言い得て妙(いいえてみょう)とは
みなさんは、日常会話の中で言い得て妙という表現を聞いたことがありますか? 同世代同士の会話の中では、耳にする機会は少ないかもしれませんね。言い得て妙は、「何かを非常に適切に、または巧みに表現したときに用いられる言葉」です。
言葉の由来
言い得て妙は、言い当てるという意味の「言い得て」と「妙」に分けて考えるとわかりやすいです。ここでの「妙」は変わっている、不思議だ、という意味ではなく、言い表しようのないほど優れている、という意味で、何かが完璧にバランスが取れている状態を表します。従って、「言い得て妙」とは、言葉が見事にぴったりと当てはまったときの満足感を表現しています。
言い得て妙の日常生活での使い方
言い得て妙という表現は、日常生活のさまざまな場面で、相手に深い印象を与えたり、自分の感情や考えを的確に伝えたりするのに役立ちます。以下に言い得て妙を活用する具体的な例をあげます。
1:彼女の演説は、まさに言い得て妙だった。それぞれの言葉が私たちの心に響き、思わず立ち上がって拍手を送りたくなるほどだった。
ここでは、演説の内容が非常に適切で心に響いた様子を表現しています。演説者が選んだ言葉が、聞き手の心情や期待と完璧に一致していたことを「言い得て妙」と表現することで、その影響力や感動を強調しています
2:この問題に対する彼の解決策は、言い得て妙だ。複雑な状況をシンプルにし、誰もが納得できる方法を提示した。
ここでは、ある問題に対して提案された解決策が非常に適切であることを「言い得て妙」と評価しています。提案者が状況の核心を捉え、効果的な解決方法を見出したことを強調するためにこの表現を用いています。
3:君のその一言は、言い得て妙だね。まさに私が感じていたことを的確に表してくれた。
日常の会話の中で、相手のコメントや意見が自分の考えや感情と完全に一致する場合に使われる例です。相手が自分の感情や考えを言葉にしてくれたことに対し、その適切さを「言い得て妙」と表現しています。
言い得て妙の類義語
言い得て妙と、同じような意味を持つ言葉にはどんなものがあるのか紹介します。
絶妙(ぜつみょう)
絶妙は、何かが非常に巧みであること、または事物が完璧に調和していて、改善の余地がないほどに完璧である状態を指します。細部にわたるバランスが取れていること、状況やタイミングがぴったり合っていることを表現するのに用います。
この言葉は、芸術、料理、スポーツ、日常生活の様々なシーンで用いられ、その場や状況における完璧な調和やタイミングの良さを称賛する際に使われます。以下に例文をあげます。
1:彼女が作るカレーの味は絶妙で、スパイスの効き具合がまさに完璧だ。
2:彼のジョークのタイミングはいつも絶妙で、皆を笑わせるのが上手だ。
3:選手が見せたドリブルとシュートの連携は絶妙で、守備を崩すのに十分だった。
このように絶妙は完璧な調和や巧みさを表現するのに適した表現です。
適切(てきせつ)
適切とは、物事がその状況や条件にぴったり合っていること、または行動、言葉、判断などがその場に最も相応しいという意味を持ちます。正確なタイミングや、状況に応じた正しい方法・対応を示す際に用いられる表現であり、バランスが良く、理にかなっている状態を指します。以下に例文をあげます。
1:彼女の会議での提案はいつも適切で、チームの課題解決に大きく貢献している。
2:緊急事態に対する彼の対応は非常に適切だったため、大きな混乱を防ぐことができた。
3:敏感な話題に触れる際、彼女の言葉選びは常に適切で、相手を不快にさせない。
このように適切という言葉は、判断や行動、言葉選びがその場の状況に対して最もふさわしいと認識される場合に使われます。
的確(てきかく)
的確とは、判断や行動、言葉などが正確であり、目的や要点を正しく捉えていることを指します。この言葉は、ある事象や状況に対して、ぴったり合った方法で対応しているか、正確な理解や表現がなされている場合に使われます。以下に例文をあげます。
1:彼は問題の核心を見極め、的確な解決策を提案した。
2:会議での彼女の意見は非常に的確で、議論を有意義な方向に導いた。
3:上司からのフィードバックはいつも的確で、自分の成長につながるアドバイスがある。
このように、的確とはある状況や問題に対して正しく、効率的に対処する行動や発言を指します。
言葉の選び方で変わる印象
言葉の選び方一つで、人との関係や自分の印象は大きく変わります。たとえば、先述した「適切」と「絶妙」では、似たような意味でも、伝えたいニュアンスに微妙な差が生まれます。
「適切」は単に条件を満たしている状態を指しますが、「絶妙」には、洗練された選択、ある種の巧みさが感じられます。「言い得て妙」も今風に言えば「そうそう! それそれ」で済みますが、状況に応じて最もふさわしい言葉を選ぶことで、相手に与える印象をコントロールできます。
最後に
言い得て妙という表現は、ただの言葉以上の価値を持ちます。それは、相手を理解し、情景や感情を巧みに表現する力。「そうそう! それです! 」で終わらせずに、この表現を使いこなすことで、自己表現のスキルを高め、日常生活や職場でのコミュニケーションをより豊かにすることができるでしょう。
TOP画像/(c)Adobe Stock
執筆
武田さゆり
国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
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