フェイクファーは見た目の高級感と保温性の高さから人気ですが、洗濯の方法を間違えるとゴワついたり、毛並みが乱れたりすることがあります。洗濯表示が「洗濯不可」となっているものも多く、自宅でのケアに不安を感じる人も少なくありません。
そこで、本記事では、フェイクファーの洗濯でよくある失敗を防ぎながら、ふわふわの質感を長持ちさせるための具体的な方法を創業80余年の歴史を持つ京都発祥の染み抜き・お直し専門店である「きものトータルクリニック吉本」さんにお聞きしました。
フェイクファーの洗濯方法|ふわふわをキープする正しい洗い方
フェイクファーを自宅で洗う際は、繊維を傷めず、ふわふわの質感を保つために適切な方法を選ぶことが重要です。ここでは、洗濯前に確認すべきポイントと、最適な洗い方について解説します。
洗濯表示をチェック! 洗えるフェイクファーか見極める方法
フェイクファーの洗濯表示は製品ごとに異なり、「水洗い可」「手洗いのみ」「ドライクリーニング推奨」 などの指示が記載されています。自宅で洗えるかどうかを判断するために、以下のポイントを確認しましょう。
1.洗濯桶マーク(洗濯機使用可)
洗濯桶に数字が記載されているのは洗える温度を意味しています。30と記載がある場合は「30℃以下」のお湯で洗えることを表しています。
2.洗濯桶に手を入れるマーク(手洗い可)
水でやさしく洗うことが推奨されています。自宅での手洗いが可能です。
3.洗濯桶にバツ印(洗濯不可)
水洗いすると繊維が劣化する可能性があるため、クリーニングを推奨。ただし、表面がポリエステル製の場合は、低刺激の洗剤を使い慎重に手洗いすれば問題なく洗えるケースもありますが、目立たない部分で洗いのテストが必要であり、自己責任で行うこととなります。
4.ドライクリーニングマーク
自宅での洗濯は避け、専門のクリーニング店に相談するのが安全です。

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手洗いと洗濯機、どっちがいい? おすすめの洗い方
フェイクファーは基本的に手洗いが最適です。洗濯機での摩擦を避けることで、毛並みのダメージを最小限に抑えることができます。
【手洗いの手順】
1.洗濯液を準備する
・大きめの容器に30℃以下のぬるま湯を入れ、中性洗剤(エマールやアクロン)を適量溶かす。
・洗剤が均一に溶けるようによくかき混ぜる。
2.優しく押し洗いする
・フェイクファーを浸し、20〜30回ほど押し洗いをする。
・こすったり、もみ洗いをすると毛が絡まりやすくなるため注意。

フェイクファーをしっかり浸けてから、押し洗いをします。
3.すすぎは数回しっかりと
・洗剤が残ると毛がゴワつく原因になるため、水を変えながら泡立たなくなるまで丁寧にすすぐ。
・最後のすすぎに少量の柔軟剤を入れると、手触りがなめらかになる。
4.軽く水気を切る
・絞らずに、タオルで挟んで押しながら水分を吸収させる。
・強く押しすぎると毛が寝てしまうため、優しく水分を取り除く。
【洗濯機を使用する場合】
洗濯ネットを活用し、洗濯機の「ドライコース」または「手洗いコース」を選ぶことでダメージを抑えることができますが、洗濯機可使用可のフェイクファーの場合は目立たない部分で洗いのテストが必要であり、自己責任で行うこととなります。
1.洗濯ネットに入れる
・毛並みを整えた状態で、大きめの洗濯ネットにゆったりと収納する。
・余裕をもたせることで、洗濯中の摩擦を軽減できる。
2.「ドライコース」または「手洗いコース」で洗う
・水温は30℃以下に設定し、脱水は「弱」または「30秒以内」にする。
・脱水時間が長いと毛が絡まる原因になるため注意。
洗濯機を使う場合でも、手洗いと同様に、タオルで水分を拭き取ってから乾燥させるのがポイントです。
洗剤の選び方|エマールなどの中性洗剤が適している理由
フェイクファーを洗う際には、繊維へのダメージを抑えるために中性洗剤を選ぶことが重要です。適した洗剤を使うことで、毛並みの柔らかさをキープできます。
1.中性洗剤が適している理由
・繊維の表面を傷めにくく、洗浄力がマイルド。
・静電気を防ぐ効果があるため、毛のまとまりを防げる。
2.おすすめの中性洗剤
・エマール:衣類の風合いを守りながら洗える。
・アクロン:繊維のダメージを抑えつつ、ふんわり仕上げる効果あり。
3.避けるべき洗剤
・粉末洗剤(溶け残りが毛の間に付着し、ゴワつきの原因になる)
・アルカリ性洗剤(繊維が硬くなり、手触りが悪くなる)
・漂白剤(変色や繊維の傷みを引き起こす)
また、仕上げに柔軟剤を少量加えると、静電気防止や毛のまとまりを防ぐ効果があります。ただし、過剰に使用すると毛がベタつくため、適量を守ることが大切です。

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洗濯後の仕上げ|ふわふわ感を復活させるコツ
フェイクファーは適切な乾燥方法を選び、毛並みを整えることで、ゴワつきや絡まりを防ぎ、ふわふわの質感を維持できます。ここでは、洗濯後の乾燥・仕上げ方法を具体的に解説していきましょう。
自然乾燥がベスト? ドライヤーやアイロンの活用法
フェイクファーの乾燥方法は、適度な水分を残しながら繊維を傷めずに乾かすことが重要です。最適な乾燥方法を知ることで、毛並みを柔らかく保つことができます。
1.基本は「陰干し」
・直射日光に当てると変色や繊維の劣化につながるため、風通しのいい日陰で平干しするのが最適です。除湿機を使用してもいいでしょう。
・吊るして干すと毛並みが引っ張られ、ペタッと寝てしまうことがあるため、できるだけ平らな状態で乾燥させることを推奨します。
2.ドライヤーを使う場合の注意点
・自然乾燥だけでは毛並みが回復しない場合は、ドライヤーの「冷風」 を使いましょう。
・毛の根元から風を当て、手で優しくほぐしながら乾かすと、ふわっとした仕上がりになります。
・「温風」は繊維を傷める可能性があるため、使用する場合は距離を30cm以上離して、短時間にとどめることが大切です。
3.アイロンのスチーム機能を活用する
・毛が絡まってしまった場合は、スチームアイロンを10cmほど離して蒸気を軽く当てると毛がほぐれやすくなります。
・アイロンを直接押し当てると毛が縮むため、絶対に避けることが重要です。
専用ブラシで毛並みを整える|おすすめのブラシの種類
フェイクファーは乾燥後のブラッシングによって、さらにふわふわ感を回復させることができます。適切なブラシを選び、正しい方法でブラッシングすることが大切です。
1.ブラッシングが必要な理由
・洗濯後のフェイクファーは、毛が絡まりやすく、指で軽くほぐしただけでは均一にふわふわにならないことがあります。
・乾燥後のブラッシングを行うことで、毛並みの方向を整え、ボリュームを復活させることが可能です。
2.おすすめのブラシの種類
・ペット用ブラシ(スリッカーブラシ):フェイクファーの細かい毛をやさしくほぐせるため、最も適したブラシです。
・静電気防止ブラシ:フェイクファーは静電気が発生しやすいため、毛のまとまりを防ぐために適しています。
・目の細かいクシ(コーム):絡まりがひどい場合に、部分的にほぐすのに便利です。
3.ブラッシングの手順
適切なブラッシングを行うことで、洗濯前のようなふわふわの手触りを取り戻すことができます。
・優しく毛の流れに沿ってとかす
力を入れず、毛先から少しずつほぐすようにブラッシングする。
・絡まりが強い部分は指でほぐしてからとかす
無理にブラシを通すと毛が抜ける可能性があるため、丁寧にほぐしながら整える。
・スチームを当てながらとかすと効果的
スチームアイロンで軽く蒸気を当てながらブラッシングすると、柔らかい仕上がりになる。
クリーニングと自宅洗濯、どちらが正解?
フェイクファーを清潔に保つには、クリーニングに出すべきか、自宅で洗うべきかを判断することが重要です。費用や仕上がりの違いを理解し、状況に応じた最適な方法を選びましょう。

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クリーニングに出した場合の料金と仕上がりの違い
クリーニングの最大のメリットは、プロの技術で毛並みを整えながら洗浄できることです。特に、繊細なフェイクファーの手触りを損なわずに仕上げてもらえる点は魅力です。
・料金相場:
フェイクファーのコートやジャケットは、1,500〜3,000円前後が一般的。ブランド品や特別な仕上げを希望する場合は、追加料金が発生することもあります。
・仕上がりの質:
クリーニング専用の溶剤を使い、水を使わずに洗うため、縮みやゴワつきが発生しにくい。また、仕上げ時にブラッシングやアイロンを施し、新品に近い毛並みを復活させることが可能です。
ただし、頻繁にクリーニングに出すとコストがかかるため、汚れがひどいときや、大切な衣類のみ利用するのが現実的です。
自宅洗濯のメリットとリスク
自宅で洗濯する最大の利点は、クリーニング費用を節約できることです。基本的に洗剤代だけで済むため、年間で数千円単位の節約につながります。
・コスト面:
専用洗剤を使用しても、1回あたり100円以下で洗濯可能。クリーニングに比べ、経済的な選択肢となります。
・リスク:
誤った方法で洗うと、毛が絡まる・ゴワつく・縮むなどのトラブルが発生する可能性があるため、慎重な対応が求められます。普段の軽い汚れは自宅洗濯、シーズン終わりのメンテナンスはクリーニングと、バランスよく使い分けるのが理想的です。
最後に
フェイクファーの洗濯は適切な方法を守れば、自宅でも十分きれいに仕上げられます。毛並みを守るためのコツを押さえつつ、洗濯や乾燥の工程を工夫して、長く愛用できるようにしましょう。
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