マルチタスクは本当に効率的なのか?

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そもそも、マルチタスクは本当に優れた方法なのでしょうか?マルチタスクとシングルタスクの意味や、実際のマルチタスクのメリット・デメリットを見ていきます。
マルチタスクとシングルタスクとは?
マルチタスクとは「同時に複数の仕事をすること、またはその様子」という仕事方法を表す言葉です。
仕事の規模に関係なく、複数のプロジェクトを同時並行で行うことも、資料作成しながらメールチェックしたり会議の内容を聞きながらメモを取ったりするのもマルチタスクです。
シングルタスクはマルチタスクの対義語で、「一つのタスクにかかり切りになること」をいいます。あるタスクを終えてから、次のタスクに取りかかる仕事の進め方です。
マルチタスク の解説
[名・形動]《multitaskingから》
2 同時にいくつかの仕事をすること。また、そのさま。「—な法律家」「—な活動」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
マルチタスクのメリット
マルチタスクのメリットは、複数のタスクやプロジェクトを同時進行できることです。例えば、納期が同じタイミングの仕事を複数担当することもできます。突発的なスケジュールの変更にも柔軟に対応でき、多くの仕事を請け負えます。
複数の業務に関わることで仕事全体の流れを把握できれば、上司や部下、顧客とのコミュニケーションがより的確になるでしょう。マルチタスクをうまくこなせる人は、仕事のできる人材として評価されます。
マルチタスクのデメリット
マルチタスクのデメリットと聞くと、意外に思うかもしれません。実は、多くの人にとって、シングルタスクの方が作業効率は上がるといわれています。
タスクを同時に扱ったり小まめに切り替えたりすると、内容や進行具合などの記憶が混乱しやすいためです。
「集中力を途中で切っては別のことにすぐ集中する」というやり方は、仕事のタイムロスを生みストレスを増やします。
マルチタスクのメリットが生かされるのは、うまくこなせる場合だけです。キャパシティオーバーを招いてしまうと、ミスが多発しスケジュール全体が遅れてしまう恐れがあります。
マルチタスクが苦手な人は強みを生かす

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マルチタスクにはリスクがあるものの、業務をこなすには必要なスキルです。苦手な人がマルチタスクを身に付けるには、苦手の理由となっている集中力の高さや質へのこだわりをマルチタスクに生かすことです。
1つ仕事に没頭できる集中の高さ
マルチタスクが苦手な原因には、一つのタスクに集中する力が高く、タスクが終わるまで他の仕事に移りたくない特性が考えられます。
タスクが完了するまでこなしたいという意識の高さは、マルチタスクを行う上でも大切です。マルチタスクは、細かく分かれたタスクを個別にこなしていく作業と見なすこともできるからです。
つまり、ただ仕事を並行して進めればよいわけではなく、割り振った時間内に一つのタスクをしっかり終わらせる能力が求められます。タスクへの集中力は、うまく生かせば締め切りを守る上での強みになるでしょう。
こだわりの強さは質の高い仕事につながる
マルチタスクが苦手な原因として、もう一つ挙げられるのは、細かいところまできちんと仕上げたがる完璧主義です。
完璧主義のプラス面は、品質へのこだわりや向上心といえます。確かに、スピード重視でマルチタスクをこなす場合、それぞれのタスクの質はシングルタスクより下がるかもしれません。
マルチタスクで質の高い仕事をしたければ、全体を7割ぐらいで終わらせた後に、チェック・改善して仕上げる方法がおすすめです。
質へのこだわりを、タスクやスケジュールの進行管理、提出前の品質チェックに向ければ強みに変えられます。
マルチタスクが苦手なことを克服する具体的な方法

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マルチタスクの苦手な人がマルチタスクを克服する方法を紹介します。それぞれのステップは基本的でシンプルな内容です。繰り返し実行すれば、次第にマルチタスクが楽になるでしょう。
マルチタスクをシングルタスク化する
マルチタスクが苦手なことを克服するには、マルチタスクを分解して、自分が得意なシングルタスクに変えるのがコツです。
最初に、やるべき仕事を書き出して、さらにそれを小さなタスクに分けます。それぞれのタスクにかかる具体的な時間と期限が分れば、無理のないスケジュールが立てやすくなるためです。
細かく分けた一つのタスクに取りかかっているときは、他の仕事を考えないで集中します。そうすることでシングルタスク化し、自分の強みを生かせるようになります。
タスクに優先順位を付ける
スケジュールを立てるときは、重要度と緊急性によってタスクに優先順位を付けます。そうすれば、いつまでにどのタスクを終わらせればよいのか目安が分ります。
その日にこなすタスクを効率よく進めるには、「1×10×1」システムが有効です。おおよそ1分、10分、1時間と、作業時間でタスクを分けて、短時間で終わるものから事務的にこなします。
1日のスケジューリングに悩む時間を減らし、小さな作業を早く終わらせて、大きな作業に集中できます。
タスクを時間内に終わらせる意識を持つ
複数の仕事をてきぱきこなすには、高品質で完璧な出来上がりを目指さないことがポイントです。まずは70点ぐらいを目安に、全体を時間内に終わらせることを優先します。
「今抱えているタスクを完全に終えなければ次に進めない」という癖は、マルチタスクの障害になります。
この癖を乗り越えるには意識の切り替えが必要です。期限に余裕を持って終わらせ、残りの時間で品質向上を目指しましょう。その方がミスも減らせるので、結果的に仕上がりも良くなります。
集中できる環境を整える
仕事をシングルタスク化するには、タスクに集中できる環境を整えることも重要です。
例えば、緊急連絡先や取引先以外のメール・チャットの通知を切るといった工夫が効果的です。すぐにこなさなければならないメール・チャットでなくても、連絡が来ると作業を中断されて気が散ってしまいます。
自分の周囲から、決めたタスク以外に脱線するきっかけをなくし、同僚などにも「この時間は話しかけないでほしい」と協力を頼むとよいでしょう。
スケジュールに予備タイムを設定する
マルチタスクにおいて、その日に割り振った仕事はその日の内に終わらせるのが基本です。
ただし、どんなに頑張ってもスケジュールが狂うことはあります。飛び入りの頼まれ仕事や、突発的なトラブルがあるかもしれません。
スケジュールを立てるときは、遅れに備えて何も予定を入れない予備タイムをつくっておきます。1日30分の予備タイムを2回つくるのがおすすめです。
予備タイムがあれば、心にゆとりが生まれてストレスを減らせます。また、作業にも集中しやすくなり効率がアップします。
マルチタスクのストレスから抜け出そう

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大量の仕事を期限に間に合わせるには、複数の仕事を同時に進めるスキルが必要です。マルチタスクが苦手な人にとっては、ハードルが高すぎると感じるかもしれません。
実は、マルチタスクをこなせる人の多くは、大きなタスクを細かく分けてシングルタスク化しています。シングルタスク化すれば、何度も集中を中断されたり、キャパシティオーバーになったりするストレスから解放されます。
マルチタスクをシングルタスク化するコツを身に付け、もっと自分の時間や家族と過ごす時間をゆっくり取れるようになりましょう。
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