尊重の意味とは
お互いを尊重し合った良好な人間関係を築くには、まず「尊重」という言葉の意味を正しく理解していることが重要です。人間関係を円滑に進めたい人に知ってほしい、尊重の意味について解説します。
尊いものとして大事に扱うこと
尊重とは、相手や物事を尊い、価値あるものとして重んじることです。
そん‐ちょう【尊重】
[名](スル)価値あるもの、尊いものとして大切に扱うこと。「人権を—する」
小学館『デジタル大辞泉』より引用
たとえば、子どもが幼稚園で描いてきた絵を褒めてリビングに飾るのは、子どもの努力や創造性を尊重する行為です。また、自分と異なる意見や生き方を持つ人に対して、その存在を認めることも人権尊重のひとつといえます。
尊重の心は、相手の価値観や個性を認め、敬意を払うことから生まれます。これにより相互理解が深まり、よりよい人間関係を築くことができるようになるのです。
日本国憲法が規定する「個人の尊重」とは
日本国憲法第13条に規定される「個人の尊重」は、民主主義社会の根幹を成す重要な概念です。「国・社会よりも、国民ひとりひとりの人格や個性が尊重されるべき」という理念を示しています。
条文に規定される個人の尊重が意味するのは、個人の自由や権利を最大限に尊重し、国家権力による不当な介入から守ることです。個人の尊重という理念があるからこそ、「表現の自由」や「職業選択の自由」といった具体的な権利が保障されていると考えられます。
つまり、国や政治に対して自由に意見できるのも、職業を自由に選べるのも、個人の尊重の理念があるからだといえるのです。
また、個人の尊重は単に国家と個人の関係だけでなく、日常生活にも深く関わっています。職場・学校・家庭など、あらゆる場面で互いの個性や意見を尊重し合うことが求められます。
「自己尊重」と「他者尊重」
「尊重」は誰を対象とするかによって、「自己尊重」と「他者尊重」に分けられます。円滑な人間関係を築いていくには、両者をバランスよく育むことが重要です。自己尊重と他者尊重について解説します。
自分を受け入れる「自己尊重」
自己尊重とは、自分自身の価値を認め、ひとりの人間として大切にすることです。自己尊重は、自分の長所や短所を含めて〝ありのままの自分〟を受け入れる姿勢から始まります。
たとえば、自分自身を省みて「私にはすてきなところがたくさんある」と肯定的に自分を捉えることができれば、それは自己尊重の表れだといえます。
自己尊重は自信や自己肯定感を高め、精神的な健康にもよい影響を与える要素です。これができていれば、他人の意見に振り回されず、自分の考えや感情を適切に表現できるようになるでしょう。
相手を受け入れる「他者尊重」
他者尊重とは、相手の個性や価値観を認め、大切にする姿勢です。自分とは異なる意見や考えを持つ人に対しても敬意を払い、受け入れる態度を示します。
同僚の意見に耳を傾け、たとえ自分と異なる考えであったとしても、それを尊重して建設的な議論を行うことが日常における他者尊重の一例です。
相手の立場で考える共感力のレベルアップにもつながるため、多くの人をまとめるリーダー役に求められる要素です。
互いを尊重するアサーティブ・コミュニケーション
自己尊重と他者尊重を実現させた状態で行われるのが「アサーティブ・コミュニケーション」です。円滑に他者と意思疎通をするには欠かせない手法といえるでしょう。
実際に取り入れられるよう、アサーティブ・コミュニケーションの基本を解説します。
アサーティブ・コミュニケーションとは
アサーティブ・コミュニケーションとは、自分と相手の双方を尊重しながら、率直に自己表現する方法です。つまり、相手の気持ちを踏みにじることなく、自分の意見や感情をストレートに伝える技術といったところでしょうか。
たとえば友人から無理な依頼をされたとき、「申し訳ないけれど今回は断らせてもらうね。でも、代わりにこんな方法はどうかな?」と提案するのがアサーティブな対応です。
相手の立場を理解しつつ自分の意見も明確に伝えることで、互いの尊厳を守りながらの建設的な対話が可能になります。
アサーティブ・コミュニケーションのメリット
アサーティブ・コミュニケーションには、多くのメリットがあります。
まずは自己肯定感が高まる点です。アサーティブ・コミュニケーションが実践されている環境では、すべての意見が分け隔てなく尊重されます。「自分の意見が大切にされている」という経験は、自己肯定感の向上に直結します。
つぎに、ストレスの軽減です。自分の気持ちを表現することでモヤモヤした感情が解消され、心の健康を保てるのです。それによって言いたいことが言えない状況に追いやられるシーンが減るため、ストレスもたまりにくくなります。
また、子育てにおいてもアサーティブ・コミュニケーションは有効です。子どもの気持ちを尊重しながら親の考えを伝えていくことで、お互いを理解し合える関係性の構築が期待できます。
アサーティブ・コミュニケーションの実践方法
アサーティブ・コミュニケーションの実践には、具体的な方法があります。
まず、「私メッセージ(アイメッセージ)」を使うことが大切です。「あなた(You)は~」ではなく、「私(I)は~」を主語にして自分の気持ちを伝えます。
たとえば、相手に「あなたが片づけをしてくれないから、私は大変なの」ではなく「私が片づけを始めたら、あなたも一緒に片づけてくれると助かるな」と伝えてみましょう。
このとき、相手の話をしっかり聞くことも重要です。決して言葉を遮らず、うなずきや相づちで傾聴の姿勢を示します。言葉を使わないコミュニケーション手段も駆使して、じっくりと相手の意見に耳を傾けることを大切にしてください。
また、相手の立場で考えることも重視すべきポイント。「もし自分が相手の立場だったら」と想像してみれば、相手にかけるべき言葉が見つかりやすくなるからです。
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