温故知新とは、古い教えから新しい知識を学ぶことを意味します。
「温故知新」とは
「温故知新(おんこちしん)」とは、古い教えから新しい知識を学ぶことを意味する言葉です。まずは、言葉の意味や由来をチェックしていきましょう。

意味は「古い教えから新しい知識を学ぶこと」
【温故知新】おんこちしん
《「論語」為政から》過去の事実を研究し、そこから新しい知識や見解をひらくこと。
「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る」と訓読する。「温」を「あたためて」と読む説もある。なお、「温古知新」と書くのは誤り。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「温故知新」は元々、中国古代の『論語』の中に記載されていた言葉です。書き下し文では、「故きを温ねて新しきを知る(ふるきをたずねてあたらしきをしる)」と読みます。
なお、書き下し文で読むとおり「古い」という漢字を使って「温古知新」と書くこともありますが、これは誤りです。正しくは「故」なので、正確に表記するようにしてくださいね。

教師になるための心構えを説いた言葉に由来する
「温故知新」という言葉が記されているのは、『論語-為政』です。
「温故知新」と記されているところの前後を解釈すると、「昔から伝わる教えを学び、そのうえで新しい解釈を得るようにしよう。それができるようになれば、人を教える教師になることができる」となります。
このように、本来は教育者としての心構えを示す言葉でしたが、現代ではビジネスや個人の成長にも活かせます。過去の知識や経験を元に、新たな視点で物事に取り組むことで、よりよい成果を生み出すことができるでしょう。
会社や学校のモットーに使われることが多い
「温故知新」は、多くの企業や学校でモットーとして掲げられています。過去を振り返り、そこから学びを得て、新しい知識や戦略を作り出す考え方であるためです。一例としては、企業の経営方針において、過去の成功や失敗をしっかりと分析し、その教訓をもとに新しいビジョンや戦略を立てることが挙げられます。
こうした考え方により、時代の変化に柔軟に対応し、新しい価値を創造するための基礎が築かれるでしょう。

過去の経験に敬意を払い、それを未来の発展へとつなげることが、「温故知新」の本質だといえますね。
「温故知新」の使い方を例文で紹介
「温故知新」は、日常会話でも使える言葉です。いくつかの例文を紹介するので、使い方や言葉のニュアンスを感じ取ってくださいね。

「温故知新」の例文
例文
・日々の業務でも温故知新の考えを取り入れることで、新しいアイデアが生まれました。
・過去のデータを分析し、温故知新の精神で新しい戦略を考えることが成功の秘訣です。
・歴史を学ぶことで、よりよい未来が開けるだろう。温故知新は言葉だけではなく、真実だと思う。
・この神社に代々伝わる祭りには、現代に失われつつある人と人とのつながりを再認識する温故知新の精神が宿っている。
・昔のアルバムを開いてみると、忘れていた幼い頃の夢を思い出した。それが温故知新のきっかけとなり、新たな人生の目標を見つけた。
・伝統工芸の技術を学ぶことで、昔ながらの知恵と現代の技術を融合させるという温故知新の発想が生まれた。
「温故知新」を使ったスピーチの例
自己紹介や新年の挨拶としてのスピーチ例
皆さん、明けましておめでとうございます。本日は、この場をお借りして私の今年の抱負についてお話しさせていただきます。
私の今年のテーマは「温故知新」です。昨年は新しいことばかりに目を向けていましたが、今年は一度立ち止まり、これまでの経験や学んできたことを振り返る時間を大切にしたいと考えています。
例えば、入社当時からお世話になった先輩方からいただいたアドバイスや、過去のプロジェクトの議事録を改めて読み返すことで、当時は気づかなかった新たな発見があるかもしれません。そうして得た「古きを温ねる(たずねる)」知恵を、今後の業務という新しい挑戦に活かし、「新しきを知る」ための力に変えていきたいです。
この一年が私にとって、そして皆さんにとっても、過去の経験を未来へ活かす温故知新の一年となることを願っています。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
【実際の体験談】ビジネス等で使う時の注意点
実際のビジネスシーンで「温故知新」を使用する場合、どのような点に注意すればよいのでしょうか。「温故知新」にまつわる成功・失敗談を踏まえつつ、使用法を見ていきましょう。
【episode1】上司から学んだ「温故知新」が示す信頼感
Yさん(一般職、31歳)
前職の上司は、重要な商談の場でよく「温故知新」という言葉を使っていました。あるクライアントとの取引が難航していた際、上司は過去の契約書や交渉履歴を徹底的に振り返るよう指示しました。その結果、過去にクライアントが重視していたポイントや、譲歩した条件などを発見することができたのです。上司は、その情報を基に「u003cstrongu003eこれまでの経緯を踏まえて温故知新の精神に則り、御社と弊社双方にとって最善の解決策をご提案申し上げますu003c/strongu003e」と交渉に臨みました。この言葉によってクライアントは「こちらのことをよく理解してくれている」と感じてくれたようで、信頼関係が深まり、最終的に契約を締結することができました。単に過去を振り返るだけでなく、それを未来の解決策につなげるという、生きた温故知新の使い方を学んだ貴重な経験です。
【episode2】「新しいこと」こそ正義だと思っていた失敗談
Tさん(管理職、35歳)
若手の頃、新規事業のアイデアを上司にプレゼンした際、「過去の失敗事例から何を学んだのか」と問われ、答えに詰まったことがあります。当時は「新しいことこそ正義」と信じ、過去のデータや類似事例を参考にすることを軽視していました。結果、過去に失敗した原因と同じ落とし穴に陥りかけ、計画は大幅な見直しを余儀なくされてしまったんです。このとき上司から「u003cstrongu003e温故知新の精神がないと、ただの独りよがりなアイデアで終わってしまうu003c/strongu003e」と厳しく指摘され、大きな教訓となりました。それ以降、新しいプロジェクトを立ち上げる前には、必ず過去の成功例や失敗例を徹底的に分析する習慣を身につけました。
「温故知新」の類語
「温故知新」のように、過去から学び、未来に活かすという意味を持つ言葉はいくつかあります。ここでは、代表的なものを2つご紹介します。
覧古考新(らんここうしん)
「覧古考新」とは、「古い事柄を振り返ってから、新しいことを深く考える」。あるいは、「古い出来事を参考にして新しい考察を得る」という意味です。中国の歴史書である『漢書』に記され、「温故知新」とほぼ同じ意味で使われます。例えば次のように使ってみましょう。
例文
・覧古考新というように、一度基礎の本から勉強してみてはいかがですか。
・基礎を振り返り、新しい視点を得ることこそ、覧古考新の精神です。
不易流行(ふえきりゅうこう)
俳諧の理念の一つで、松尾芭蕉が提唱しました。いつまでも変わらない本質的なもの(不易)と、時代とともに変化していく新しいもの(流行)の両方を取り入れることが大切だという意味です。「温故知新」が「過去から学ぶ」ことに重点を置くのに対し、「不易流行」は「変わるものと変わらないもの」の両立を説いています。
例文
・伝統的な工芸品に新しいデザインを取り入れることは、まさに不易流行の精神だと言える。
・老舗の和菓子屋が、昔ながらの製法を守りつつ、SNSで若い世代にアピールすることで不易流行を体現している。
これらの言葉は、いずれも単に過去を振り返るだけでなく、そこから学びを得て、未来に活かすという前向きな姿勢を表しています。状況に応じて使い分けることで、より豊かな表現が可能になります。
「温故知新」の英語表現とは?
「温故知新」を英語で表現したい場合、以下のフレーズを参考にしてみてはいかがでしょうか? いずれの言葉も、過去から学び、新しいことを理解するニュアンスが含まれていますよ。

1. Learn from the past to innovate for the future(過去から学び、未来に向けて革新する)
2. Study the old to understand the new(古きを学び、新しいことを理解する)
3. Using the lessons of the past to create new knowledge(過去の教訓を使って新しい知識を生み出す)
【例文】
・In our company, we believe in learning from the past to innovate for the future.(私たちの会社では、過去から学び、未来に向けた革新を行うことを信条としています)
・By studying the old, we can better understand the new and apply this knowledge to modern problems.(古きを学ぶことで、新しいものをより深く理解し、この知識を現代の課題に応用することができます)
よくある質問
ここからは「温故知新」に関してよくある質問とその回答を紹介します。
Q. 温故知新の由来は何ですか?
温故知新は、中国の古典『論語(ろんご)』が由来です。孔子の言葉を集めたこの書物の中に、「子曰(しいわ)く、故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知る、以(もっ)て師と為(な)るべし」という一節があります。「古い教えを深く学び、そこから新しい知見を得て、初めて人を教えることができる」という意味です。
Q. 温故知新はどんなときに使いますか?
「温故知新」は、過去の経験や知識から新しいアイデアや解決策を見つけ出すときなどに使います。
たとえば、仕事で過去のプロジェクトの成功事例や失敗事例を振り返り、新しい企画を立てるとき。また、勉強で古典や歴史書を読み、現代の課題を解決するヒントを得るときにも使います。そのほか、日常生活で昔の趣味や経験を再開し、新たな発見や気づきを得るときにも使うことができます。
Q. 温故知新という言葉が好きな理由を聞かれたら何と答えればいいですか?
温故知新という言葉が好まれる理由は、過去を否定せず、未来を切り開く前向きな姿勢を表しているからです。
そのため、「私は温故知新という言葉が好きです。なぜなら、過去の経験や失敗をただの『古いもの』として切り捨てるのではなく、そこから学び、成長するためのヒントを見つけ出すことを表しているからです。この言葉は、私たちの人生や仕事において、常に前進し続けるための大切な羅針盤(らしんばん)だと考えています。」のように答えるのがおすすめです。
最後に
- 「温故知新」は、中国の古典『論語』に由来する言葉で、「古い教えから新しい知識を学ぶこと」を意味する
- ビジネスシーンでは、過去の成功や失敗から教訓を得て、新しいアイデアや戦略を生み出す際に活用できる
- 似た言葉は「不易流行」や「覧古考新」など。いずれも過去を尊重し、未来に活かす前向きな姿勢を示している
「温故知新」とは、昔のことを学ぶことで新しい知見を得ることを指す言葉です。孔子が語った言葉とされ、元々は教師になるための心構えを指していました。「温故知新」の本当の意味を知ると、なぜ会社や学校のモットーに使われることが多いのかがわかりますね。心に留めておきたい、価値ある言葉だといえるでしょう。
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Domani編集部
Domaniは1997年に小学館から創刊された30代・40代キャリア女性に向けたファッション雑誌。タイトルはイタリア語で「明日」を意味し、同じくイタリア語で「今日」を表す姉妹誌『Oggi』とともに働く女性を応援するコンテンツを発信している。現在 Domaniはデジタルメディアに特化し、「働くママ」に向けた「明日」も楽しむライフスタイルをWEBサイトとSNSで展開。働く自分、家族と過ごす自分、その境目がないほどに忙しい毎日を送るワーキングマザーたちが、効率良くおしゃれも美容も仕事も楽しみ、子供との時間をハッピーに過ごすための多様な情報を、発信力のある個性豊かな人気ママモデルや読者モデル、ファッションのみならずライフスタイルやビジネス・デジタルスキルにも関心が高いエディターたちを通して発信中。https://domani.shogakukan.co.jp/
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