「一心不乱」の意味とは?
一心不乱(いっしんふらん)とは、ひとつのことに集中して取り組む様子を表す言葉です。特定のこと以外には脇目もふらず、ひたむきに行動するときに使われます。
【一心不乱】いっしんふらん
[名・形動]心を一つの事に集中して、他の事に気をとられないこと。また、そのさま。「—に祈る」「—に研究する」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
■「一心不乱」の由来とは?
一心不乱は仏教の経典を由来とする言葉です。「自分を捨てて、南無阿弥陀仏とひとつになることを一心不乱と呼ぶ」という一節があり、元々は仏道に精進して阿弥陀仏と心をひとつにすることを指していました。
また、阿弥陀経には、一心不乱に念仏を唱えることにより臨終に際しても心が乱れず、死後は阿弥陀仏が極楽浄土に導いてくれるという一節もあります。現在では、仏道に限らず、特定のことに心をひとつにして専念するときには「一心不乱」と表現します。
■「一心不乱」の使い方を例文でご紹介
一心不乱は、日常会話でも使われることがある表現です。たとえば、次のように使います。
・一心不乱に勉強した結果、第一希望ではないが第二希望の大学に合格できた。
・一心不乱に走る選手たちの姿は感動的だ。
・彼の能力が高いことは周知の事実だが、何事も小手先でしている感じは否めない。一生に一度くらいは一心不乱に努力するほうがよいのではないだろうか。
「一心不乱」と類似する表現
一心不乱と同じく、特定のことに集中して取り組む様子を示す表現はいくつかあります。たとえば次の表現は、いずれも特定のことに集中するときに使います。
それぞれの表現の使い方やニュアンスを、例文をとおしてご紹介します。
●「一意専心(いちいせんしん)」
一意専心(いちいせんしん)も、脇目をふらずにひとつのことだけに集中することを意味する言葉です。元々「一意」も「専心」もひとつのことだけに集中することを意味する言葉のため、2回重ねることでひとつに集中する様子を強調しています。
なお、一意専心は、中国の政治について記された「管子」と呼ばれる書物に由来した言葉とされることが一般的です。管子には「身体が健康かつ血流や呼吸が穏やかな状態で、意識と心をひとつに集中し、耳目が取り乱されていなければ、遠くにあるものも近くにあるもののように感じられる」という表現があります。この「意識と心をひとつに集中し……」の部分を切り出して、「一意専心」と使うようになりました。
・希望の大学院に合格できた。これからは、一意専心で研究にまい進したい。
・一意専心で努力をしたからこそ、今回の快挙につながったといえる。
●「無我夢中(むがむちゅう)」
無我夢中(むがむちゅう)とは、自分の置かれた状況を忘れるほど何かに集中していることを指す言葉です。なお、「無我」とは仏教由来の言葉で、何かにとらわれる気持ちを超越し、自分自身をも忘れることを意味します。
・無我夢中で本を読んでいたら、夜になってしまった。
・子どもがひとりで留守番している家の中から悲鳴が聞こえ、無我夢中になって飛び込んだ。
●「一生懸命(いっしょうけんめい)」
一生懸命(いっしょうけんめい)とは、物事を命がけで取り組むことを意味します。元々は、「武士がひとつの領地を命がけで守り、生活の頼りとしていたこと」を意味する一所懸命(いっしょけんめい)が語源とされています。守るべきものは領地・土地とは限らないため、一生懸命のほうが使いやすい言葉といえるでしょう。
・彼女が一生懸命に努力をして研究に取り組んでいることは、はた目からもよくわかる。
・彼が一生懸命に話せば話すほど、ぼろが出て、彼に対する信頼も地に落ちていく。これ以上は話さないほうがよいだろう。
●「一心一意(いっしんいちい)」
一心一意(いっしんいちい)とは、ひとつのことに集中してまい進することや、脇目もふらず一途に思うことを意味する言葉です。「一心」も「一意」もひとつのことに集中するといった意味であることから、集中している様子を強調した言葉といえます。
・一心一意に彼女のことを思っているのは、はた目からも明らかだ。
・チームが一丸となって一心一意に努めてきたからこそ、プロジェクトは成功したのだ。
・実技試験に向けて一心一意に歌唱練習してきたものの、練習しすぎて喉を傷めてしまった。
●「猪突猛進(ちょとつもうしん)」
猪突猛進(ちょとつもうしん)とは、イノシシのように勢いよくまっすぐに突き進むことを指す言葉です。また、まっすぐに突き進む性格も猪突猛進と表現することがあります。
・彼は営業目標を達成するために猪突猛進している。
・彼女が勉強に猪突猛進している様子は、志望校への熱意を感じさせる。
なお、一心不乱や一意専心、一心一意などは、特定のことに集中している様子を表現する言葉です。「一心不乱に頑張ったおかげで志望校に合格した」や「一意専心で努力を続けた」のように、いずれも基本的にはポジティブな意味で使います。
一方、猪突猛進も特定のことに集中している様子を示す言葉ですが、必ずしもポジティブな意味で使われるのではありません。特定のことに集中することで、ほかの大切な事柄がおろそかになったり、周りの迷惑を考えずに行動したりするときにも使われることがあります。
・君の猪突猛進な性格は、好ましいとも思うが、ときどき攻撃的で怖いと感じる。
・彼は思い込んだら猪突猛進する性格だ。もう少し周囲の状況に配慮すべきではないだろうか。
適切な場面で「一心不乱」を使おう
一心不乱は、日常会話でもよく使われる言葉です。類似する言葉としては一意専心や一心一意などがあり、状況に即した意味で使い分けるようにしてください。
また、基本的にはポジティブな意味で使いますが、ネガティブなニュアンスを含めるときは猪突猛進などの言葉も選択できます。その場にあった言葉を選ぶことで、表現力を高めていきましょう。
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