「飯匙倩」は何と読む? 由来は?
■読み⽅と由来
「飯匙倩」は「ハブ」と読みます。漢字は3文字なのに、読みは2文字なので、「ハブ」と読むとは想像すらできなかったという方も多いのではないでしょうか。この「飯匙倩」とは、クサリヘビ科のヘビのこと。全長1.2〜2.3mほどで、沖縄列島や奄美大島などでよく見られる毒ヘビです。
なぜ「飯匙倩」という漢字があてられたのか、疑問に思いますよね。「飯匙」とは、「いいがい」「しゃくし」「しゃもじ」と読み、ご飯を盛るために使う「しゃもじ」のことをさします。「飯匙倩」の頭はスプーンのような形をしており、これが「しゃもじ」に似ているから、この漢字があてられたのだそうです。
「飯匙倩」はどんな生き物?
「飯匙倩」と聞くと、毒を持っている危険な生き物というイメージがありますよね。ここでは、「飯匙倩」はどんな生き物なのか、その特徴を詳しく紹介しましょう。
1:強烈な毒を持っている
「飯匙倩」といえば、毒ヘビというイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。「飯匙倩」は、鋭い牙の先に毒腺を持っており、相手にかみ付いたときに、この毒腺から毒を放ちます。なお、この毒腺には、数回の攻撃に使える毒を溜めているため、2回かまれると2回分の毒が注入されることになるのです。
「飯匙倩」にかまれると、数分で腫れが生じ、焼けるような強い痛みを感じます。現在では、血清の普及などにより、「飯匙倩」にかまれたことで死亡に至ることは少なくなったようです。
2:頭は三角形、背中は黄色・白地に黒の網目模様
毒ヘビの特徴である三角形の頭の形。「飯匙倩」も例にもれず、上から見ると頭が三角の形をしています。これは、毒を溜めている毒腺があるため、この部分が膨らんでいるのだそうです。そのほかの身体的な特徴としては、背中の模様。ほとんどの「飯匙倩」の背中は、黄色もしくは白地に、黒い網目模様をしています。
3:嗅覚は鋭いが、聴覚はほとんどない
「飯匙倩」は嗅覚に優れているのも特徴。口の中には嗅覚器官である「ヤコブソン器官」というものがあり、舌をペロペロと出し、地表などにつけることで、臭いを感じとっています。また、視覚も優れており、動くものに対してとても敏感です。しかし、聴覚はほとんどないため、たとえ人間が大声を出したとしても、その声を気にせず、静止することはありません。
4:気性が荒く攻撃的
多くのヘビは臆病ですが、「飯匙倩」は、攻撃的な性格です。人間が不用意に近寄ったり、危害を加えなければ、「飯匙倩」も攻撃してくることはありませんが、「飯匙倩」の間合いに入ってしまうと、その牙をこちらにむけて攻撃をしてきます。
ただし、1.5m離れていれば、「飯匙倩」の攻撃が届かないといわれていますので、万一遭遇した場合には、その距離を確保するようにしましょう。
沖縄のハブ酒の特徴は?
沖縄の有名なお酒・ハブ酒。「飯匙倩」が丸々1匹瓶の中に入っているようすは、インパクトがありますよね。このハブ酒は、泡盛やブランデーを注いだ瓶の中に「飯匙倩」を入れてつくります。熟成させることで、「飯匙倩」のエキスがしみ出て、独特な味わいに仕上がるのだそうです。アルコール度数は25~35度のものが多く、なかには40度のものもあるのだとか。
なお、ハブ酒に毒は入っていないのか心配に思いますよね。「飯匙倩」は、長時間アルコールにつけておくことで、無毒化するそうですよ。また、正規販売されているハブ酒であれば、毒の処理がなされているため、ハブ酒を飲んでも毒の心配はありません。
「飯匙倩」のような難読漢字の生き物5選
「飯匙倩」のように、呼び名は知っていても、漢字にすると読めなくなる生き物は多数存在します。ここでは、難読漢字の生き物を5つ紹介しましょう。
1:猟虎
「猟虎」の読み方はわかりましたか? 「猟虎」は「ラッコ」のことです。水族館などで、お腹を天井に向け、水にプカプカ浮いているようすは、なんとも可愛らしいですよね。なお、「猟虎」以外にも、「海獺」「海猟」「獺虎」という漢字表記もあります。
2:翻車魚
「翻車魚」は「ほんしゃうお」と読んでしまいそうになりますが、正しくは「マンボウ」です。「翻車魚」とはもともとは中国が由来の漢字だそう。この「翻車」とは、水車や、ひっくり返った車輪を意味する言葉のようです。「マンボウ」の体が丸い形をしていることや、横向きになって海面でプカプカ浮く行動をすることが、この漢字の由来になっているのかもしれませんね。
3:長尾驢
「長尾驢」は、その漢字の通り、長いしっぽを持つ動物。「長尾驢」は、「カンガルー」のことです。「驢」とは「ロバ」を意味する漢字。これに、“長”い“尾”という漢字があてられたのだそうですよ。
4:大熊猫
「大熊猫」は「おおくまねこ」ではなく、「パンダ」です。ちなみに、「大」を「小」に変えて、「小熊猫」とすると、「レッサーパンダ」になります。もともと、「パンダ」よりも「レッサーパンダ」のほうが早くに発見され、その際に「レッサーパンダ」の顔が熊、体が猫に似ているから、「熊猫」という漢字表記ができたのだとか。
その後、「パンダ」が発見されると、2つを区別するために、「パンダ」を「大熊猫」、「レッサーパンダ」を「小熊猫」と書くようになったそうです。
5:栗鼠
「栗鼠」は「くりねずみ」と読んでしまいそうになりますが、「リス」と読みます。この漢字が表す通り、「リス」の見た目が「鼠(ネズミ)」に似ていること、栗などの木の実を食べることが、漢字の由来だそうです。
最後に
「飯匙倩」は「ハブ」の漢字だとは知らないという方がほとんどだったのではないでしょうか? 一見すると難しい漢字ではありますが、その由来を知ると、なぜこの漢字があてられたのか納得でしたね。「飯匙倩」以外にも、「猟虎」「翻車魚」「長尾驢」など、難読漢字の生き物を紹介しましたので、豆知識として覚えてみてくださいね。