「窮鼠猫を噛む」の類語
まずは「窮鼠猫を噛む」の類語を見ていきましょう
火事場の馬鹿力
「火事場の馬鹿力」は「かじばのばかぢから」と読み、追いつめられた者は普段からは想像できないほどの力を無意識に発揮することのたとえです。
火事のような切迫した状況では、無意識に大きな力を出して重い金庫や家具などを運び出せることから、いざというときに想像以上の力を発揮できるさまをあらわします。
【火事場の馬鹿力:かじばのばかちから】
《火事のときに、自分にはあると思えない大きな力を出して重い物を持ち出したりすることから》切迫した状況に置かれると、普段には想像できないような力を無意識に出すことのたとえ。
「火事場の馬鹿力」は文字通りの意味であり、状況を想像しやすい言葉といえるでしょう。使い方については、下記の例文を参考にしてみてください。
例文
・駅伝で転倒してしまいトップ集団から引き離された選手が、最後は火事場の馬鹿力で追い上げ、上位入賞を果たした
・納期がせまっていてどうなることかと思ったが、火事場の馬鹿力でなんとか仕上げた
窮寇(きゅうこう)は追うことなかれ
「窮寇」は「きゅうこう」と読み、追いつめられた敵を指します。必要以上に敵を追いつめてはいけない、という教えをあらわすことわざです。「窮鼠猫を噛む」のことわざにも、同様に「敵を追いつめるのは得策ではない」という教訓があるため、言い換え表現として使用できます。
中国の孫子の言葉に「敵を包囲しても必ず逃げ道をつくっておき、窮地に追い込まれた敵の軍を攻撃し続けてはいけない」というものがあり、そこから転じて使われるようになったとされています。窮地に追い込まれた敵をさらに攻撃すると、思わぬ反撃をくらう可能性があることを忘れないようにしましょう。
【四字熟語】禽困覆車(きんこんふくしゃ)
「きんこんふくしゃ」と読み、力が弱い者でも窮地に立たされると予想外の力を発揮するという意味の四字熟語です。
「禽困」は追いつめられた小鳥のこと、「覆車」は車をひっくり返すことを意味します。「窮鼠猫を噛む」の「鼠」が小鳥に置き換わっていますが、意味は同じです。あまり知られていない四字熟語であるため、日常的な会話には「窮鼠猫を噛む」の方が適しているかもしれません。
「窮鼠猫を噛む」の意味を知り、正しく使いこなそう
「窮鼠猫を噛む」は、弱い者でも追いつめられれば反撃することがあるという意味のことわざです。弱い者に対しては「諦めずに反撃するべきだ」とし、強い者に対しては「相手を追いつめてはいけない」「相手が弱くても油断は禁物」と、それぞれにむけた教訓が込められています。
ビジネスシーンをはじめ、人間関係においては皆が同じ立場にある状況は珍しく、多かれ少なかれ力関係があるものです。たとえ自分が強い立場にあっても、油断して相手を追いつめるのは避けましょう。「窮鼠猫を噛む」のように、思わぬ反撃に見舞われる可能性がありますよ。
写真・イラスト/(C)Shutterstock.com
(引用すべて、小学館『デジタル大辞泉』より)
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