【目次】
太陽くん(10歳)
小学校1年からスケボーを始めた太陽くんは10歳になった今、大会で優勝する選手へと成長しました。今回はそんな太陽くんへのインタビュー。場所は、吉祥寺にあるパパが所属する会社の事務所です。太陽くん、部屋にあるビーズクッションにダイブしたり、ホワイトボードに落書きを始めたり。なんだかソワソワ……。
好きなテレビ番組って何?
まほ:(ホワイトボードに描かれた絵を見て)何? それウルトラマン?
太陽:うん。ウルトラマンらしきもの。
まほ:好きなの?
太陽:いや、あんまり……。
まほ:でも、観てたんでしょ?
太陽:いや、全然観てない。
まほ:えっそうなんだ。じゃあ何が好きだったの?
太陽:えーっと……。
母:ホラ、あれ観てたじゃない。あの、戦隊モノで……。
父:海賊のやつだよな、あれ、なんて言ったっけ……。
太陽:……(無言)。
母:ほら、あの海賊レンジャーじゃなくて……。
父:あれは好きでよく真似してたよな。
太陽:……(無言)。
結局この場で答えは出ず。どうやら「海賊戦隊ゴーカイジャー」のことだったようです。
太陽くんのお父さんは「あれ」が思い出せないまま、お茶を運んでくれた後に仕事で退席してしまいました。
母:「忍者 赤影」も好きだったじゃん。
太陽:あーそうだったね。
まほ:今は好きなテレビ番組ある?
太陽:「ドラえもん」。
まほ:あ、今の子も観るんだあ。
太陽:うん、意外とみんな観てる。
まほ:意外と(笑)。太陽くんが今、5年生……。ドラえもんって、何年生くらいまで観るんだろう?
太陽:知ってる子は、6年生で観てる。
まほ:ナルホド。たしかにわたしたちの時代も中学入学するまでは「ドラえもん」はアリだった気がするな。……今って、観たいテレビを録画するとき……なんて言うんだろ? ビデオに録って、じゃないだろうし……。ハードディスクに録るの?
太陽:トルネでとる。
まほ:とるね?
太陽:torne。プレステの機能。
まほ:トルネ、か……。知らない。まったくわからない。怖いくらい馴染みがない……。それで何を録るの?
太陽:ボルト。
まほ:ボルト? 陸上の?
太陽:ナルトの次に始まったアニメ。
まほ:あ~わたしには何もわからない~(泣)。
忘れられない、小4の春休みの思い出。
まほ:映画も観たりする?
太陽:時々……。
まほ:DVD借りたり?
太陽:借りるとこ、潰れちゃった。
まほ:TSUTAYAがなくなったんだ。
太陽:いや、GEOが潰れて、自転車屋になった。
まほ:自転車屋! 最近、店が潰れるとそこに自転車屋か、まいばすけっとができる……とわたしは思っている。
太陽:?
まほ:ゴメン、ゴメン。……で、観たい映画はある?
太陽:最近は『未来のミライ』。
母:もう公開終わっちゃったのよね。
太陽:ママがつれてってくれるって言ってたのに……(怒)!
まほ:そっか、まだ友だちと2人では行かないか。
太陽:あ、でも。
まほ:ん?
太陽:前に小池と2人で……。
まほ:小池? なになに?
太陽:ラーメン屋行った。
まほ:おー! 友だちと?
太陽:(うなずく)
まほ:いいねえ。いつ?
太陽:小4の春休み。
まほ:大切な思い出なんだねー。小池とラーメン……いいねえ。
母:保育園からの同級生なんです。
まほ:どうして2人で行くことになったの?
太陽:えっとー、春休みだから一緒にあそぼってなってー、そしたらなんかー、お腹すいたけどコンビニのご飯はもう飽きちゃったからー。
まほ:うんうん。
太陽:ママに「ラーメン食べていい?」って電話してー、「ぶどうか」ってラーメン屋教えてもらってー、それで行った。
まほ:ママに教えてもらったの?
太陽:いや、小池に。
まほ:あ、小池に。
太陽:小池のイチオシの店。
まほ:イチオシ~(笑)。緊張した?
太陽:いや、あんまり。
まほ:ホント~?
母:電話ですごいお願いされたんですよ。「もう4年生だから! 一緒に行っていいでしょ!」って。
まほ:行きたいって思ってたんだ。
太陽:うん。
母:「自分のお小遣いで行くからー!」って。
まほ:え~わたしだったら感動して、ちょっと泣いちゃうかも。
太陽:(照笑)
まほ:でもさ、最近のラーメンは結構値段するでしょ。
太陽:うん、けっこうしちゃった。750円。
母:その後、ママたちも連れていかれたもんね。「太陽のイチオシ」だって。
まほ:(笑)。味は何系?
太陽:こってり。「ぶどうか」って言うから、最初てっきりブドウ使ってるのかな、って思ったら字が違った。
まほ:そりゃそうだよね(笑)
母:ママとパパ、ここ(事務所)の窓から見てたよ。太陽たちがラーメン屋入るところ。
まほ:近所だったんですね。その光景も見たら泣けるな~。
太陽:(照笑)
まほ:美味しかった?
太陽:うん。でも、女の人にはあんまりオススメしない。
まほ:なんで?
太陽:店がザ・男感がある。
まほ:「武道家」だもんね~。
太陽:女の人もいたけど、ごっつい感じだった。
まほ:(笑)。で、どうだった? 2人でラーメンを食べた感想は。
太陽:うーん……成長を感じた。
まほ:ははは! そうだよね~感じるよね~。食券?
太陽:うん、食券。
まほ:食券でラーメン……大人だね~。
太陽:ねえねえ。
まほ:ん?
太陽:これってなんのインタビュー?
まほ:よく聞かれる(笑)。
スケボー仲間は友達 or ライバル?
太陽:ねえねえ、これ(じゃがビー)食べてもいい?
母:これから焼き肉でしょ?
まほ:焼き肉行くんだ。友だちと?
太陽:違う。
母:え!? 友だちでしょ?
太陽:違う。敵。
まほ:敵!?
母:幼馴染でスケボー仲間の女の子なんですけど……。
まほ:ライバルなんだ。
太陽:違う。敵。
母:あー、じいちゃん取られるからだ。
まほ:じいちゃんの取り合いしてるの?
太陽:もう俺がじいちゃん取ったもん。
母:お互いのじいちゃん取り合ってるんですよ(笑)。
まほ:じいちゃん、何歳?
太陽:70歳。
まほ:70歳を取り合い(笑)。女の子でも、スケボーやる子いるんだね。
母:今、多いんですよ。
まほ:太陽くんはどうしてスケボー始めたの?
太陽:幼稚園のときに、市民プール行った帰りに隣の会場で大会をやってるのを見て、それでかっこいいと思って……。
母:それからしばらく間が空いたんですけど、小学校に上がって始めたんです。
まほ:乗り始めた頃のことって覚えてる?
太陽:うーん……痛いと思ったときがあるのは覚えてる。
まほ:自分でイケるぞって思ったときのこととかは?
太陽:(嬉しそうに)覚えてる。
まほ:あ、俺うまいじゃんって?
太陽:うん。それで、小3くらいからガッツリ、毎日やるようになって。
まほ:スケボーって、いろいろ種目も違ったりするんでしょ?
母:説明できる?
太陽:ストリート、パーク、バーチ、ボールとかあって……、オリンピックの種目になってるのはストリートとパーク。
まほ:太陽くんは?
太陽:バーチ、ボール、パークをやってる。
まほ:オリンピックは視野にいれてたり……する?
太陽:(ニヤリと笑いながらうなずく)
まほ:今、大会で優勝したりしてるんだよね。スポンサーとかはついてるの?
太陽:ひとつ、この間ついた。
まほ:おお……すごい。スケボー、怖くない?
太陽:高いところとか、新しい技をやるときは怖いけど……慣れると怖くない。
まほ:うまくいくときと、いかないときって自分でわかる?
太陽:うん。だいたい滑ってみると調子がわかる。あと、ビビってるときはうまくいかない。
まほ:そういうとき、うまくいくように自分でコントロールできるの?
太陽:うまい人はできる。
まほ:太陽くんは?
太陽:最近ちょっとだけ……でもまだうまくできない。
まほ:もともと運動神経は?
母:これがすごく悪くて……。
太陽:いいよ! 器用じゃないだけだよ!
母:えー、縄跳び1回も跳べなかったじゃん。
太陽:1回は跳べるわ! 20回跳べたわ!
まほ:でも、苦手ではあるんだ。
太陽:……うん。手を動かしながら跳ぶ……のが難しい。
まほ:たしかに、それは運動神経が悪いというより不器用なのかもしれないね。
憧れはブラジル出身、23歳のプロスケーター。
まほ:スケボーって音楽やファッションも関係あるよね。
太陽:昔のスケーターはテンション高い音楽とか聴いてたけど、今のスケーターはクール系な音楽聴いてる人が多い。
まほ:太陽くんは何聴くの?
太陽:ファレルの「HAPPY」とか。
まほ:聴きながら滑ったりするの?
太陽:うーん、イヤホンつけたりしてやってる高校生もいるけど。イヤホンつけた途端に失敗したりしてる。
まほ:冷静に見てるねえ。あんまりカッコつけたり、っていうのは興味ないんだ。
太陽:うん。
まほ:どんな大人に憧れる?
太陽:ペドロ・バロス。
まほ:滑りに憧れる?
太陽:うん。かっこいいし、優しい。
まほ:その優しいっていうのは……。
太陽:人に接する態度が、よい。
まほ:よい、か。
母:今、微妙な年頃なんですよね。周りを見ていると、男の子たちって6年生くらいから一気に大人になるような感じで。
まほ:スケーターの世界は大人になるのも早そうですよね。
まほ:ごめん、そろそろ焼き肉行く時間だね。
太陽:うん。
まほ:我慢できずにじゃがビー食べちゃったけど……。何頼むの?
太陽:牛肉。
まほ:(笑)。部位の名前、知らない?
太陽:カルビしかわかんない。
まほ:タン塩とか……。
太陽:タン塩って、丸いやつ?
まほ:そう、丸いやつ。
太陽:それより……もっとお高い部分が好き。
まほ:お高い部分かあ。
母:プレミアって名前につくとすぐ頼みたがるよね。
まほ:ご飯は頼む?
太陽:焼き肉のときは頼む。いつもは白いご飯全部食べれないけど、牛肉のせたら食べられる。
まほ:あ、いつもは残しちゃうんだ。
太陽:うん。ご飯だけじゃ食べられない。
まほ:わかるよ。子どもの頃、わたしも白米って味ないなーって思ってた。
太陽:えっ、大人になると、ご飯に味があるって思うの?
まほ:思うよ。
太陽:えー。
まほ:本当だよ。
太陽:えー?
まほ:幸せを感じるようになるよ。
太陽:えーただの……コメ。
まほ:それがいいんだよ!
太陽:へぇ……。
インタビュー前、スケーターの男の子と聞いて大人びた子を想像していましたが、ドラえもんと牛肉が好きな太陽くんにちょっとホッとしました。
一方でちゃんと自己分析をする面もあり、スケーターとしてのプロの目線も感じました。
2年後のオリンピックまで、太陽くんの名前を覚えておきましょう!
つづく
『しまおまほのおしえてコドモNOW!』書籍発売中!
2017年の連載スタートから5年間、子どもの〝今〟を探った大人気ルポエッセイが、ついに単行本になりました!連載を読んでいた人も、必見の内容となっています。
『しまおまほのおしえてコドモNOW!』
著:しまおまほ 発行:小学館
定価:1760円 (税込) 体裁:四六判 176頁
発売日:2021年10月29日
文・絵:しまおまほ 編集:小川知子 デザイン:根本真路
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プロフィール
しまおまほ
漫画家・エッセイスト。1978年生まれ、多摩美術大学美術学部二部芸術学科卒業。1997年、高校生の時に描いた漫画『女子高生ゴリコ』でデビュー。雑誌や文芸誌でエッセイや小説を発表するほか、ラジオのパーソナリティとしても活躍。2015年に第一子を出産。著書に『まほちゃんの家』『マイ・リトル・世田谷』『ガールフレンド』『スーベニア』『家族って』などがある。写真は本書にちなみ、6歳当時のまほちゃん。