絶句とは話や演説の途中で言葉に詰まること
絶句(ぜっく)とは、話や演説の途中で言葉に詰まることです。役者がせりふを忘れたときや、感情が高ぶって言葉が出てこないときなどに使われます。
【絶句】ぜっく
1.話や演説の途中で言葉に詰まること。また、役者が台詞(せりふ)を忘れてつかえること。「感情が高ぶって―する」
2.漢詩の詩体の一。起・承・転・結の4句からなり、1句が5字の五言絶句と7字の七言絶句とがあり、いずれも平仄(ひょうそく)と押韻のきまりがある。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
呆れたときに「絶句する」
言葉に詰まる状況はさまざまです。驚き呆れたときも、すぐに言葉が出て来ず、絶句するかもしれません。
・明け方に子どもが帰ってきた。「昨日は友だちの家に泊まった」と悪びれず話す様子に、呆れて絶句した。
・「昔は悪かった」と得意気に話す彼に、呆れて絶句する。
予想外の出来事に「絶句する」
予想外の出来事に対して、うまく言葉が出て来ず、絶句することがあります。
・家に帰ったらリビングが荒らされていた。何が起こったのかわからず、思わず絶句した。
・電話に出ると、母が病院に運ばれたとの言葉が……。「今朝顔を見たときは元気だったのに……」という思いがこみ上げ、思わず絶句した。
何を言うべきかわからず「絶句する」
何を返答すれば良いのかわからずに絶句することがあります。また、相手が落ち込んでいるときなどに、どう励まして良いかわからず、言葉を失うこともあるかもしれません。
・大賞間違いなしといわれていたのに、入賞すらしなかったらしい。彼女にかける言葉が見つからず、絶句してしまった。
・他人の功績をまるで自分のおかげのように話している彼に対し、何を言えば良いのかと絶句した。
感動のあまり「絶句する」
感動したときも、言葉を失うことがあります。
・5時間もかけて登った山頂からの景色は素晴らしく、感動のあまり絶句した。
・豪華な食事やプレゼント、リムジンによる送迎など、心尽くしの誕生日に絶句した。
絶句と類似する意味の言葉を例文でご紹介
絶句のように言葉を失ってしまうことは、次の単語でも表現できます。それぞれの意味や使い方、絶句との違いについて見ていきましょう。
無言(むごん)
無言(むごん)とは物を言わないことです。
・彼女は無言でうなずいた。
・無言電話がかかってきた。
絶句は言おうとした言葉が出て来ないといったニュアンスで使われることがありますが、無言は言おうとする意思があるかどうかに関係なく、とにかく話していないという現状に注目して使う傾向にあります。
緘口(かんこう)
緘口(かんこう)とは、口を閉じて何も言わないことです。そのままでも使いますが、「緘口令(かんこうれい)」として使うことも多いです。緘口令とは、ある事柄に関する発言を禁じることで、「箝口令」とも表記することがあります。
・ある取引について、社内で緘口令が敷かれた。
・関係者の間では緘口令が敷かれているようだが、内情を漏らす人もいて、情報が交錯している。
不言(ふげん)
不言(ふげん)とは、口に出して言わないことです。無言と同義で使われることがあります。不言とそのまま使うよりは、不言実行と使われることが多いようです。なお、不言実行とは、文句や理屈を言わずに、黙ってなすべきことを実行することを意味します。
・彼は不言実行をモットーとしているようだ。
・彼女は不言実行の人だ。多くは語らないが、確実に結果を出している。
漢詩の「絶句」とは?
絶句は、中国の詩人・杜甫の詩のタイトルでもありますが、漢詩の用語としても使われます。なお、漢詩とは、中国の詩という意味です。漢時代の詩や中国の詩を真似て日本で作った詩を指すこともあります。
杜甫の「絶句」
杜甫は、絶句と題する詩をいくつも残しました。その中でも、とりわけ知られているのが、次の詩です。
江碧鳥愈白(錦江の水は緑色に澄みわたり、川に浮かぶ鳥はますます白い)
山青花欲然(山には緑が映え、花は燃えるように赤い)
今春看又過(今年の春もあっという間に過ぎようとしている)
何日是帰年(いつになったら故郷に帰れるのだろうか)
故郷を離れた杜甫が、故郷を懐かしく思いつつも帰れない苦しさを表現した詩といわれています。鮮やかな色を使って表現した前半部分と対比させることで、後半部分がより一層印象を強めています。
詩体の「絶句」
絶句は、漢詩の詩体の一つでもあります。起句・承句・転句・結句の4つから成り、それぞれの句が5文字の「五言絶句(ごごんぜっく)」と、7文字の「七言絶句(しちごんぜっく)」があります。先ほど紹介した杜甫の絶句は、1句がそれぞれ5文字から成るため五言絶句です。
五言絶句は2句目と4句目の末語、七言絶句は通常1句目と2句目、4句目の末語で押韻するルールがあります。杜甫の絶句では「然」と「年」がいずれも「ネン」という音で押韻しています。
一方、律詩(りっし)は、8句から成る詩体です。1句が5文字の「五言律詩(ごごんりっし)」と、7文字の「七言律詩(しちごんりっし)」があります。五言律詩は2句目・4句目・6句目・8句目、七言律詩は1句目・2句目・4句目・6句目・8句目の末語が押韻するというルールがあります。
ごごん‐ぜっく【五言絶句】
中国の唐代に完成した近体詩の一。五言の句が4句からなる漢詩。五絶。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
しちごん‐ぜっく【七言絶句】
漢詩で、七言の句が4句からなる近体詩。七絶。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
ごごん‐りっし【五言律詩】
中国の唐代に完成した近体詩の一。五言の句が8句からなる漢詩。五律。五言律。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
しちごん‐りっし【七言律詩】
漢詩で、七言の句が8句からなる近体詩。七言律。七律。
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
正しいシチュエーションで「絶句」を使おう
絶句は、中国の詩体や杜甫の詩を指すこともありますが、日常会話では、驚きや呆れなどにより言葉を失うときに使われます。思わず言葉に詰まってしまったときには、「絶句した」や「絶句するほど驚いた」のように表現できるでしょう。
同じく言葉を失ったときには、「無言」や「不言」「緘口」などの単語を使っても表現できます。それぞれの言葉のニュアンスを正しく理解することで、シチュエーションに合った表現をするように心がけてください。
たとえば、無言は、驚いて言葉が出ないというよりは、意識的に話さないといったニュアンスで使われることもあります。言外の意味を正しく表現するためにも、言葉の意味をしっかり確認しておきましょう。
メイン・アイキャッチ画像:(c)Adobe Stock
▼あわせて読みたい