職業欄の書き方
家族構成の記載欄にある職業には、詳しい社名や役職の記載は原則として必要ありません。ただし、特別な理由から職業の詳細も記載を求められるケースがあります。
基本的には、会社員・会社役員・公務員・自営業など大まかな雇用形態について聞かれていると考えましょう。ちなみに専業主婦はこうした書類上では無職となります。パートやアルバイト、学生の人はそのままの雇用形態・立場を記載します。
家族構成図(ジェノグラム)はどう書く?
ここ数年、保育や医療の現場で家族構成図「ジェノグラム」が注目を集めています。ジェノグラムは「Generation:年代・血のつながり」「Gene:遺伝子」「Diagram:図表」といった英単語を合わせた造語です。ジェノグラムは、対象者の家族関係について背景を探る際、家系図を可視化しやすくするために開発されました。ジェノグラムの基本的な書き方や表し方を見ていきましょう。
性別、年齢など基本図形の書き方
ジェノグラムは、性別・年齢などの基本的な知識があれば、誰でも簡単に作成・解読が可能です。ジェノグラムでは、男性を□・女性を○、年齢はマーク中央に数字で表記します。
ジェノグラムを書き出すとき、まず図形中心に対象者を示す二重マークを書き入れます。例えば、対象者が女性なら◎です。対象者の生育においてキーパーソンとなる人物は☆印で表します。対象者の周辺に死没した人物がいる場合には、2パターンの表し方があり、黒塗りまたはマーク中央に×印を書き入れます。さらに、「生年月日:死去した年月日」の形式でマークの上に記入しましょう。
婚姻、離婚など関係性の表し方
ジェノグラムでは、マークを線でつなげて関係性を表現します。婚姻はマークとマークの間を実線や二重線を結ぶのが一般的です。事実婚の場合は波線でつなぐこともあります。
婚姻を示す線の真ん中から、下に伸びた線につながるマークが子どもです。離婚は婚姻を示す線に二重斜線引き、線付近に婚姻や離婚の年月日を記載します。子どもを真ん中にして、別居・もしくは親権を持たない親寄りに別れを示す二重斜線を引き、子どもとの別居を表すのがルールです。同居中の家族が一目で分かるように曲線で囲む方法もあります。
ジェノグラムは特に子どもの心理発達の治療やサポートに用いられる家系図です。ジェノグラムがあれば子どもの生育に深くかかわる家族の状況を、誰でも一目で判断できます。
採用選考で家族構成を聞かれたら?
基本的に、職場で家族構成を求められるのは、税金や保険証・年金などの手続きに必要な場合のみです。他には、家族手当や家族の看護休暇を設けている企業では家族構成の提出が必要となります。しかし、採用選考などで家族構成を聞かれた経験を持つ人もいるようです。その場合はどのような対応が適切なのでしょうか。
原則として家族構成に関する質問はNG
採用選考の場で、企業が家族構成に関する質問を投げかけるのは基本的にNGとされています。選考途中の求職者の家族構成は、求職者の適正や能力に無関係の個人情報で、個人のプライバシーに立ち入りすぎた質問です。就職差別につながる恐れがあるため、厚生労働省は「公正な採用選考の基本」というガイドラインで関係のない個人情報の収集を原則として禁じており、近年は控える企業が増えてきました。しかし、特に女性の求職者の場合、面接などで家族構成について聞かれることはまだまだ多くあるようです。
履歴書に家族構成を記入する必要はない
採用選考の段階で企業が準備した書類に家族構成を記載する必要はありません。履歴書も同じです。もともと、日本で流通していたタイプの履歴書には、扶養家族の有無について尋ねる欄がありました。しかし、今では本人の意思によって記載するかどうかを判断して構いません。こうした風潮やパソコンで履歴書を作成するケースが増えたおかげで、最近は扶養家族についての記載欄がない履歴書が増えています。
面接で聞かれたらどう答える?
面接の段階で「企業が求職者の家族構成について問うべきではない」というのが厚生労働省の姿勢であり、原則的なルールです。家族構成について面接で聞かれた場合、求職者が差し支えないと思った場合は答えても問題ありません。
就職にあたって家族への特別な配慮が必要なケース以外は「家族は○人」といった基本情報で十分です。それ以上質問されると不快に感じたりする人もいます。その場合は、毅然とした態度で「個人情報ですが、説明する必要はあるでしょうか」と明言を避けるのも一つの手です。
確かに、面接では質問には全て答えるのが、暗黙の「通りやすくなる方法」かもしれません。しかし、現在は入社後に気持ちよく働くためにも、面接時に自分の意見をしっかり伝えるのがベストといわれています。家族構成や背景ではなく、自分自身に興味を持ってくれる企業で働けるとよいですね。
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弁護士
正木裕美
アディーレ法律事務所所属。男女トラブルをはじめ、ストーカー被害や薬物問題、労働トラブルなどを得意分野として多く扱う。過去『ザ・世界仰天ニュース』(日本テレビ)に出演のほか、『ゴゴスマ -GO GO!Smile!-』(TBS系)等のコメンテーターをはじめ、多数メディアに出演中。