出産手当金の概要
これから出産となると、お金のことが気になるところ。特に働いている方の給与はどうなるのか、不安に思う人もいるでしょう。
会社に勤める女性が産前産後休暇をとると、原則給与の支払いはされなくなります。出産手当金は、出産する女性や家族が安心して暮らせるよう、生活費の一部を保障するために導入された制度です。
出産手当金は、女性が加入している勤務先の健康保険組合(協会けんぽや共済組合などを含む)に申請します。
出産育児一時金とはちがう?
出産の際に申請できるお金には、出産手当金の他に、「出産育児一時金」があります。申請先は出産手当金と同じく健康保険組合ですが、支給目的は異なります。
出産育児一時金の支給は、出産費用の負担を軽減すること。一時金ですので、胎児1人に対して定められたお金が1回限りで支給されます。
なお、出産した女性が家族に扶養されている場合は、女性を扶養している家族が加入している健康保険組合から「家族出産育児一時金」が支給されます。
出産手当金をもらえる人とは
次の条件を満たしていれば、出産手当金の支給対象になります。
会社員として勤務しており、勤務先の健康保険に加入する被保険者であること
勤務先の健康保険(協会けんぽや共済組合を含む)に加入していて、病気やケガなどをしたときに必要な給付を受けることができる状態であること。パートやアルバイトも、1日または1週間の労働時間・1ヵ月の所定労働日数が通常の労働者(正社員)の4分の3以上あれば加入の義務があり、出産手当金の対象。
出産のために休業していて、給与の支給がない
出産のために産前産後休業をしていて、給与の支給がない状態であること。ただし、産休中に給与の支給はされたが、給与日額が出産手当金の日額よりも少ない場合に限り、出産手当金と給与の差額分を支給。
妊娠4か月(85日)以降の出産だった
健康保険で定める「出産」とは、妊娠4ヵ月(85日)以上の出産、流産・死産・人工妊娠中絶などを指すため、85日未満で流産などの理由により休業した場合は、給付の対象外となります。
なお、公務員は出産手当金の仕組みが異なる部分があるため、今回は会社員を前提として解説していきます。
出産手当金を申請する
ここからは出産手当金の申請について解説します。
出産手当金の対象となる期間について
出産手当金の対象となる期間は、出産日(出産予定日よりも後に出産した場合は、出産予定日)以前42日前から、出産日の翌日以降56日までの範囲で、休業のため給与支払いがなかった期間を対象として支給されます。
出産手当金の申請手順は
出産手当金の申請には、「出産手当金支給申請書」の提出が必要になります。申請書は、会社の該当部署からもらえますので、産休に入る前に確認しておきましょう。
出産手当金の申請手順は以下の通りです。
1)「出産手当金支給申請書」の本人記入欄、必要事項(1枚目)を記入
2)医師もしくは助産師に必要事項(2枚目)を記入してもらう
3)勤務先の該当部署に「出産手当金支給申請書」を提出
4)事業主が必要事項を記入し、健康保険組合に提出
5)指定した口座に出産手当金が振り込まれる
なお、「出産手当金支給申請書」は、加入している健康保険組合の公式ホームページからダウンロードできます。医師もしくは助産師に記入を依頼する場合は、出産で入院している間にお願いしておきましょう。文書料が必要になるケースもありますので、その点も事前確認しておくと安心です。
指定口座への入金は、書類に不備がなければ申請から1~2か月程度で実施されます。申請後すぐに振込みされるわけではありませんので、意識しておきましょう。
出産手当金の計算方法
出産手当金はどのように計算するのか、全国健康保険協会(協会けんぽ)を例にとり、見ていきます。
出産手当金は、過去12か月の給与が基準
出産手当金は以下の計算式により算出します。
<出産手当日額計算式>
支給開始日以前12か月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3
この場合の支給開始日とは、最初に出産手当金が支給された日のことをいいます。もし、支給開始日以前の期間が12か月ない場合は、下記のどちらか低い金額を使用して計算します。
【1】支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
【2】標準報酬月額の平均額
・支給開始日が平成31年3月31日までの人は28万円
・支給開始日が平成31年4月1日以降の人は30万円
出産手当金の計算例を紹介
たとえば、支給開始日以前12か月の標準報酬月額平均が25万円だったAさんの場合、出産手当金はいくらになるのかを見てみましょう。前提条件として、Aさんは、出産前の42日間と、出産後の56日間産休を取得し、その間の給与はなかったと仮定します。
・まずAさんの1日あたりの支給額を計算(小数点以下切り捨て)
25万円÷30日×2/3=1日あたりの支給額は5,555円
・1日あたりの支給額に産休の日数を掛けて総額を出す
5,555円×(42日間+56日間)=54万4,390円
Aさんが受け取る出産手当金は、54万4,390円です。
出産手当金、こんな場合はどうする?
出産手当金を申請する際、次のようなケースはどうするのかを見てみましょう。
出産予定日より遅れて出産した場合は?
出産予定日より遅れて出産した場合、その期間は支給の対象になります。計算式は以下の通りです。
支給期間:出産予定日前42日+出産予定日から遅れた出産日までの日数+産後56日
なお、出産日は産前期間としてカウントしますので、間違えないようにしましょう。
双子や三つ子などの多胎妊娠の場合は
双子や三つ子などの多胎妊娠の場合は、出産予定日以前の日数を42日ではなく、98日で計算します。産後の期間に変更はありません。
会社を退職する場合の、出産手当金について
退職後も引き続き出産手当金の支給を受けたい場合は、以下の条件を満たすことが必要になります。
<資格喪失後の継続給付>
・被保険者の資格を喪失した日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間(健康保険任意継続の被保険者期間を除く)があること。
・資格喪失時に出産手当金を受けているか、または受ける条件を満たしていること。
なお、退職日に出勤したときは、継続給付を受ける条件を満たさないために資格喪失後(退職日の翌日)以降の出産手当金は支給されません。
出典:全国健康保険協会 出産手当金について | よくあるご質問
最後に
出産手当金は、出産のために会社を休業する女性や家族の生活を支えるための制度です。勤務先の健康保険組合から支給され、申請しないと受け取ることができません。出産手当金の受け取りを希望する場合は、産休に入るまでに該当部署に申し出ておき、申請の準備をしておくようにしましょう。
益田瑛己子
ライター・キャリアコンサルタント・ファイナンシャルプランナー。金融機関の営業職として長年勤務し、現在はライター(ブック・Web)と就職支援をメインに活動中。3人の子供が自立し、仕事と趣味を謳歌している。
ライター所属:京都メディアライン
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