「帷子」の由来は「かたひら」
「帷子」は着物を表す言葉です。そして着物とは、大きく2種類に分類されます。
1つ目は、2枚の生地を縫い合わせた、裏地のある着物です。このような着物のことを「袷(アワセ)」と呼びます。対して、裏地がなく、1枚の生地から成る着物のことを「単(ヒトエ)」といいます。
そして「単」のなかでも、麻布を使って仕立てられた着物が「帷子」です。裏地のついた「袷」から裏地としている1枚と取った「片方の1枚」という意味から、裏地のない着物を「帷子」と呼びはじめました。
具体的には「片方の1枚」から「片枚(カタヒラ)」となり、最終的には、現在のように「帷子」となったとのこと。つまり「帷子」の語源は「片枚」なのです。
関連する難読漢字は「帷幄(いあく)」
「帷子」と関連性の深い言葉として「帷幄」というものがあります。「帷幄」と書いて「イアク」と読むこの言葉は、作戦を立てる際の「本陣」という意味をもちます。「帷」という漢字そのものが、室内と外とを分けるために使われる「垂れ布」という意味をもつのです。
「着物とは関係ないなら、帷子との関連はないのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、「帷子」には「帳(トバリ)や几帳(キチョウ)などに、垂らして使う絹のこと」といった意味があることを、思い出してください。
昔は戦などの際、本陣の周りを垂れ布で覆い、目隠しをしました。この垂れ布こそが、「帷子」と関係の深いものなのです。
「帷子」を使った慣用句「帷子雪」とは
繰り返しになりますが、「帷子」は麻布でできた、裏地のない着物のことを指します。その特徴から、「帷子」を使った慣用句のなかに「帷子雪(カタビラユキ)」という言葉があります。
なんだか綺麗な響きの言葉ですが、一体どのような意味で使われるのでしょうか?「帷子雪」について、その意味や使われるシーンなどを解説していきます。
薄く積もった雪のこと
「帷子」とは裏地のない1枚の着物のことです。当然、裏地のある着物よりも、裏地のない着物のほうが薄いつくりとなります。その特徴から「薄く積もった雪」のことを、「帷子雪」と呼ぶようになりました。
都心などでは、雪が降ってもあまり高く積もることはないため、この「帷子雪」を目にする機会は多いでしょう。すぐに溶けてしまう儚さが、薄い着物のイメージとぴったりですね。
もともとは冬の季語だった
俳句などに登場する「帷子雪」ですが、もともとは冬の季語として使われていました。しかし、現在では「春の季語」として多く使われています。
たしかに、冬に積もる雪は薄くはありませんよね。どちらかといえば、初冬や春先にかけてと表したほうが言葉の意味と合っているように感じます。春先に降る、うっすら積もって消える「淡雪」と同じ意味として使われています。
まとめ
「帷子」という語句の読み方や意味、由来を解説しました。普段、着物を着る機会が少ない方にとっては、言葉自体に触れること、使うことがあまりないかもしれません。
しかし「帷子」を使った「帷子雪」などは、春の季語として活用しやすいでしょう。ぜひ、「帷子」の意味や由来などを踏まえて、文章中でも有効に活用してみてください。
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