「蛍雪の功」とは苦労して勉学に励むこと
「蛍」と「雪」が結びついた「蛍雪」から始まる蛍雪の功。あまり馴染みがある言葉ではありませんよね。読み方も意味も掴みづらい言葉ですが、なんと読むかわかりますか?
雪を「せつ」と読むのか「ゆき」と読むのか悩むところですが、問題は一文字目の蛍です。素直に「ほたる」と読むのでしょうか。それとも音読みでしょうか。
「蛍光ペン」を「けいこうぺん」と読むように、蛍雪の行の蛍は、「けい」と読むので、読み方の正解は【けいせつのこう】でした。
【蛍雪の功:けいせつのこう】
苦労して勉学に励んだその成果。「―なってみごと合格する」
(引用〈小学館 デジタル大辞泉〉より)
蛍雪の功は苦労して勉強すること、それによる成果を意味します。蛍雪という言葉が苦労して勉学に励むことを表すようになった由来は、中国の故事にあります。ここからは、蛍雪の功の由来となったエピソードをご紹介します。
中国の故事が由来
蛍雪の功は、中国の書物「蒙求(もうぎゅう)」に由来があります。簡単に逸話をご紹介します。
四世紀頃、中国の東晋王朝の時代、車胤(しゃいん)と孫康(そんこう)という2人の貧しい青年がいました。2人はいわゆる官僚である官吏を目指し勉学に励んでいましたが、夜に勉強するための灯火に使う油を買うお金がありませんでした。
そこで車胤は夏の夜に蛍を何匹も捕まえて絹の袋に入れ、孫康は冬の夜に窓辺に雪を積み上げ雪の反射を利用し、それぞれ蛍と雪の反射を明かりに使い勉強を続けます。このような努力が実り、2人とも高級官吏に出世したという話です。
この故事に登場する蛍と雪が蛍雪という言葉になり、さらに経験や努力が積み重なって得られる成果という意味の「功」と結びつき、蛍雪の功という故事成語が生まれました。
車胤と孫康の話は、もとはそれぞれ別の書物に書かれていましたが、両方の話をペアにして収めているのが唐の時代の児童用教科書である蒙求です。
蒙求は日本でも平安時代以降、江戸時代にかけて漢文学習をする際の入門テキストとして、広く読まれました。そのため、日本人にも浸透したと考えられています。
卒業式の定番である「蛍の光」の一番には、「蛍の光 窓の雪」という歌詞がありますが、これも晋書のエピソードを下敷きにしているのです。苦労しながら一緒に勉強に励んできた同級生との思い出を歌っています。
「蛍雪の功」の使い方|例文もご紹介
蛍雪の功は「苦労して勉強すること」あるいは「努力して勉強した成果」という意味で使います。
由来となった故事の貧しい若者、車胤と孫康は苦労して勉強を続けただけでなく、その結果しっかりと出世していることがポイントです。この点を踏まえると、苦労や努力を重ねて勉強したにも関わらず、結果に結びつかなかった事例に使うケースは少ないようです。
蛍雪の功の例文3つ
ここからは蛍雪の功を使った例文を2つご紹介します。
・彼の家は貧しく予備校に通うことができなかったが、蛍雪の功を積み、第一志望の大学に合格することができた
・蛍雪の功により、幼い頃からの医者になる夢がかなった
会話文ではこのように使いましょう。
「アメリカの大学に合格したんだって?おめでとう。いつも長い間自習室にいたもんね。まさに蛍雪の功だね」
「ありがとう。くじけそうになったこともあるけど、諦めないでよかったよ」
「蛍雪の功」の類語3つ
蛍雪の功と似たような意味の類語は、以下の3つを始めとしていくつかあります。
・「蛍」「雪」の字が共通する「蛍窓雪案」
・苦学により知識が豊かになる「蛍雪の功を積む」
・自ら学費を稼ぎ学業に励む「苦学立行」
蛍窓雪案、蛍雪の功を積むについては、蛍雪の功と同様に蛍と雪の字が入っており、晋書の車胤と孫康の故事がもとになっています。
「蛍」「雪」の字が共通する「蛍窓雪案」
蛍窓雪案は「けいそうせつあん」と読み、蛍雪の功と同じように苦労して勉強に励むこと、またその様子をたとえる故事成語です。「蛍窓」は蛍の光で照らされた明るい窓のこと。そして「案」は机のことです。「雪案」は雪明かりで机の上が明るい様子を表しています。
貧しくて灯油を買うことができず、その代わりに蛍の光や雪の明かりを利用して必死に勉学に励むさまが転じて、苦労しながら勉学に励むことを意味するようになりました。