「阿鼻叫喚」という言葉、普段あまり使うことがないので、意味を知らないという方も多いはず。実は、仏教に由来した四字熟語なんですよ。本記事では、「阿鼻叫喚」の意味や読み方、類語・対義語などを解説しますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
「阿鼻叫喚」の意味とは?
「阿鼻叫喚」とは、「あびきょうかん」と読みます。意味を辞書で調べてみると、
1 仏語。阿鼻地獄と叫喚地獄とを合わせた語。地獄のさまざまの責め苦にあって泣き叫ぶようすにいう。
2 悲惨な状況に陥り、混乱して泣き叫ぶこと。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
という2つの意味があります。日常生活の中で使うのは2つ目の意味で、戦争や災害などの悲惨な状況を表す時に使われます。「阿鼻叫喚」の「阿鼻」は、阿鼻地獄を略したもの。「叫喚」は、「大声でわめき叫ぶこと」です。
ちなみに「阿鼻叫喚」は、「阿鼻驚嘆」や「阿鼻叫換」「阿鼻狂喚」などと間違われることがありますが、いずれも誤った表現であるため注意しましょう。
由来
「阿鼻叫喚」の由来は、仏教思想の中の「阿鼻地獄」と「叫喚地獄」にあります。両方とも八大地獄のひとつで、生前悪い行いをした人々が落ちる地獄であるとされています。
「阿鼻地獄」は別名「無間地獄(むけんじごく)」とも呼ばれ、8つの地獄の中で最も厳しく恐ろしい場所。地獄の最深部にあり、落ち続けるだけで2000年かかるのだとか。「叫喚地獄」は4番目の地獄で、殺生や盗み、飲酒をした人が落ちる地獄といわれています。熱湯を浴びせられたり、猛火のなか苦しめられ泣き叫ぶ人々の姿から「阿鼻叫喚」という言葉が生まれました。
ちなみに仏教の地獄思想は、平安時代中期の僧侶・源信(げんしん)が執筆した仏教書『往生要集』で八大地獄が記されたことが最初であるといわれています。
その後、『今昔物語集』の説話や『地獄草紙』といわれる図説に、炎渦巻く地獄の姿が描かれるようになりました。盗みや邪婬、飲酒などの行為を戒める教訓として作られたようです。
使い方を例文でチェック!
そんな恐ろしい由来を持つ「阿鼻叫喚」は、文学や小説、またはひどい光景を表す言葉としてニュースや新聞などで使われることもあります。具体的な例文をあげて解説していきましょう。
土砂災害の現場はまさに阿鼻叫喚の光景だった
「阿鼻叫喚」は、災害や事故、戦争などのきわめて酷い状態を表現する時に使われます。荒廃した風景や泣き叫び逃げ惑う人々の姿が想像される言葉ですね。「阿鼻叫喚の光景」「阿鼻叫喚の現場」という使い方もあります。主にニュースやラジオなどで聞いたことがあるかもしれません。
阿鼻叫喚の中から一筋の光が見えた気がした
「阿鼻叫喚」は、文学や小説の中でも時折見かける表現です。地獄のようなひどい状況で苦しむさなか、希望が見えた時などに使われます。「阿鼻叫喚」は非常にインパクトのある言葉なので、文学の中で効果的に使われることもあります。