「今もなお」
「今もなお」は、以前の状態が今も続いていることを表します。「依然」とよく似た意味をもつ言葉です。
「なお」は漢字で「尚」と書き、以下のように、さまざまな意味が含まれます。
1.以前の状態がそのまま続いていること
2.状態や程度が一段と進む様子
3.今ある物事に付け加えるべきものがあること
4.ちょうど、あたかも
「今もなお」とする場合は、「1」の意味で用いるのが一般的です。会話やメール文では以下のように活用してみましょう。
・昨日からの雨が今もなお降り続いている。
・菓子の味と品質にこだわる我が社では、創業当時の製法が今もなお受け継がれている。
・システム障害による混乱は今なお収まらず、担当者が24時間体制で復旧にあたっている。
「現在に至るまで」
「至る」(いたる)とは、目的地にたどり着いたり、ある状態へと達したりすることです。「現在に至るまで」とすることで、過去から現在への範囲を表します。
「依然」の場合は、物事が変化していない「今」の状態を指しますが、「現在に至るまで」は、これまで経過してきた「時間」を意味する点が特徴です。
また、範囲を表す「至るまで」の活用法は幅広く、「出会いから結婚に至るまで」、「和食から洋食に至るまで」など、さまざまに活用できます。
・我が社の製品は、明治創業から激動の時代を経て現在に至るまで、多くの人々に愛され続けてきました。
・上司は業績トップが当たり前の人物だが、先輩の話によると現在に至るまで数々の努力を重ねたらしい。
・希望の転職先に就職が決まった。現在に至るまでの自分の努力が、ようやく報われた思いだ。
「相変わらず」
「相変わらず」(あいかわらず)とは、今までと変わった様子が見られないことです。以前と変わらない、という点は「依然」と共通しています。
異なるのは、「予想や期待に反して変わらない」という意味が含まれる点です。例えば、時間の経過とともに改善すると予想していたものが、変わらない状態のままである場合は「相変わらずの状態だ」と言い表せます。
一方、「依然」や「依然として」には、物事に対する期待や予想は含まれていません。
以下のように、ある一定の物事に対して、言葉を発する人の期待が込められている場合は、「依然」ではなく「相変わらず」を使用しましょう。
・注意したことで何か変化があるかと思ったが、彼の遅刻は相変わらず続いている。
・こちらは真剣に話しているのに、彼の態度は相変わらずあやふやなままだ。
・連休を過ぎたにもかかわらず来店客は多く、今日も相変わらず忙しかった。
「依然」を使った四字熟語「旧態依然」とは

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「依然」には「旧態依然」(きゅうたいいぜん)という四字熟語があります。漢字4字で成り立つ四字熟語は、考えや状態を端的に表したいときに便利です。
ここからは「旧態依然」の意味や例文、反対の意味をもつ言葉についてご紹介します。「依然」の意味をふまえ、さらなる活用法を身に付けていきましょう。
「旧態依然」の意味
「旧態依然」は、昔から現在まで、少しも進歩や発展がないことを意味します。「旧態」は、昔からの状態を指す言葉です。変化がないことを意味する「依然」と続けることで、物事の状態や人の考えが古いままで、先へ進んでないことを表します。
気を付けたいのは、意味合いに若干ネガティブなニュアンスを含む点です。そもそも「進歩」や「発展」には、物事がよい方向へ進んだり、盛んになったりという意味があります。
それらの動きが見られず、古いままだと伝える「旧態依然」は、シーンや受け取り方によっては、相手に不快な印象を与えてしまうかもしれません。
メールや会話で使用する際は、これらの正しい意味をよく理解しておきましょう。
「旧態依然」を使った例文
「旧態依然」という四字熟語は、以下のように活用できます。上記で記した注意点などを参考に、日常生活に取り入れてみてください。
・旧態依然のままの体制では、新たな改革は期待できません。今こそ体制一新に乗り出すべきです。
・「旧態依然たる社風についていけない」と、先日転職したばかりの彼から相談を受けた。
・もっと先進的な企業かと思っていたのだが、どうやら旧態依然の考え方が主流のようだ。
きゅうたい‐いぜん〔キウタイ‐〕【旧態依然】
[ト・タル][文][形動タリ]もとのままで変化や進歩のないさま。「旧態依然とした生活ぶり」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「旧態依然」の対義語は「日進月歩」
「日進月歩」(にっしんげっぽ)は、絶えず進化を続けることを意味します。古い状態から進化がない「旧態依然」とは、反対の意味をもつ四字熟語です。
また、言葉の組み合わせ方も「旧態依然」とは異なります。「旧態依然」は「旧隊」に「依然」を続けた語句ですが、「日進月歩」は「日月」と「進歩」を交互句に組み合わせています。
「日月」には、「日に日にたえまなく状態が変わる」という意味があり、「進歩」と組み合わせることで、そのスピードが速いことを表します。
間違えやすい例として「日新月歩」が挙げられますが、上記の意味をふまえ書き間違いには気を付けましょう。
にっしん‐げっぽ【日進月歩】
日ごと月ごとに絶えず進歩すること。「日進月歩の科学技術」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「依然」の意味や使い方を正しく理解しよう
「依然」や「依然として」は、状態が変わらないことを表す言葉です。言い換え表現には「今もなお」や「相変わらず」などが挙げられます。
また、「依然」は「旧態依然」のような四字熟語でも活用できます。言葉の正しい意味や言い換え表現との違いをふまえ、ぜひビジネスシーンに取り入れてみてください。
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