「一期一会」は“二度と訪れない瞬間を大切にする”こと
一期一会とは、一生に一度きりの機会や出会いを意味し、「二度と訪れないこの瞬間を大切にしよう」という教訓を伝える言葉です。旅先や仕事での出会いなどでよく使われるといえるでしょう。ここでは、一期一会の読み方や由来などを解説します。
■「一期一会」の読み方
一期一会は「いちごいちえ」と読みます。「期」は期日や一学期など「き」と読む機会が多く、「会」は「かい」と読むことが多いため、「いっきいっかい」と読んでしまう可能性がありますが、誤りです。いちごいちえという四文字熟語を知らないと、正しく読むことは困難といえるでしょう。この機会に正しく覚えておきましょう。
■毎日顔を合わせる相手にも使う
一期一会は比較的多くの人が、「その日その場所ではじめて出会った人には、もう二度と会えないかもしれない。だからこの出会いを大切にしよう」という意味であると捉えている言葉です。
しかし実際は、はじめて出会う人に対してのみ使う言葉ではありません。たとえ毎日顔を合わせる相手であっても、その日その時に一緒に過ごす機会は一生に一度きりです。二度と同じ日や機会は戻ってはきません。
一期一会という言葉は、単に人との出会いについて言及しているのではなく、今この瞬間を大切にしようという、より深いメッセージを伝える言葉であることをおさえておきましょう。
■由来は千利休の言葉
一期一会の由来は茶道家の千利休(せんのりきゅう)が言ったとされる、「一期に一度の会と思って亭主を畏敬すべし」という言葉で、弟子の山上宗二の著書「山上宗二記」に記されています。
千利休の言葉は、わかりやすくいうと「たとえ毎回同じ相手と行う茶会であっても、今日行われる茶会は一生に一度だけである。そのため心を尽くして臨まなければならない」といった意味です。やがて茶会だけでなく、人生のあらゆる場面で使われるようになりました。
「一期一会」の使い方と例文
ここからは一期一会の使い方と注意点のほか、実際に一期一会を用いた例文をご紹介します。
■“座右の銘”として使われる
座右の銘として使われることが多いのが、この一期一会という言葉です。一期一会を座右の銘に挙げることで、「人との出会いや、今この瞬間を大切にする人」といった温かくポジティブな印象を与えられます。
■二重表現にならないように気をつける
二度とない貴重な出会いであることを強調するために、「一期一会の出会い」と使ってしまっているケースがありますが、これは二重表現です。一期一会自体に、一生で一度の出会いという意味があるため、さらに「出会い」という言葉を付け加える必要はありません。
特別な出会いであることを強調したい場合でも、そのまま一期一会という言葉を使いましょう。
■「一期一会」を使った例文
一期一会を使った例文としては、以下のようなものが挙げられます。4つ目の例文のように、人以外の「物」や「出来事」との出会いにも使うことを確認しておきましょう。
・旅先での出会いは一期一会だから大切にしよう
・常に一期一会のスタンスでおもてなしをする
・人生は一期一会、今この瞬間は二度と戻ってこない
・ずっと探していたものが予想外の場所で見つかり、一期一会だと感動した
「一期一会」の類似表現
一期一会には、以下のような類似表現があります。
それぞれの意味や使い方を解説します。
「邂逅」
邂逅は「かいこう」と読み、思いがけない偶然の出会いという意味で使われる言葉です。文語表現であるため、文学作品などを読んでいると目にする言葉の1つといえるでしょう。
「旧友との20年ぶりの邂逅」というように、予想外の感動的な出会いというニュアンスで使われることが多いものの、必ずしもポジティブな意味合いで使われるわけではありません。また、一期一会と同様に、人以外の物や概念との出会いについても使われます。
「千載一遇」
千載一遇は「せんざいいちぐう」と読み、千年に1回しか出会えないようなチャンスを意味する四字熟語です。「千載一遇のチャンス」などと使います。
一期一会は一生に一度きりの機会や出会いを意味するため、似たようなシーンで使う言葉です。しかし、千載一遇のほうが、より確率の低い機会やチャンスをあらわすのに適しているでしょう。なかなか恵まれないような貴重な機会をあらわすため、頻繁に使う言葉ではありません。また、あくまでもポジティブな出来事や出会いに使う言葉であることがポイントです。
「一世一代」
一世一代は「いっせいちだい」と読み、一生に一度しかないような重大なことをあらわす言葉で、「一世一代の勝負」などと使います。一世を「いっせい」ではなく、「いっせ」と読むことをおさえておきましょう。
「一世」と「一代」は、どちらも人間の一生のことを指すため、この2つの言葉を重ねることで、人生という意味を強調しています。そこから転じて、一世一代は人生において二度とないような重要な出来事をあらわすようになりました。
「袖振り合うも多生の縁」
袖振り合うも多生の縁は、「そでふりあうもたしょうのえん」と読みます。多生の縁とは何度も生まれ変わるなかで結ばれた縁のことで、見知らぬ人と袖が触れ合うようなちょっとしたことでも、前世からの深い縁によるものだという意味の言葉です。ささいな出会いであっても偶然ではないため大切にしようというニュアンスは、一期一会と重なります。
一期一会の本来の意味を理解しよう
一期一会は、毎日顔を合わせる相手にも使う言葉です。一生に一度きりの機会や出会いを意味しますが、たとえ毎日会う相手でも、一緒に過ごす今日という日は二度と訪れません。その瞬間を大切に過ごそうという意味合いが込められています。一期一会の本来の意味を理解して、正しく使えるようにしましょう。
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