ぬいぐるみでもOK
子どものころから使っているぬいぐるみがあると、「安心できる」という人も多いのではないでしょうか。お気に入りのものを入眠時に抱きしめることは安心につながることがあるといわれています。肌触りのいい毛布やタオルなどでも同様の効果を感じている人もいるようです。
ハグの方法
ハグの仕方により、得られる効果は高まったり下がったりします。より効果的とされるハグの方法と避けるべきハグをチェックしましょう。
効果的なハグとは
精神的な効果を高めたい場合は、お互いの密着部分ができるだけ広くなるようにハグをすることがポイント。多くの部分が触れ合うことで、より強い安心感が得られると言われます。
姿勢に関しては、向き合うハグでも後ろから抱きしめるハグでも、大きな差はありません。愛情を込める場合は、相手がきつく感じない程度に、やや強めがおすすめ。
血管が緩んで血圧が低下し、自律神経における副交感神経が優位になった時に、人はリラックス状態に入ると言われています。
精神科医・浦島佳代子先生からは、こんなアドバイスも。
「リラックスした穏やかな環境づくりが大切です。相手の鼓動や気持ちを感じながら、ゆっくりした動作で行い、背中を優しくさすってあげることもいいのではないでしょうか」
NGなハグ
愛情を感じない人や嫌いな人とのハグは、リラックス効果が全くありません。むしろ、ストレスが大きくなってしまう恐れもあります。
人は、苦手なものや嫌いな人と触れ合うことで、体が緊張し神経が興奮してしまいます。このことにより、血圧が上昇し呼吸が浅くなると、リラックスどころではありません。
βエンドルフィンやオキシトシンといったホルモンは、気持ちがこもっている相手とハグする場合のみ分泌されます。ハグの効果を得るためには、愛情を注げる相手であることがとても重要です。
習慣化するには
大切な人とのハグを習慣化することで、さらに効果が増し、健康にも良い影響を与えると言われています。ハグを習慣化するために意識したいポイントを紹介します。
まずは慣れること
日本では、まだまだハグ文化が定着しているとは言えません。多くの人は、街中などでハグをすることに強い抵抗を感じるのではないでしょうか。
ハグを習慣化するには、とにかくハグに慣れることが重要です。恋人や家族とハグできる機会が多い場合は、意識的にハグを繰り返せば、次第に抵抗感がなくなっていきます。
人とハグをすること自体に抵抗がある場合は、ぬいぐるみなどを相手に、1人でハグを練習するのも◎。自分自身を抱きしめる行為も、ハグへの慣れにつながります。
ひとりでの練習は、誰にも迷惑をかけない上、ハグすることへの恥ずかしさを減らしていけます。
心地よさが重要
ハグを習慣化するために欠かせない要素のひとつが、相手の気持ち。自分だけでなく、相手にとっても心地よいハグを心がけることで、相手がハグに対して感じる抵抗感も弱められます。
勢いよく突然抱きつくなど、相手の気持ちを考えない押し付けのようなハグを繰り返せば、相手がハグされることを嫌がる恐れもあります。
「愛情や安心を示す方法はたくさんあるので、自分たちにとって心地よい方法を選択することが大事だと思います」(浦島佳代子先生)
タイミングがポイント
1日の生活において、誰とどのタイミングでハグをするかということを決めておけば、より習慣化しやすくなります。
出勤前に夫婦間でハグをする、子どもが帰宅した際にハグをする、寝る前は全員とハグをするなど、あらかじめルーチンにしておくことで、ハグにかかわる全員が慣れていきます。
ただし、タイミングを守ることだけを意識し過ぎず、全てのハグに気持ちを込めることも重要。ハグする相手のことを大切に思えなければ、ハグの効果も下がってしまいます。
前出の浦島佳代子先生は、最後にこうアドバイスします。
「先の見えにくい不安な状況を乗り越えて行くためには家族や社会がお互い支え合うことが必要です。今はハグができなくても、言葉やその他のボディランゲージでお互いの愛情や信頼を確認し合って。そして、何の心配もなくハグできるようになったら、ぜひハグする喜びを分かち合いましょう」
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精神科医
浦島佳代子(うらしま かよこ)
精神科医、医学博士
1977年京都府生まれ。その後、岐阜県の清流でのびのびと育つ。長崎大学医学部卒業。現在は長崎大学病院精神科に所属。