「私淑」の意味とは?
「○○を私淑する」というように使われる「私淑」という言葉。尊敬している相手から学ぶことを指しますが、間違った使い方をしているケースも少なくありません。そこで今回は、「私淑」の意味や由来、使い方、類語などを解説します。
意味
「私淑(ししゅく)」の意味を辞書で見ると、以下の通りです。
直接に教えは受けないが、ひそかにその人を師と考えて尊敬し、模範として学ぶこと。(<小学館デジタル大辞泉>より)
個人的に尊敬している相手から学ぶことを「私淑」といいます。あくまで直接会わず、尊敬している人物の著作や作品から間接的に学ぶのが特徴です。「私淑」する相手は、専門家や教師など肩書きのある人とは限りません。自分が教わりたいと思う相手が対象となります。直接会っていて、師匠と弟子の関係になっている場合には使用できないため注意しましょう。
由来
「私淑」は、中国の儒学者 孟子(もうし)の言葉に由来するといわれています。孟子は、儒教の祖とも呼ばれる孔子から学問を学びたいと思っていました。しかし、そのとき孔子はすでに故人であったために、直接教えを乞うことができなかったのです。
孟子はその時の心境を「子は私(ひそ)かにこれを人よりうけて淑(よし)とするなり」と記しました。このことから、直接会えない相手から学ぶことを「私淑」と呼ぶようになったとされています。
使い方を例文でチェック!
続いて「私淑」の正しい使い方を見ていきましょう。
ピアニストを志す兄は、幼い頃からショパンに私淑している
「私淑」は、尊敬している音楽家や文学者に対して使われることが多いでしょう。歴史上の人物の場合、すでに故人となっていることもあるので、著作や作品を通して思想や考え方を学びます。
経営者として私淑しているドラッガーの著作を何冊も持っている
ビジネスの場面でも、たびたび用いられます。ビジネスマンの中には、ドラッガー氏や松下幸之助氏などをビジネスの師と仰ぐ方も多いはず。彼らの著作から経営哲学やビジネススキルを学び、尊敬しているのであれば「私淑」しているといえるでしょう。
私は私淑している〇〇先生に、いつか会ってみたいと思っている
「私淑」している相手は故人とは限りません。尊敬している人が遠方にいる場合や立場が上すぎてお目にかかれない場合もあるでしょう。実際に会うことは難しくとも、心の中で会いたいと願っている状態を表した一文です。
類語や言い換え表現とは?
「私淑」以外にも、尊敬する人物から学ぶことを意味する熟語がいくつかあります。ここでは代表的な類語を3つ紹介しましょう。
師事
「師事(しじ)」の意味は、以下の通りです。
師として尊敬し、教えを受けること。(<小学館デジタル大辞泉>より)
「師事」には、「教えを受けて、仕えること」という意味が含まれているため、師匠から直接教えてもらう場合に使用します。例えば、師匠や先生の家でアシスタントをしたり、尊敬する人のセミナーに参加することが当てはまります。直接面識があり、師匠と弟子の関係がしっかりと出来上がっている点が「私淑」との違いです。
《例文》
・私の兄は著名な陶芸家に師事した
・憧れのメイクアップアーティストに師事したいと思っている