「躑躅」の意味や読み方は?
「躑躅」は「つつじ」と読み、半常緑性・落葉性のツツジ科ツツジ属の花の総称のことを意味します。「てきちょく」と読んで、地団駄を踏む・ためらうという意味として使われることもありますが、同じ漢字に全く異なる二つの意味が含まれているのはなぜかご存じでしょうか?
まず、「躑(てき)」という漢字には、たたずむ・足踏みするという意味が、「躅(ちょく)」という漢字には、あしずりする・あがくという意味が含まれています。漢字だけを見ると、ますますつつじとの関係性が分からなくなってしまいそうですが、実は「てきちょく」の意味が、「つつじ」の漢字の由来となっているのです。
つつじには元々、「羊躑躅」という漢字が当てられていました。羊がつつじを食べて、足踏みをしながら死んでしまったからだそうです。一部のつつじは有毒であり、それを食べた羊の苦しむ様子がまるで“てきちょく”しているようであったため、「躑躅」という漢字が使われるようになったと考えられています。
温帯に分布し、春から初夏にかけて鮮やかな色をした花を咲かせる躑躅。花が筒状になっていることから、つつじと呼ばれるようになったといわれています。
「躑躅」の歴史
子どもの頃に、躑躅の花の蜜を吸ったことがあるという方も多いのではないでしょうか? 躑躅は花木として公園や庭園にて植栽されるほか、鉢植えや生け花にも利用されることが多い植物です。
「躑躅」は古来より観賞用の花として栽培されており、奈良時代に編纂された『万葉集』にも、天皇家の庭園に躑躅が植えられていたことが分かる和歌が記載されています。
江戸時代には、躑躅の品種は爆発的に増加し、「サツキ」と呼ばれるツツジ科ツツジ属の品種が、観賞用の花として流行しました。その後、明治時代末期に再び流行し、現在に至るとされています。また、「西洋ツツジ」と呼ばれる「アザレア」が、19世紀以降ヨーロッパにて改良され、日本にも複数の品種が伝来することとなりました。
「躑躅」の品種と花言葉
鮮やかな花を咲かせる躑躅には、どのような品種があるのでしょうか? ここでは、躑躅の品種や花言葉について紹介します。
品種
園芸品種として知られている「躑躅」には、野生種のほかに、交雑によって作られた多数の品種があります。「クルメツツジ」や「サツキ」、「ヒラドツツジ」などは、日本で作出された品種として有名です。「クルメツツジ」は福岡県久留米市付近で、「ヒラドツツジ」は長崎県平戸市にて品種改良されたことが、名前の由来となっています。
まず、半常緑性・落葉性のツツジ科ツツジ属の総称である「躑躅」は、葉や花が大きめで、4月頃に咲き始めるのが特徴的。「サツキ」は、葉が柔らかい品種が多いツツジ科の中で、固くて小さめの葉をつけるのが特徴です。
先述の通り、日本原産である「サツキ」は、古来より庭園などで植栽され、躑躅の花が咲き終わる5月頃に咲き始めたことが、名前の由来になったそうです。
また、「西洋ツツジ」と呼ばれる「アザレア」は、19世紀に台湾などからヨーロッパに伝来した躑躅が、園芸品種として改良されたもので、後に日本に輸入されることとなりました。日本原産の品種と比べて、咲き方や花の色などの種類が豊富で、比較的華やかなものが多いです。
そのほか、日本原産で毒性のある朱色の花を咲かせる「レンゲツツジ」や、同じく毒性があり、枝先にピンクや白、黄色などの派手で大きな花を咲かせる常緑性の「シャクナゲ」などがあります。「レンゲツツジ」は特に、庭木として栽培されることが多いため、安易に触ったりしないように注意が必要です。
花言葉
春から初夏にかけて、色鮮やかな花を咲かせる「躑躅」。温帯に広く分布し、ネパールでは国花にもなっています。そんな躑躅全体の花言葉は、「節度」「慎み」です。
また、赤い躑躅の花言葉は「恋の喜び」、白い躑躅の花言葉は「初恋」であるといわれることも。華やかな赤い花を一斉に咲かせる様子や、可憐な白い花を咲かせる様子が、花言葉の由来になっていると考えられます。
「躑躅」の育て方
色鮮やかな花を咲かせる「躑躅」。鑑賞用の花として、日本では古くから愛されてきました。近年では品種改良が進み、耐寒性や耐暑性の強い躑躅が多くなっています。そのため、園芸をしたことがないという方でも、安心して育てることができるでしょう。
まず、躑躅の植え付けや植え替えは、開花期を除く3月から6月上旬、または9月下旬から10月にかけて行ないましょう。庭植えの場合は、根鉢の倍以上の大きさの穴を掘り、腐葉土などを混ぜて、深植えにならないように注意して植え付けます。鉢植えの場合は、2年に1回を目安に植え替えを行うのがおすすめです。
躑躅は日当たりのよい場所を好むため、鉢植えは年中屋外で管理しましょう。日差しの強い夏は半日陰に、乾燥しやすい冬は寒風の当たらない場所へ移動させるのがおすすめです。
また、躑躅は根が細く、地表近くに根を張るため、土壌の乾燥に弱いです。そのため、夏の高温期にはできるだけ土壌を乾かさないように注意して、朝または夕方に水やりを行います。そのほかの季節は、土壌が乾いてきたら水やりを行うようにしましょう。土壌は、水はけと水もちのよい酸性土壌が適しています。
なお、剪定(せんてい)は開花してからなるべく早めに行いましょう。翌年の花芽が夏にできるため、それ以降の剪定は、せっかくできた花芽を切ってしまうことになります。枝先から3センチ程度を軽く刈り込んで、枯れた枝や重なった枝を取り除きましょう。そうすることで、風通しが良くなります。
最後に
今回は、「躑躅」の読み方や品種、育て方について紹介しました。古来より、日本人に最も親しまれている植物の一つである「躑躅」。想像以上に古い歴史を持っていたことが分かりました。品種が豊富で華やかな躑躅の花は、庭先を明るくしてくれそうです。
また、躑躅は6月7日の誕生花でもあります。6月生まれの方は、これを機に躑躅を育ててみてはいかかでしょうか。
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