切開部分の傷口
帝王切開で出産した場合には、後陣痛の痛みとともに傷口の痛みも感じることになります。特に痛みが強いのは、産後3日目くらいまでです。その後3週間目くらいまでは、傷口周辺の細胞が増える期間なので、軽い痛みやかゆみが感じられます。それ以降は細胞の活動が落ち着くので、そこまで強く痛むこともありません。約1年かけて回復に向かいます。
退院のタイミングでは、まだ傷口が完治しているわけではありません。自宅に帰ったからといって、無理し過ぎないことが大切です。傷口が拡がらないよう、専用のテープを貼っておくことをおすすめします。
日常生活の注意点
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退院して自宅に戻ってくると、つい溜まっている家事が気になることもありますよね。また、少し回復して元気になってくると、外出したい気持ちも出てきます。しかし、まだ身体は回復途中です。本調子ではありませんので、注意しながら生活することが求められます。
家事、育児は負担のない範囲で
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さまざまな家電製品がそろい、手軽に食べられるものがたくさんあるため、昔に比べて家事の負担は大きくありません。それでも、立ちっぱなしで皿洗い・かがんで風呂掃除といった家事は負担になります。産後は回復を最優先にするため、負担の大きな家事や、上の子の世話をするといった育児は、周りの助けを借りましょう。
両親に任せられるのなら、思い切り頼って、回復と赤ちゃんのお世話に集中します。夫に育児休暇を取ってもらう人も増えているので、事前に相談するのもおすすめです。家事支援や宅配サービスを利用する方法もあります。
外出はいつからできる?
退院して自宅に帰ってきたからといって、すぐに外出するのはおすすめできません。回復し切っていない身体で外出するのは、疲れやすく負担が大きいからです。ほとんどのママは「1か月健診が久しぶりの外出」になります。家の中でずっと赤ちゃんと寝て過ごしていると、体力が落ちているはずです。布団の上でできる産褥体操をして、少しずつ体力作りを始めましょう。
お風呂はいつからOK?
湯船にお湯を張って入浴するのは、1か月健診が終わるまで待ちます。産後すぐのときには、まだ子宮口が開いているため、雑菌が入って感染するリスクがあるからです。季節によっては寒さを感じることもあるかもしれませんが、お風呂はシャワーですませます。温まってリラックスしたいときには、足湯をするのがおすすめです。
1か月健診で問題がなく、湯船に浸かってもよいといわれた場合でも、清潔を意識してお風呂の用意をしましょう。浴槽はきれいに洗って、1番風呂に入ると安心です。
産後の回復方法について
出産は大きなエネルギーを使いますし、身体も傷つきます。それを回復するのが、床上げまでの期間です。ゆっくり過ごしたら、少しずつ身体を動かすことも疲労回復につながっていきます。
とにかく休養が大事
まず大切なのは休むことです。できる限り布団やベッドで横になって過ごすことが大切になります。ときには、気分がよく身体もラクで家事ができそうに感じることもあるかもしれません。しかし、身体はママが思っているよりも疲れているので、大丈夫と感じても休んでおくのがおすすめです。
昼夜問わず赤ちゃんの授乳があるので、赤ちゃんが眠っているときには、ママも一緒に寝てしまいましょう。赤ちゃんのお世話だけしながら、同じペースで生活することで、充分な休息が取れます。
産褥体操で疲労回復
布団の上で手軽にできる「産褥体操」に取り組むのもおすすめです。毎日の習慣にすることで、ゆるんだ腹筋や骨盤底筋の回復を促しますし、全身をリラックスさせる働きが期待できます。血行促進の効果もあるので、静脈内の血栓予防にも活用可能です。
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産後すぐはごく軽い運動から始めます。少しずつ回数やレベルを上げましょう。ただし、つらくて続けられないようではいけません。続けることが第一なので、無理なくできる範囲で取り組みましょう。
最後に産休のママへ。産後の一か月健診前であっても産後うつなど、メンタルが不安定になりやすくなることも多く、育児に悲鳴をあげてしまいたくなることも珍しくありません。ましてや、コロナ禍の中での育児は孤立し、ママ友もできにくい現状です。産後の「床上げ」は身体と心の両方の床上げです。気負わず「助けて欲しい」というSOSを出せる場所を見つけながら、少しずつ赤ちゃんと一緒にママも成長していきましょう。
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写真/(C)Shutterstock.com
産婦人科医医師
金子法子
1989年川崎医科大学卒業後、同年山口大学産婦人科学教室入局。同大学病院、関連病院勤務を経て、1998年より実家である針間産婦人科副院長。2001年より現職。2016年第五回西予市おイネ賞全国奨励賞受賞。2017年山口県医師会功労賞受賞。日本産婦人科学会専門医。日本性感染症学会認定医。日本産婦人科学会女性のヘルスケアアドバイザー。敷居の低い産婦人科をモットーに、地域のかかりつけ医として、悩める全女性の良き相談相手となるべく、性教育や女性の健康教育の講演活動も精力的に行っている。二男一女の母でもある。
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