誘い寄せるための手段「おとり」
おとりとは、「相手を誘い出すために利用される手段・人」を指します。もともとは狩猟に関係する言葉で、特定の鳥・獣を捕らえるときに警戒心を抱かせないよう、同類の鳥・獣で誘い出すのが一般的でした。
呼び寄せ役の鳥・獣をおとりと呼んだことから、現在の誘い寄せるものという意味に転じたと考えられます。本心を隠して相手の様子を見るという点では当て馬と似ていますが、当て馬にはおびき出すという意味は含まれていません。
「当て馬」が使われるシーン
普段の生活の中で、「当て馬」を耳にしたり口にしたりする機会は少ないものです。実際には、どのようなシーンで「当て馬」という言葉が登場するのでしょうか?具体的に見ていきましょう。
ビジネスでは人物や物を表す
ビジネスにおける当て馬は、自分を有利な位置に立たせるための戦略のひとつです。本命の存在や真意を隠すために利用された人・物を、当て馬と呼ぶことが多いでしょう。たとえば、プロジェクトのチームを組む際に、「自分を目立たせたい」という考えからスキルの低い人を入れたとします。その結果、自分の評価が高まったり意見が通りやすくなったりしたら、当て馬を利用したことになるのです。また、商品・サービスの価格を安くするために、引き合いに出した競合他社の商品・サービスを当て馬と呼ぶこともあります。
恋愛ものでは「当て馬キャラ」
恋愛ドラマやマンガに登場する当て馬キャラは、主人公に思いを寄せる2番手のキャラを指すのが一般的です。主人公と1番手の間をかき回すものの、当て馬の宿命である1番手の真意を探る役のため、本命には勝てません。主人公と本命の恋愛を盛り上げるだけで終わることが多く、ある意味かわいそうな役割といえます。
一方、実際の恋愛では本命を振り向かせるために利用される人が当て馬です。たとえば、好きな人の気を引きたいと考えて、好きでもない異性と仲がよさげに振る舞うケースでは、気を引くために利用された異性が当て馬になります。
選挙戦では「当て馬候補」
選挙でいう当て馬候補は、当選確率が極めて低い候補者を指すのが一般的です。たとえば、選挙区内で「絶対にこの人を当選させたい」という人物がいたとします。当選しなさそうな人を対立候補に立てれば、本命候補が当選しやすくなります。そこであえて認知度が低い人に立候補を要請して当て馬になってもらうのです。
また、票の分散を目的に、当選確率の低い候補者を立てることもあります。この場合は相手候補の当選を妨害することが本来の目的で、当て馬候補の当選については重視されません。ただし、選挙は水物と言われることもあり、思惑通りにいかないケースは多々あります。当て馬候補が奮闘し、本命を抑えて当選することもあるでしょう。
日常会話で使うときの「当て馬」の例文
ときには職場で当て馬となった人を目にしたり、自分が当て馬として利用されたりすることがあるかもしれません。また、商品・サービス開発のプロジェクトで「当て馬」という言葉を耳にする可能性もあります。身近なところで使われる当て馬について、具体的な例文を見ていきましょう。
当て馬として利用された
たとえば職場で誰かに仕事の手柄を横取りされたり、誰かの評価を上げるために巻き込まれた場合、もしかしたらそれは「当て馬として利用された」のかもしれません。また、あなた自身も意図せずに誰かを巻き込んでしまっている可能性もあります。この場合は、高評価のきっかけをくれた人があなたにとっての当て馬です。「△△さんを当て馬にしたみたいで、申し訳なかったな」という使い方になります。
このアイデアを当て馬にする
ビジネスシーンではアイデアを提案するときや、デザイン・商品・サービスの試作品を作成するときなどに、当て馬が使われるでしょう。たとえば、「このアイデアを当て馬として出して」と言われたら、本命の良さを引き立たせるために出して、という意味です。当て馬とされるアイデアはあえて内容を薄くしていることもあり、採用される確率が極めて低い、と想定しています。
一般的に「当て馬」は、相手の反応や様子を探ることが役目です。本命のアイデアを超えるような良案は求められていません。いかに本命を引き立たせて、採用されやすくするかが何よりも重要なのです。
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