夫の地元に移住…それが不幸のはじまりだった
44歳の香織さん（仮名）は、コロナ禍に東京23区から夫の地元である地方の郊外に移住。夫婦ともにリモートで働ける業種であることも、移住を決める後押しとなったそうです。
「慣れない土地での生活は大変なことも多いのですが、それよりも都内に住んでいたときの2倍ほどの広さの家に住めたことや、少し歩くと森林のようなスポットもあることで田舎暮らしを実感できて、最初は本当に嬉しかったですね。私はずっと田舎で暮らすことが憧れだったので、やっと夢が叶った〜！ってはしゃいでいました」
ふたりの子どもも早くに転校先に慣れ、いい友達にも恵まれたとのこと。しかしそんな香織さんの幸せは移住2年目に入ってすぐに、もろくも崩れてしまいます。
「夫の浮気がわかり、そこからはもう地獄のような日々に早変わりですよ。移住先は夫の地元なので、夫は移住してすぐに昔の仲間たちとの親交をせっせと深めていましたが、一方で移住先に友人のいない私はいつも家でポツンとしていたんです。夫の旧友たちとの集まりも、コロナ禍だったこともあって、私は留守番でしたので…。
そして、そんな生活が1年ほど続いたあるとき、私がなにげなく夫のスマホを見て、浮気が判明したんです」
すぐに夫を問い詰めると、なんと浮気相手は夫の中学生時代の元カノだと発覚。しかも驚くことに浮気相手はすでに義実家にも入り浸っていて、香織さんから夫を略奪しようと計画していたのだとか…。
意地になっても自分が苦しいだけ。悩んだ末に離婚を選択
「もともとが同郷の元カノですからね、夫の浮気相手は、義実家とも面識があったんですよ。義実家はまさか夫が中学時代の元カノと不倫をしているとは思っていなかったようですが、息子が地元に帰ってきたのが嬉しくて、その流れで元カノが義実家に遊びにくることも認めていたみたいです。
浮気が発覚後に夫と何度も話し合いをして、私はもう東京に帰りたいという提案をしたのですが、地元で楽しく過ごしている夫は、東京にはもう行きたくないと。しかも浮気相手が私から夫を略奪しようと計画していたことに対して『あの子がそこまで俺に本気だなんて…』とまで言ったんです。その言葉を聞いて、私はなんだか呆れてしまうやら悲しいやら。そんな話し合いを何度も経た結果、これからもそんな夫と、見知らぬ人しかいない土地で生活をしていくのは無理だという結論に達して、私は離婚しました」
夫の浮気発覚当初は「絶対に離婚するもんか。中学時代の元カノなんかに家庭を壊されたくない！」と意地になっていたという香織さん。しかし時間の経過とともに冷静になるにつれて、意地を張って無理をして移住先に暮らす時間のほうがもったいない、と考えるようになったそうです。
「夫が東京に戻らない以上は、別居するか離婚するか、私が我慢して夫の地元で暮らすかしか選択肢がないわけですよね。その3つをじっくり考えたときに、私は離婚を選択しました。慣れない土地で生活を始めたばかりの妻をほったらかしにして、でも自分は地元暮らしでテンションが上がって、妻のケアもしないで元カノと不倫を始めたわけですよね。そんな夫とこの先一緒にいても、きっと100％許すことはできないだろうと思ったからです」
こうして移住するときにも思い切った決断をした香織さんは、わずか2年間の移住生活にピリオドを打ちました。
「夫を見ていると、東京で暮らしていたときの夫と地元に戻ってからの夫は、どこか別人のように感じましたね。もしかしたら東京であのまま暮らしていたら、私たちは離婚をしていなかったんじゃないかなとも思うんです。それに夫の浮気についても、夫の地元ではなく東京に住んでいるときに夫の浮気が発覚したなら、私の判断もまた違ったものになったかもしれないなって思います。
いずれにしても“たられば”ですけどね。安易に移住を決めて、そこで予想もしていなかった夫の浮気がわかり、私は本当に心身ともに疲れました。今はまだ前向きに再婚をという気分にもなれませんが、もう少ししたらまた都会暮らしを満喫できるよう、今のうちにエネルギーをチャージしようと思います」
環境の変化を通じて、それまでとは夫婦の関係性が変わることもあるでしょう。香織さんのように、慣れない土地で夫の裏切りが発覚すれば、許せない気持ちも強まって当然です。近年、都会を離れて田舎暮らしを始めるカップルも増えていますが、環境が変わることで予想もしなかったアクシデントに見舞われるリスクもゼロではないことを、改めて考えさせられるエピソードでした。
取材・文／並木まき
※個人が特定されないよう、エピソードには一部の脚色を加えています。
