「窮鼠猫を噛む」の意味は弱いものが反撃すること
【窮鼠猫を噛む:きゅうそねこをかむ】
《「塩鉄論」刑法から》追いつめられた鼠が猫にかみつくように、弱い者も追いつめられると強い者に反撃することがある。
「窮鼠猫を噛む」とは、弱い者も追いつめられると、普段なら歯向かうことのない強い相手に対して死にものぐるいで反撃することがあるというたとえです。読み方は「きゅうそねこをかむ」です。有名なことわざの一つであり、耳馴染みのある人も多いかもしれません。
「窮鼠」とは追いつめられ、逃げ場を失ったねずみのことを指します。ねずみが猫に追いつめられれば、絶体絶命の状況です。猫とねずみは体格差が大きいため、普段であればねずみは猫に対して抵抗などせず、逃げるのみでしょう。ですが命がかかったピンチともなれば、小さなねずみも猫に反撃するのです。
「窮鼠猫を噛む」ということわざには、大きく3つの教訓があります。1つ目は、弱い者でも諦めずに強い者に反撃するべきだという内容です。2つ目は、逆襲される可能性があるため、どんなに弱い相手でも追いつめるのは得策でない、そして3つ目は相手が弱くても油断してはならないという教えです。
「窮鼠猫を噛む」の類語には下記のと言葉があります。言い換え表現などに使えるため、確認しておきましょう。
〔類語〕逆らう、盾突く、反抗、抵抗、歯向かう、手向かう、抗する、立ち向かう、蟷螂の斧
由来は中国の「塩鉄論」
「窮鼠猫を噛む」の由来は、中国の前漢時代の書物「遠鉄論」の一節にあります。「遠鉄論」は、当時財政的に窮地にたたされていた前漢が、現状を打破するために作った議論のための書物といわれています。
「遠鉄論」には「死すれば再びは生きず、窮鼠も狸を噛む」という文章があり、これが「窮鼠猫を噛む」の語源とされています。訳すと「死んだらもう再び生きることはできないため、追いつめられたねずみも狸を噛んで攻撃する」となります。政治をおこなうものが民衆を追いつめてはならないという教えを比喩的に伝えているとされています。
ねずみが噛むのは猫ではなく狸となっている点が異なります。しかし当時の中国では狸は猫の意味で使われており、意味としては同じです。
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【例文付き】窮鼠猫を噛むの使い方
既にお伝えしたとおり、「窮鼠猫を噛む」は「弱い者でも絶体絶命のピンチでは強い相手に反撃することがある」という意味のことわざです。強い者と弱い者というように、両者に明確な力の差がある場合に使いましょう。
また「弱い者でも逆襲すべき」「弱い者を追いつめすぎない方がよい」「相手が弱くても油断は禁物」といった意味を込めて使うことが多い言葉です。
例文
・絶体絶命の状況だったが、窮鼠猫を噛むの精神で逆転を試みた
・弱い者いじめをしていると窮鼠猫を噛むじゃないけれど、いつか反撃されるよ
・理不尽な命令ばかりくだす上司に反旗を翻した部下は、まさに窮鼠猫を噛むだ
・窮鼠猫を噛むというが、あのように理不尽なことばかり押し付けていたら、いずれ相手から思わぬ痛手を受ける可能性がある
「窮鼠猫を噛む」の関連語
「窮鼠猫を噛む」には同じような意味の類語2つと四字熟語があります。言い換えの表現として活用しましょう。
類語1.「火事場の馬鹿力」
類語2.「窮寇は追うことなかれ」
四字熟語「禽困覆車」
いずれも追いつめられた者が反撃したり、想像以上の力を発揮してピンチを脱したりするさまをあらわします。
ここからは、それぞれの意味をご紹介します。