知らないうちに部下を傷つけていた
上司と部下は、たとえ同じ仕事に携わっていても立場が違いますよね。ですので、部下は、上司の言葉を想像以上に重いものとして受け止めてしまうことも、少なくありません。そのことを忘れて、部下が失敗したときに「こんなこともできないの?」「なんで失敗したの?」と冷たい口調で言ってしまうとどうなるでしょうか?
上司にしてみれば、軽い気持ちであったとしても、言われた部下は心底傷ついているかもしれません。こういった悲しみや傷ついた気持ちから、塩対応になってしまうこともあります。
部下のプライベートに問題がある場合も
部下の態度が冷たい原因は、仕事ではなくプライベートに問題があることも考えられます。たとえば夫婦関係や恋人関係がうまくいっていない、子どものいじめや勉強の問題など、悩んでいることがあって気持ちが入らず、塩対応になっているのかもしれません。
また、本人や家族の病気・介護で心身に負担がかかり、気持ちに余裕が持てなくなっている場合もあります。仕事にプライベートを持ち込むのはよくないともいいますが、そのことを理解していたとしても、うまく対処できないのかもしれません。
塩対応する人の心理
塩対応する人を見て、「なぜそんなそっけない対応をするの?」という疑問の声も聞こえてきそうですね。ここからは、塩対応する人の心理をいくつか見ていきましょう。もちろん、あまり感情が表に出ないタイプで、本人は「塩対応」をしている気がないなど、さまざまなケースが考えられます。ですので、あくまで一例として捉えてくださいね。
自分の気持ちや考えを察してほしい
塩対応する人の中には、「自分の気持ちや考えを察してほしい」という心理があることも。特に、自分が何に不満を感じているか、言葉で説明をすることが苦手な人は、塩対応をすることで察してもらおうとすることがあるようです。言葉で上手く説明できない思いを、相手に察してもらいたいあまり、あからさまにそっけない態度を取るということですね。
プライドを保ちたい
自分のプライドを保つために、塩対応をするというケースもあるようです。人に対して、あえてそっけなく対応することで、「私はあなたを認めていない」ということを表現して、相手より優位に立とうとするイメージですね。このような心理がある場合は、エスカレートすると、ハラスメントなどの大きなトラブルになることもありますので、注意が必要でしょう。
疲れ切っている
疲れ切ってしまって、人に丁寧に接することができないというパターンもあります。例えば、長時間労働や育児、介護など、さまざまな事情で疲労やストレスを抱えている人がイメージしやすいかもしれません。本人にはそんな気がなくても、周りから見ると「塩対応」になってしまうこともあるでしょう。
塩対応するデメリット
塩対応をすると、どのようなデメリットがあるのでしょうか? ここからは、職場で塩対応をすることのデメリットを解説します。
昇給や賞与などの評価に悪影響
職場で塩対応をしてしまうと、昇給や賞与の査定や人事評価の際、「人とのコミュニケーションや協調性に問題あり」と評価されてしまうことも。実は、業務成績だけでなく、職場内でのコミュニケーションの取り方を評価項目にしている会社は少なくありません。ですので、いくら実績があったとしても、塩対応を続けていると、人事評価の際に悪影響になる可能性があります。
ハラスメントの加害者になる可能性
職場内で塩対応をした相手や状況によっては、「ハラスメントをしている」と受け取られることも。例えば、ある会社で、上司から声をかけられても、そっけない態度を取っていた人(Aさん)がいました。それを上司から注意されたところ、Aさんは逆上。ついにその上司を無視するようになりました。
さらには、Aさんと仲が良い同僚や後輩が、一緒にその上司を無視するように。こんな日々に耐えかねた上司は、ある日職場で過呼吸発作を起こしてしまったといいます。
それがきっかけで、Aさんたちは「ハラスメントをした」として問題視されることに。意外に思う方もいるかもしれませんが、部下であっても場合によっては、ハラスメントの加害者になることがあります。このように、塩対応がエスカレートして、ハラスメントになることもありますので、注意が必要ですね。
上司がとるべき対処法とは
理由があったとしても、塩対応が続けば職場全体の雰囲気にも影響が出てきます。大きなトラブルが起こる前に、上司がとるべき対処法を紹介します。
部下を認める・傾聴する
塩対応を改めてもらうには、まずは信頼関係を結び直す必要があります。そのためには、部下の話に耳を傾けたり、部下を認めている気持ちを伝えることが大切です。また、仕事に対する意見を求めたり、部下にできる範囲で仕事の裁量を持たせたりなど、信頼している気持ちがしっかりと伝わるようにしましょう。
成果が出ているときにはしっかりと褒め、感謝の気持ちを伝えることも大切です。問題がある場合にも、アドバイスは最小限にとどめ、まずは部下の考えを尊重してみるのもよいでしょう。もちろん助けを求められたら、しっかりとフォローすることで、塩対応が改善されることもあります。
適切なコミュニケーションを意識する
部下に塩対応を改善してもらおうとする前に、自分自身の態度を見つめ直してみることも大切です。イライラしているときに感情的になっていないか、理不尽に怒鳴ったり冷たい態度をとったりしたことはないか、振り返ってみるとよいでしょう。
また、逆に甘い態度をとり過ぎて信頼されていない場合もあります。問題点があればきちんと指摘し、しっかり注意することも大切ですね。自分の主観ではなく客観的な意見として伝えた後は、アフターフォローも忘れずに行うと、さらによいでしょう。
第三者に介入してもらう
いろいろと試してみても関係が改善されない場合には、第三者に介入してもらうのもひとつの手です。介入してもらうのは、会社の人事部や、中立的な立場の人が好ましいでしょう。
直接話し合って解決できることもありますが、関係性によっては態度がさらに悪化することも。感情的になり過ぎないためにも、仲介者にふさわしい人がいれば力を借りる柔軟性を持つことも大切です。
最後に
この記事では、「塩対応」という言葉の意味や、部下が塩対応をしてくる原因や対処法、職場で塩対応をすることのデメリットなどを解説しました。職場でも日常生活でも、さまざまな場面で耳にする機会のある言葉ですので、おさえておくと便利ですね。
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執筆
塚原社会保険労務士事務所代表 塚原美彩(つかはら・みさ)
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。趣味は日本酒酒蔵巡り。
事務所ホームページ:塚原社会保険労務士事務所
ライター所属:京都メディアライン