聖徳太子の「十七条憲法」が語源
「和を以て貴しとなす」の語源は、604年に聖徳太子が制定した「十七条憲法」の第一条にある文章です。十七条憲法は役人たちの心構えが定められています。十七条憲法には、「あまり怒らないこと」、「他人を恨んだり妬んだりしないこと」などの道徳で教わるようなことが書かれているというのが特徴です。
<和を以て貴しとなすの語源となった文章>
原文:一曰。以和爲貴、無忤爲宗。
現代語訳:一に言う。和をなによりも大切なものとして、いさかいを起こさないことを根本としなさい。
由来は儒教思想や論語
「和を以て貴しとなす」という考え方の由来となったものは、儒教思想や論語です。十七条憲法に載っていた「和を以て貴しとなす」という言葉は論語にも書かれています。
儒教思想とは、紀元前5世紀頃に孔子が確立した思想のことです。論語は、孔子の没後に孔子の話していた内容を儒家の一派が編集したもので、孔子と弟子とが対話していたときの形式で書かれています。
「和を以て貴しとなす」の言葉自体は論語にもあったものの、論語と聖徳太子とでは、「和」に対する捉え方が違います。論語では「世の中の秩序や上下関係などが正しく機能するために、皆で仲良くしなければならない」という意味で書かれていますが、聖徳太子が掲げた言葉には条件付けがなく、ただ和が重要であると書かれているのがそれぞれの違いです。
【目次】
まとめ
「和を以て貴しとなす」の意味や考え方には、「あまり怒らず、和を大切にすること」と「しっかりと話し合うこと」の2つがあります。四字熟語の「以和為貴」も同じ意味で使える言葉です。これらは聖徳太子の十七条憲法が語源となっており、和を重んじる思想によって政治的な混乱を鎮めようとした言葉でした。
「和を以て貴しとなす」が持つ意味やその言葉ができた背景などを確認し、正しく使えるようになりましょう。
写真・イラスト/(C) Shutterstock.com