこと、あるいは、あるものと同様の資格で扱うことを意味する言葉です。準拠と類似する意味で使いますが、準拠は特定のものやルールをそのまま活用するのに対し、準ずるは特定のものやルールを基準にするだけであって、そのまま活用するのではありません。
・フリーメンバーは入会金不要ですが、待遇は正会員に準じます。
・経験年数に準じてボーナスを受け取れます。
・彼の失敗については、前例に準じてペナルティを与える予定です。
則る(のっとる)
「則る(のっとる)」とは、基準や規範として従うことです。「法る」と表記することもあります。準拠と同じく特定のものやルールに従うことを指すため、言い換え表現として活用できるケースもあります。
・伝統に則った儀式に参加した。細々とした決まりごとが多く、歴史を感じた。
・私情や世間の声などに影響されず、法に則って裁くだけだ。
・すべての項目が法に則っているかチェックするのは難しい。専門家に依頼するほうがよさそうだ。
【目次】
準拠を正しく使おう
「準拠」はあるものを拠り所として従うこと、あるいは拠り所そのもののことを指します。名詞の後に「準拠」とつなげて、名詞のものに従っていることを示すことや、「準拠する」や「準拠させる」と動詞として使うこともあります。
「準拠」は日常生活でも使う言葉ですが、少々硬いイメージがあるかもしれません。ビジネスシーンなどで使うほうが馴染みやすい傾向にあります。また、硬さが気になるときは、状況に合わせて、「〜に従う」や「〜に準ずる」と言い換えると、より理解しやすい表現になるでしょう。
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