「かわいいね」って頭ポンポンされると、クラっとくる
お話を伺ったのは…
奥田紀子さん(仮名・34歳)。大阪府吹田市出身・東京都内の国立大学卒業後、小学校の先生になるも転職。現在は、大手食品メーカーでマーケティング職に就いている(年収600万円)。高校の同級生だった夫(製薬会社勤務・年収1000万円)と結婚6年。川崎市内の分譲マンションに住む。子どもは4歳女子。身長153cm、小柄でチャーミングな顔立ち
紀子さんは小柄で華奢で愛らしい。そのため、パワハラの餌食になってきたという。
「最初に勤務した小学校が地獄でした。指導教員が男性で〝俺が熱意をもって教えてやる〟というタイプ。非効率に物事を進めることで〝丁寧に対応している〟と悦に入る性格で、何事も合理的に進めていきたい私に、あらゆるところにダメ出しをされた。テストの採点のマルに心がこもってないと言われて、こいつはバカかと。さらに〝俺がお前を守ってやる〟なんて見当違いなことを言われて、1年で辞めました」
学校の先生の世界はセクハラだらけだった。
「保護者から〝可愛い女の先生〟ということで、ママたちからはマウントをとられ、パパたちからはセクハラされた。運動会で肩を抱き寄せて写真を撮られたり、どさくさに紛れて胸や尻を触られた。教師がブラックな仕事というのは、自らブラックにしているんですよね」
その後、現在の会社の第二新卒枠で入社した。
「最高でしたね。目標に向かって無駄なく進む。とはいえ、派閥があるのに私がそれなりに会社員生活を謳歌できているのは、役員と不倫関係にあったからです」
入社半年で、当時40歳だった直属の上司と、男女の関係になる。
「残業の後、飲みに行くかと誘われて、私が飲みすぎてよろけたときに、かわいいね、って頭ポンポンされてホテルへ。自分でもバカだなと思ったけど、そうされるとクラっとくる。それと同時に、この上司は仕事ができた。体でつながっておけば、いい思いができるという打算もあった」
会社の後ろ盾を作るために不倫をしている
世の中では不倫に対する風当たりは強い。しかし、紀子さんのように、“後ろ盾作り”で不倫の関係を構築する人は少なくない。しかしその関係は、どちらかが結婚したり、別の恋人ができたり、お互いが飽きたりして関係が解消してしまうことが多い。
「私は今でも続いているんですよ。途中間が空いたことはありますが、今も年に4回くらいは彼と関係を持っています。それは結婚しても、子供を産んでも変わらない」
紀子さんは自分が望むような仕事をしており、自己実現を続けている。仕事が楽しく、実績を積み上げている人の魅力にあふれている。
「それは私の努力もありますが、“過去の遺産”のおかげですよ。私は彼以外にも、何人か関係を持っているんです。男の人は“ヤッた女”に義理堅い人が多い。個人的に相談をしたりすると、私が働きやすいように整えてくれることもあるんです。でもそれは、私が真摯に仕事をしているから楽をしたいとか、サボりたいという気持ちでは彼らも助けてくれませんから」
夫は高校時代のストーカー
それにつけても、妻が別の男性と関係を持っていて、夫は気付かないのだろうか。
「気付かないでしょう。私にベタボレですからね。というのも、夫は高校時代から私のファンで、家の前で私のことを待ち伏せしていたこととかがあったんです。大学進学時も、私は関西が嫌いで東京の大学を選んだのですが、それを知った夫は志望校を変え、東京に追いかけてきた。結婚するのも私が根負けしたというか、彼ほど一途な人と結婚したら自分が楽できると思ったから」
夫は長身でメガネをかけているカルチャー男子だ。コーヒーの焙煎とサウナが好きだという。
「サウナハットとかかぶっちゃうタイプですよ。育児をするのも好きみたいで、いろいろしてくれています」
優しくて自分に夢中な夫、可愛い娘、やりがいがある仕事、社会的地位がある不倫相手がおり、自分の美貌にも満足している…紀子さんの人生に非の打ちどころはない。そのことを伝えると、それがそうでもないという。
「もしかすると、離婚するかもしれないんです。この前、夫が以前使っていた通勤用のリュックを借りようと引っ張り出してきたら、リュックの横のペットボトルを入れるポケットに小さな紙が入っていた。それは、ラブホテルにチェックインしたときに、あの機械から出てくる部屋番号の紙だったんですよね」
紀子さんと夫は、5年以上レスだという。夫は自ら志願して、出産に立ち会った。しかし、予想以上の壮絶さから、紀子さんに対して性的な欲望がなくなってしまったのだという。
「夫はほとんど経験がなく、AVなどで情報を得ているから、正直ヘタなんですよ。だから、レスは私にとって好都合だった。私に欲望が生まれたら、私の体のことをよく知る上司とすればいい。どうせ夫は私にベタボレだと安心していたら、まさか浮気されているとは」
紀子さんは白黒はっきりつける性格だ。紙を見せながら夫に「どういうこと?」と詰め寄る。夫は「リモートワークのプランが安かったから使った」と言い張る。紀子さんは浮気だと思い込み、夫に当たる。そして夫も「信じてくれないのは苦しい。出ていく」と別居の準備を始めたという。
「パパっ子の娘のメンタルは不安定になり、紀子さんが娘を叱責することが増えた。あるとき夫からLINEが来て、“しばらくお互い離れよう。娘の面倒は俺が見る。安心して”と連絡があったんです」
夫は家事全般ができる。数カ月の娘との2人暮らしも苦にはならない。
「私も娘の世話から解放されてラッキーくらいに思っていた。彼とも会えますしね。先日、夫が“今日、保育園の迎えに行けないからお願いします”とLINEがあり、2週間ぶりに娘と会ったんです。すると娘は“あれ? ママなんだ。サーちゃんじゃないんだ”と言ったんです」
娘に「サーちゃんって誰?」と聞いたら、娘は口をつぐんだ。そこで、夫が別の女性と暮らしていることを確信する。
「詰め寄ったら白状しました。相手は28歳の部下だって。夫婦がお互いに不倫をしていたって話ですよ。“サーちゃん”はお嬢様で、子持ちの夫との結婚を親に反対されている。2人の関係はもう2年になるんだって。滑稽ですよね。私のことをストーキングしていて、土下座してプロポーズしたくせに、別の女を好きになるって」
紀子さんはビジネスパーソンだ。感情に任せて結論を焦ると、自分が損することを知っている。
「だから、しばらく静観ですよね。変に証拠を押さえられないように、上司とは社内でそういうことをしています(笑)。夫に対する不貞行為の証拠は押さえてあり、何かあったら身ぐるみはがします。夫の実家には、“捨てられた私”を匂わせました」
紀子さんくらいの強さ…図太さ、のようなものがないと男女格差が激しい日本社会では不利益を被るのかもしれない。それに愛情は永遠ではない。自ら育てていく姿勢は、夫が見せるべきなのか、妻が見せるべきなのか、それは夫婦間でしかわからないのだ。
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Writer&Editor
沢木 文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。お金、恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。